上司が部下に仕事を任せられないのはどのような理由によるものなのでしょうか。例えば部下に任せると結果が出ないと考えていたり、任せることによる教育の手間と比べて任せない選択をしていたりと理由は人によりさまざまです。ここでは部下に仕事を任せられない主な理由についてご紹介します。現在の状況と照らし合わせて、解決の糸口にしてください。
「部下に任せると結果が出せない」と考えているために仕事を任せられない上司もいるでしょう。上司は部下と比べると経験があり、能力やスキルが高いために、自分より劣っている部下に対して仕事を任せられないのかもしれません。しかし上司の本来の仕事は、仕事で結果が出せるように部下を育てることです。部下が成長することでチームが成長し、将来的には上司が一人で活躍するよりも大きな成果につながります。
部下が結果を出せないことが理由で上司が部下に仕事を任せていないのであれば、なぜ結果につながらないのかを考えてもらうことが大切です。部下の知識やスキルが足りない場合には、教育を行うことで将来的に結果を出せるようになるため、マネージャー管理職の方は上司に対して、部下を教育して仕事を任せるように指導しましょう。
上司の中には教育に手間と時間をかけたくないと考えている方も多いでしょう。仕事を任せるためには仕事の流れやルールなどを教える必要があります。教育には手間と時間がかかりますが、しっかり教えたつもりでも部下がすぐに仕事ができるようになるわけではありません。特に教えてすぐは部下が失敗をしてしまうこともあるでしょう。部下の失敗は上司がフォローをしなくてはならないため、自分で全ての仕事を終わらせてしまう方が楽だと考えて仕事を任せていない可能性もあります。 あるいは普段の仕事が忙しく、部下の教育をする余裕がないという上司もいるでしょう。しかし教育をしておけば、将来的には現在やっている仕事を部下に任せられるようになり、上司は他の仕事に取り掛かれます。部下に仕事を任せられない上司の指導では忙しいからと教育を疎かにするのではなく、将来を考えて早いうちに部下に仕事を任せることで、今後の仕事が円滑に進められるようになることを伝えましょう。
上司が部下に過剰に気を遣っていることが理由で仕事を任せられていないことも。例えば部下の業務を圧迫してしまうことに心苦しさを感じて仕事を頼めなかったり、仕事を任せて部下に嫌われたくないと思っているなどです。上司は部下に仕事を頼まない代わりに自分がその分頑張ればいいと考えているかもしれませんが、それでは部下の成長につながりません。 マネージャー管理職の方は、上司の仕事は部下を育てることであると認識してもらえるように働きかけることが大切です。部下に仕事を任せることが成長につながるため、心苦しさがあったり嫌われたくないという理由で仕事を任せないのは上司の本来の仕事を避けていることになります。
部下に仕事を任せると、自分のやり方とは違う仕事の進め方をすることもあります。部下としてはそのやり方が効率的と考えているかもしれませんが、上司からすると効率の悪いやり方をしていると思って、気になってしまうのです。そうなると上司は自分の想定していた予定通りに仕事が進まずにイライラしてしまうこともあるでしょう。そうして部下に仕事を任せられないと感じて、自分で仕事をやり始めてしまうかもしれません。 しかし部下と上司は違う人間なので考え方に違いがあるのは当たり前のことです。上司の指導では、まずそのことを上司に伝えて、理解してもらう必要があります。また部下が上司の思った通りに仕事を進められないのは、仕事を任せるときの指示が足りていなかった可能性も考えられるため、指示の出し方が明確だったかを改めて確認すると良いでしょう。
自分の仕事が思うように進まなくなるから部下に仕事を任せないという上司もいるかもしれません。部下に仕事を任せると、報告や相談などの時間が増えることが考えられます。突発的に相談などの予定が入ると、自分の立てたスケジュール通りに仕事が進まないこともあるでしょう。しかし仕事を任せる上で部下からの報告や相談はミスを減らしたり、ミスを早いうちに発見して対処できたりするため必要な時間です。その時間に仕事のフィードバックを行うことも部下の成長には欠かせません。上司には、部下に仕事を任せた上で、どのようなスケジュールで仕事を進めていけば予定通りに完了するのかを考える力が必要であることを伝えましょう。
ここまでご紹介してきた「部下に任せても期待通りの結果が得られない」「どうせ失敗する」などの考えは部下を信用できていないことが原因になっていることも。上司は過去の経験から「部下に仕事を任せても上手くいかない」と思っているかもしれませんが、その経験も元を辿れば上司の仕事の任せ方に問題があった可能性も考えられます。例えば仕事の内容を部下に「伝えたつもり」になっていて、きちんと伝わっていなかったり、仕事の進捗状況をこまめに確認していなかったなどです。仕事を任せられない上司が部下を信用し仕事を任せられるようになるためには、依頼の方法に問題がないかをマネージャー管理職の方も一緒に確認し、改善していく必要があります。
上司はさまざまな理由から部下に仕事が任せられない思っているかもしれませんが、部下に仕事を任せられない状況が続いた場合、部下が成長しません。上司の仕事は部下を育てることなので、上司は本来の仕事ができていないことになります。また部下が育たないということは、本来は部下に任せられる仕事をその先も上司が自身でやり続けなくてはならず、チームとしてもその先の成長は見込めないでしょう。最終的にはチームだけでなく、企業全体の成長が伸び悩む可能性があります。
マネージャー管理職の方は、部下に仕事を任せてしっかりと教育を行うことは部下の成長のみならず、チーム全体が成長していくためには不可欠であることを上司に理解してもらえるように指導することが重要です。
部下に仕事を任せられない上司の特徴は、仕事を任せることに対して良い印象を持っていないことが挙げられるでしょう。しかし部下に仕事を任せることにはメリットが多くあります。マネージャー管理職の方は、上司の指導の際に次に挙げるメリットについて伝えて、部下に仕事を任せるように促してみてください。
部下に仕事を任せると、最終的には上司自身の仕事量が減るというメリットがあります。部下に仕事を任せることで教育やフォローのために一時的に仕事が増えてしまうような印象を受けやすいです。しかしその教育に手間と時間をかけるほど部下は成長していきます。現在は上司が「上司にしかできない仕事」と「教えれば部下でもできる仕事」のどちらも受け持っている状態かもしれませんが、部下をしっかり一人前に育てることができれば、上司は自分にしかできない仕事に集中できるようになることを伝えましょう。
部下に仕事を任せると部下だけでなく上司自身の成長にもつながります。特に今まで部下を持っていなかった方が上司になったときには、それまでとは違いリーダーとしてのマネジメントスキルが必要です。上司になり部下に教育を行う中で、部下をマネジメントする力が身につきます。部下だけでなく自身も成長できる点は上司にとってのメリットになるでしょう。
仕事を任せる際には部下の教育は必須です。教育を行うことで部下の知識量が増えたり、スキルが身についたりするため部下が育ちます。部下が育てば新しい仕事を任せられるようになるため、上司の負担は減るでしょう。他にも仕事を任されることは部下が「この会社で必要とされている」と感じる要因の一つです。ずっと同じ仕事しか与えられず、部下が自身の成長を感じられない環境よりも、新しい仕事を与えられた方がやりがいを感じる方も多いでしょう。やりがいを持てれば、自身で学び、スキルの習得など積極的に動くこともあります。
部下に仕事を任せるといっても、ただ仕事を振るだけで説明が足りていなかったり、部下の能力や仕事量を考慮しない振り方は逆効果になる可能性も。ここでは部下に仕事を任せるときに意識したいポイントについて解説します。ポイントを押さえることで部下が仕事をスムーズに進めやすくなるため、マネージャー管理職の方は上司が部下に仕事を任せるときに実践できているかを確認してみてください。
上司が部下に仕事を依頼する際に期限を設けて、何日までに終わらせる必要があるのかを明確にしているか確認しましょう。できていなければ、期限を設けることで部下自身が逆算してスケジュールを立てやすく、上司もそのスケジュールで無理がないかを確認できるため、仕事をスムーズに進めることができることを伝えます。
上司と部下では優先順位の認識が異なっている場合も。優先順位を伝えることで部下はより効率的に仕事が進められます。マネージャー管理職の方は、上司が部下に仕事を依頼する際にどの仕事を優先してほしいのか、どのような順番で行うと効率的なのかを必ず伝えるように指導しましょう。
部下が依頼された仕事の目的を知っている場合とそうでないときではクオリティに差が出ることもあります。その仕事がなぜ必要なのか、何を求めているのか、最終的なゴールは何なのかを伝えることで部下も仕事への理解が深まり、目的に向けて進めることができるでしょう。上司がきちんと仕事の目的を部下に伝えているか確認してください。
任せている仕事の報連相は部下からの連絡を待つのではなく、上司からも部下に対して進捗状況を確認することが大切です。上司から話しかけることで部下が報連相をしやすい環境を作ることができる他、こまめに進捗を確認することで、部下が最終的に目指す方向から途中で逸れてしまったときも早い段階で軌道修正ができることを上司に伝えましょう。
仕事を任せるときには部下の働きに期待していることをしっかりと伝えることも大切です。「〇〇さんにはいずれはチームを引っ張ってもらいたい。だからもっと成長できるこの仕事を任せたい」「これを任せたときの〇〇さんの仕事ぶりは評判がいいから、今回も任せられるかな?」などできる限り具体的に伝えることを意識するように指導しましょう。もし部下の仕事が求めるクオリティに達していなかった場合でも、そこで諦めるのではなく、評価は事実として伝え、よりクオリティを上げるためには何が必要なのかを話し合うことで実践を促します。
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このように上司が部下に仕事を任せられないと感じる理由はさまざまです。しかし仕事を任せないと部下だけでなくチーム全体の成長が見込めない事態に陥ります。どのような理由があったとしても、部下を成長させ、チームの利益を上げることが上司の仕事であるとしっかり理解するようにマネージャー管理職の方が働きかけることが大切です。その際には部下に仕事を任せるときのポイントをしっかり伝え、仕事を任せることで上司自身の仕事の負担が減ったり自身のマネジメントスキル向上や成長につながることも伝えていきましょう。