アクティブリスニングとは、マネジメントに必須のスキルとして、最近注目を集めている傾聴のスキルです。しかしながら、このアクティブリスニングについて、実際にはどのようなスキルなのか、どういった目的でどのように使われるのかを正確に理解している方はあまり多くないようです。そこで今回は、アクティブリスニングとは何か、なぜビジネスにおいて注目されているのか、具体的にはどんなスキルなのかについて解説していきます。
アクティブリスニングとは?傾聴力を高める方法
アクティブリスニングとは
元々、アクティブリスニングは臨床心理学の専門用語です。アクティブリスニングを日本語に訳すと「積極的傾聴」となりますが、もっとわかりやすく言うと、話し相手の「成長」と「可能性の実現」を促す環境を整え、話し手が自分自身で問題解決できるように手助けをするスキルのことです。
アクティブリスニングの提唱者
アクティブリスニングは、臨床心理学者であるカール・ロジャース氏によって1957年に発表されました。彼のカウンセリングに対する考え方は、人には「なりたい自分」になる力が本来備わっていると考えているのが特徴であり、楽観的かつ肯定的であるとも言われます。また、カウンセリングの対象を患者ではなく、クライアントと呼んだ初めてのカウンセラーとしても有名です。ロジャース氏が1940年代に編み出したクライアント中心療法では、「クライアントの話をよく傾聴し、クライアント自身がどのように感じ、どのように生きつつあるかについて真剣に取り組んでいきさえすれば、別にカウンセラーの賢明さや知識を振り回したり、押し付けたりしなくても、クライアント自らが気付き、成長していくことができる。」と述べており、アクティブリスニングはクライアント中心療法に必須のスキルとして位置づけられています。
アクティブリスニングが注目されている理由
では、そんな臨床心理学のスキルであるアクティブリスニングが、ビジネスの世界で注目を集めているのはなぜでしょうか?その点を理解してもらうために、マネジメントで必要なスキルについてご紹介しておきます。
マネジメント力を高めるのには、幅広いスキルと知識が必要です。そして、その中でも特に重要だと言われているのが、「傾聴力」「質問する能力」「フィードバックする能力」「信頼を示す能力」の4つです。マネジメントにこの4つの能力が必要な理由については、こちらの記事でまとめているので、是非参考にしてください。
アクティブリスニングは、この4つの能力のうちの「傾聴力」と「質問する能力」に強い関連性があります。マネジメント能力を高めるスキルとして有効だったため、アクティブリスニングはビジネスでも注目を集めるようになりました。
アクティブリスニングを身に着ける方法
では、アクティブリスニングを身に着けるには、どのようにすればいいのでしょうか?アクティブリスニングとは、いくつものスキルが合わさって初めて可能になる高度なカウンセリング技術です。今回は、その幅広い技術を「心構え」「ノンバーバルコミュニケーション(言語以外のコミュニケーション)」「バーバルコミュニケーション(言語でのコミュニケーション)」の3つに分けてご紹介します。
アクティブリスニングに必要な心構え
アクティブリスニングは、先に述べたようにクライアントの成長と可能性の実現を促進し、クライアントが自ら解決方法を発見するのが目的です。この目的を達成するためには、クライアントとの信頼関係とリラックスした環境が必要となります。そして、このような関係と環境を作るためには、聞く側の心構えが重要な役割を果たします。その心構えとは「自己一致」「共感的理解」「無条件の肯定的配慮」の3つです。
自己一致
自己一致とは、聞き手が自分の考えや価値観を否定せず、飾らないありのままの自分でいることを指します。そのためには、話し手に誠実であり、正直であろうとする心構えが必要です。その誠実さや正直さが話し手との信頼関係を作り上げます。
共感的理解
共感的理解とは、話し手の立場に立ち、話し手と同じ視点を持って物事を理解しようとする姿勢です。1つの物事に対して同じ見解を持っていることは、話し手に安心感を与え、信頼関係の構築を助けます。
無条件の肯定的配慮
無条件の肯定的配慮とは、話し手の言動や思考に対して否定や評価をしない姿勢のことです。話し手のありのままを受容する態度は、話し手に「自分は大切にされている」という安心感を与えます。
アクティブリスニングにおいて重要なノンバーバルコミュニケーション
ノンバーバルコミュニケーションとは、言語以外のコミュニケーションのことを指します。表情や姿勢、仕草、スキンシップ、ボディランゲージなど重要なノンバーバルコミュニケーションは多数ありますが、アクティブリスニングにおいて特に重要なのは「視線」「声のトーン」の2つです。
目線
目線において重要なポイントは「そらし過ぎず、合わせすぎない」ことです。視線を合わせることには、心理的な距離を縮める効果があり、信頼関係の構築に大きな効果を発揮します。また、視線が合わないと不信感を感じやすく、特に女性はその傾向が強いとされています。また、視線を合わせることを意識するあまりに、視線を合わせすぎることにも気を付けましょう。視線が合いすぎるとかえって緊張感が増します。特に男性は女性よりも目線が合うことに緊張しやすいとされており、気を付けたいポイントです。
声のトーン
声のトーンにおける重要なポイントは、相槌のときのトーンです。しばしば抑揚をつけて話すことの重要性が挙げられますが、これを意識しすぎるあまりに、相槌のトーンが必要以上にハイテンションになりやすくなります。なんてことない話や、相談のハイテンションの相槌が返ってくると、びっくりしてしまい返ってテンポが崩れるのでやめましょう。相槌のコツとして覚えていてほしいのは、カラオケの合いの手を曲調によって変えるように、相槌も相手のトーンに合わせることです。悲しそうな話には悲しそうな相槌を、楽しそうな話には楽しそうに相槌を打ちます。話し手と同じトーンで相槌を打つことで、共感していることがよく伝わり、話しやすい関係が構築できます。
アクティブリスニングにおいて重要なバーバルコミュニケ―ション
バーバルコミュニケーションはノンバーバルコミュニケーションの対義語であり、言語によるコミュニケーションを表します。つまり、「どんな言葉を使うか」ということですが、アクティブリスニングにおいて重要なのは、「共感と繰り返し」と「オープンエンドクエスチョン」の2つです。
共感と繰り返し
共感と繰り返しとは、相手の話す内容に出てきた感情表現や話す雰囲気から相手の感情を想像して、それと同じ感情を言葉にすることです。具体的に言うと下記のような例です。
A「昨日、初受注取りました!ずっと準備してきた提案だったのでほんとうれしくて、思わず泣きそうでしたよ!」
B「本当か!初受注おめでとう!初めての受注ってほんとうれしいよな!俺も初めて受注取ったとき泣きそうになったよ。」
オープンエンドクエスチョン
オープンエンドクエスチョンとは、「yes」「no」で答えられない質問のことを言います。「yes」「no」で終わる質問が続くと、非常にテンポが悪くなり、会話が続かないという意識があると緊張がほぐれません。ですので、「なに?」「どうやって?」などの5W1Hを使って、会話が途切れすぎない質問をすることがポイントです。相手が疑問や相談をしてきたときには、すぐに正論や経験でアドバイスをするのではなく、相手が自分で答えを出せるようにそのまま質問で返します。
A「ねぇ、昨日同期の○○さんと口論になっちゃったんだけど、どうしたらいいかな?」
B「そうなんだ。全然気づかなかったよ。何が原因だったの?」(Why)
A「今同じプロジェクトにアサインされてるんだけど、仕事の進め方で意見が対立しちゃって…」
B「そっかぁ。二人ともこだわり強いもんな。Aはどうしようと思ってるの?」(How)
A「いっしょにやる仕事もあるし、やっぱりこのままはよくないかなって。 きちんと話し合ったほうがいいと思ってるんだ。」
B「たしかに。仕事のとき周りに迷惑かかるかもしれないしな。 具体的にはいつ話そうと思っているの?」(When)
A「早い方がいいよなぁ。よし、今からちょっと話してくるわ!」
まとめ
目線やトーン、言葉選びなどは、無意識で行っている癖があるため、意識していてもすぐに変えるのが難しい領域です。また、すべてを一度に変えるのは非常に難しいので、今自分が直すべきところの優先順位を考え、1つずつ改善していくのがポイントです。会話において、自分のできているところやできていないところは自分で気付きにくいものです。この記事をきっかけに自分の会話について、振り返ってみてはいかがでしょうか?
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