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タレントマネジメントは、それぞれの人材が持つ得意領域やスキル・資質を把握し、適材適所への人材配置や育成に活かすマネジメント手法です。今回は、そんなタレントマネジメントがどのような目的で導入されているのかや、導入のプロセスをご紹介します。また、導入する際の注意すべき3つのポイントと、タレントマネジメントを実際に導入している企業も、参考としてご紹介します。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、自社に所属する社員の「タレント」を把握し、それを活かしてマネジメントすることです。このタレントマネジメントを理解してもらうために、まずはタレントとは何か、次にタレントマネジメントの定義、最後にタレントを活かして何をマネジメントするのかを紹介します。

タレントとは

タレントとは元来、人のもつ才能・素質・技量という意味を持ちます。

タレントマネジメントではタレントとは、企業に所属する社員が個人毎にどの領域に明るく、どのようなスキルがあるのかなどの社員の持つ才能・素質・技能にフォーカスして定義されています。

タレントマネジメント2つの定義

タレントマネジメントは人材の流動性の高い米国において1990年代に企業に優秀な人材を定着させさらに効果的な育成を実現するための手法として誕生しました。そして昨今日本でも注目されているこのタレントマネジメントには米国に存在する2つの人材マネジメント組織によって、2つの定義に分かれて存在しています。

SHRM(全米人材マネジメント協会)定義

SHRM(全米人材マネジメント協会)は1948年に創設され約165カ国に約28万5000人の会員を擁しており、主に人材マネジメント理論の体系化、資格認定などを行っています。

2006年に同協会が発表した定義では、タレントマネジメントとは以下のようになっています。

人材採用・育成・管理などのマネジメントプロセスを改善し、職場の生産性を改善すると同時に優秀人材の維持・能力開発を戦略的に進める取り組みやシステムデザインを導入すること。

ATD(米国人材開発機構)定義

ATD(米国人材開発機構)は1994年に設立された約100カ国以上の国に約4万人の会員を持つ非営利団体で、人材開発などに関する世界最大の会員制組織です。主な活動としては人材開発や組織開発に関するカンファレンス・セミナー開催、書籍の出版を行っています。

2009年に発表された定義では、タレントマネジメントとは以下のようになっています。

人材採用・開発・管理などの人材マネジメントの生産性向上のため職場風土(Culture)、仕事に対する真剣な取り組み(Engagement)、能力開発(Capability)、人材補強/支援部隊の強化(Capacity)の4つの視点から短期的・長期的な取り組みを行うこと。

2つの組織の設立背景や活動方針・内容の違いはタレントマネジメントの定義にも影響を及ぼしており、若干の差異が見受けられます1。しかし基本的にはタレントマネジメントとは人材採用・育成・管理などの生産性を改善させるための戦略やそれに準ずる施策などを総合的に指すようです。

タレントマネジメントの具体像

タレントマネジメントは具体的には、人材のタレントによる適材適所な配置やタレントデータを活用した本人へのフィードバックによるモチベーションの維持・向上などを行います。また、管理だけに留まらず経営戦略と掛け合わせた戦略的な人材育成もカバーしており、タレントごとのパフォーマンスの最大化や成長を促すために育成計画や施策などを講ずるなど、多面的な機能を持つことも特徴です。

タレントマネジメントが注目される背景

それでは、タレントマネジメントが注目されるようになったのは、どのような背景があるのでしょうか?

経営戦略の多様性

現代は、VUCAの時代と言われています。「VUCA(ブーカ)」とは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものであり、予測が困難な現代の社会やビジネスの状態を表しています。 このような社会においては、確実に勝利が約束された経営戦略というものは存在しません。したがって、社員一人ひとりのタレントを活かして、組織が成果を上げるための戦略を見つけていく必要があります。

働き方の多様性

社員の多様化もますます進んでいます。以前は終身雇用・年功序列という雇用モデルが確立されていましたが、現在は成果主義ジョブ型雇用も広がりを見せています。したがって、社員一人ひとりがタレントを発揮することによって、個人と組織が「選び選ばれるWin-Winな関係」を築いていくことが重要視されています。

タレントマネジメントを導入する目的

タレントマネジメントの最大の目標は、企業が描く経営戦略を人事戦略の視点から実現することです。

そのために、スキルや経歴などの人材情報を基に社内にいる優秀な人材を見つけ出すと共に、全社員が各々もつ得意領域やスキルを活かせるような人材配置の実現を目的としています。

タレントマネジメントを導入する効果

人材配置の適正化

これまで日本企業の人事戦略における人材配置と育成の考え方というのは、新卒入社した社員をジョブローテーションの中でまんべんなく部署を経験させていくというものでした。

しかし、時代の流れによる昨今の顧客と企業の関係変化や新興国への生産拠点シフト、技術革新サイクルの短期化などによる日本国内のビジネスモデルの変化ベンチャー企業の台頭によりこれまで多くの企業で行われていた従来型の人材配置や育成の手法では市場の変化スピードに遅れてしまう事態が予見されました。日本の企業はビジネスモデルの更新はもちろん、人事戦略についても時代に合わせた柔軟な変化を求められるようになりました。

タレントマネジメントを導入することによって、人材配置の最適化を実現し、スピード感あふれる柔軟な人事戦略を実行する事を助けるという視点ではベンチャーの人材戦略との親和性が高いと言えます。

効果的な人材育成の達成

タレントマネジメントは、現在から将来にわたって求められる人材像を明確な判断基準として設定しているので、会社が求める人材像に達するために不足しているスキル・知識・経験を可視化し、人事は結果を踏まえたギャップを埋める育成計画を常に更新する事ができます。また、スキル不足を補うためのピンポイントな研修やトレーニングを実施するなど、効率的な人材育成を推進する事が可能になります。

現在日本企業を取り巻くビジネス環境は激しい変化の波が渦巻いています。その影響は企業で働く人にも及んでおり、これまでのスキル・知識・経験では対処が難しい新しいビジネス課題への直面など、そこで働く人に対しても進化を求めるようになりました。大手企業と比較して、人材育成にも効率性やスピードが求められるベンチャーでは人材育成の効率化を促す面でも目的にマッチします。

タレントマネジメントの効果的な導入ステップ

タレントマネジメントは無駄の無い人材配置や効率的で早いスピード感で実施する人材育成の達成を目的としているためベンチャー企業での親和性が高いと言えます。それでは実際にどのようなステップを踏んでタレントマネジメントを導入すれば効果を最大化できるのかをご紹介します。

導入STEP1:導入体制の整備

タレントマネジメントを実施する前にまずは環境の整備です。

タレントマネジメントは性質上、人事部のみで完結する事はなく組織をまたいだ横断的な施策が実施されます。そのためには経営陣を初めとして様々な人間がタレントマネジメント戦略に携わります。

まずはタレントマネジメント導入の主導機関である人事担当者の立ち位置や果たすべき役割を明確にし、その上で関係各所との連携を強めタレントマネジメントの導入に最適な組織体制へと整備する事が必要です。

  • タレントマネジメント導入の合意
  • 人事担当者の立ち位置や果たすべき役割の明確化
  • 関係各所への協力依頼事項の明確化

導入STEP2:導入目的とタレントの定義

タレントマネジメントは人材戦略があってこそ効果を発揮します。まずは自社の経営戦略の中で人材戦略を通して何を実現するのか、どう経営改善に活かすのかなどを明確にする必要があります。そして策定された人材戦略に基づいて次のステップではどの様なタレントが欲しいのかを明確化していきます。

タレントの定義には主に自社にとって「即戦力として活用できる人材」 と「長期的に成長可能性がある人材」の二軸で設定します。

定義するタレント像はできる限り具体的である事が望まれます。会社の将来的な目標に合致する求められる人物像を策定しましょう。またタレント像は自社の定めたバリューなどに紐づけて表現すると社内理解が得られやすくなります。

  • 自社の経営戦略を支える人材戦略の立案
  • 「即戦力型」か「成長型」の人材バランスを決定
  • 明確に具体化された「タレント像」の設定

導入STEP3:人材データの整備と分析

タレントの定義の次に行うのは、人材データの収集を行い定義したタレント要件を満たす人材がどの部署にどのくらい存在しているのか、算出された割合は自社の経営戦略上において十分な数字と言えるのかなどを整理・分析して正確に把握する作業です。この過程では様々なフォーマットでデータが散在していたり、重複するデータがいくつも存在したりしているためデータの洗い出し・整理を行い高精度で扱いやすいものに加工・整理しデータクレンジングを行います。

ベンチャー企業の利点としては、規模が小さい事が多く人材データの整理が大規模企業に比べスムーズに進行できる点が挙げられます。

  • 社内の全部署の人材データを吸い上げる
  • 重複するファイルや異なるフォーマットデータの統合
  • 設定した必要タレントの現在数値を計測

導入STEP4:マネジメント施策の計画と実行

前項では人材データの整備と分析によって洗い出された自社の状況と人材戦略を照らし合わせギャップを明確にしました。ギャップを明確にした後は、どのようにしてギャップを埋めていくかを計画していきます。

ギャップを埋める方法としては「新規人材の獲得」と「既存人材の育成」の二つのアプローチが存在します。アプローチの組み合わせは経営環境や人材戦略によって企業ごとに変動します。

アプローチの判断は自社にとってタレントの補充が先なのか、既存人材の育成で間に合うのかなどの視点を基に、現場のオペレーションへの影響度や組織文化への影響、経営陣のサポートを得られるかなどの観点を合わせて総合的に判断していく必要があります。

タレントマネジメントを通して実行される施策としてはアプローチ毎に以下の施策が存在します。

「新規人材の獲得」の施策としては、「新卒採用」「中途採用」など採用を主軸としています。

「既存人材の育成」の施策としては「ジョブローテーション」「OJT」「外部研修」「eラーニング」「コーチング」などがあります。

  • 必要タレントの現在数値と将来必要数値とのギャップ抽出
  • 「新規獲得」と「既存育成」のアプローチを計画する
  • アプローチ計画に沿った各施策を実行する

導入STEP5:タレントマネジメントの効果測定と見直し

タレントマネジメントは性質上、短期的に売り上げが上昇するなどのビジネスへの直接的な影響が見えにくく効果の測定が難しい手法です。しかし効果測定を行わなければ施策の評価も改善も行えず、社内に効果を説明できなければ現場の理解とサポートを得る事も難しくなります。

当初に立てたタレントマネジメントの目的とタレントの定義を基に効果指標を設定しましょう。その後行う測定は前述の効果測定の指標を共有した上で、タレント対象社員のマネジメント層へのヒアリング、個人成績やプロジェクトの成果分析などを通して行われます。この様に施策のモニタリングを常に行い、効果が見込めていない場合は原因を抽出し適宜見直しを行う事が重要です。

  • タレント定義に沿った指標による効果測定
  • タレントポートフォリオを作成する
  • 施策の見直しとサクセッションプラン(後継者育成)の立案

タレントマネジメントの導入時に注意すべきポイント

タレントマネジメントのことを中心人物が理解しているか

タレントマネジメントへの理解不足は優秀な人材を見逃し、人材の成長を妨げます。タレントマネジメントの導入は人事担当者のみで完結するものではなく、経営陣を初め多くの部署にまたがって関係者が存在します。中でも人事担当者、経営陣、部署マネジメント層などのタレントマジメントの機能中枢を担う人間たちの理解不足はタレントマネジメント体制の崩壊につながりかねません。

その中でも特に経営陣は関心を寄せて主体的に取り組んでいく必要があります。

なぜなら優れた人材を活用し育成する事は、組織の成長につながり事業の成長につながるからです。自社の将来を左右するタレントについて十分な理解をしておく必要があります。

膨大なタレント情報を活用するためのシステムがあるか

タレントマネジメントを実施する上で社員の個人情報・経歴・スキルなどの人材データの活用は生命線ともいえます。適正にデータを活用するにはデータを一元管理する必要があります。しかし闇雲にデータを集めてしまったがばかりに異なるフォーマットや重複する情報が膨大に手元に届き、かえって混乱を招いてしまったというケースも存在します。

データをどこに集め、どのような形で整理をするか、人材データを参照する際の流れなどデータ管理は自社で利用しやすいように環境を整えなければなりません。そのためには、データ整理のためのフォーマット作成や、データクレンジングを通して、膨大な情報を統合して整理するなどの取組みが必要不可欠です。

この点で、タレントマネジメントに特化した、データの活用をサポートするシステムやサービスの導入は、データ管理を容易にし、タレントマネジメントの推進に大きく役立ちます。

全社員が重要性を理解しているか

タレントマネジメントを推進していく上で各部署の評価データの共有やタレントに基づいた適材配置に際して人材の受け入れ、業務の引継ぎなど社内で多くの協力を必要とします。

そのため全社規模でタレントマネジメントの必要性や重要性の理解がなされていないと協力を得づらくなります。協力を得られなければ、情報不足や施策のスピードが落ちるなどタレントマネジメントの機能不全を起こす要因になります。特に組織としての規模が小さいベンチャー企業では、ほぼ全社規模でのアナウンスが必要だと考えていいでしょう。

タレントマネジメント導入への社内理解を得るためには、まず経営層からタレントマネジメントについて全社的に周知し、人事担当者など主体的にプロジェクトに取り組む人たちが理解や必要性の啓発のための説明を入念に行っていくなど地道な努力が必要になります。

タレントマネジメントを導入したベンチャー事例

これまでタレントマネジメントの定義や目的・導入のステップなど体系的にタレントマネジネントについて解説してきました。それでは実際にタレントマネジメントを導入した企業には人事・組織の面でどういった特徴や背景が存在したのでしょうか?実際にタレントマネジメントを導入しているベンチャー企業3社をまとめてみました。

株式会社ソネット・メディア・ワークス

インターネット広告サービス事業を展開する社員数85名のベンチャー企業。

2015年にマザーズ上場を果たし成長フェーズに伴う社員数の急激な増加を通して、社員間のコミュニケーション活性化と経営者による人材マネジメントの必要性を感じ、タレントマネジメントを導入。海外展開が決定し社員の語学スキルや海外経験などの有無を把握する必要が生じた場合に備えたいという背景もありました。

ピクスタ株式会社

写真・イラスト・動画素材のマーケットプレイス事業を展開する社員数57名のベンチャー企業。マザーズ市場への上場をきっかけにMBO(目標管理)形式の人事評価へシフトした同社。新しい人事評価制度は上司と部下間で目標の合意を取り、その達成度合いを上司が評価するもので評価には数値や自己評価、上司のコメントなどで多角的に評価を実施しました。

しかしフォーマットやファイル管理も上司ごとに異なり、また会議資料として利用する際にもエクセルだと煩雑で一見してわかりにくいという課題がありました。その様な経緯からタレントマネジメントを導入した同社ですが、結果的にフォーマットやファイル形式を統合し一元管理化が実現し集計や管理の負担が軽減しました。

株式会社ディー・サイン

株式会社ディー・サインは働き方改革に伴う様々なワークスタイルの普及と推進をオフィスデザイン・構築の面からサポートする社員数49名のベンチャー企業です。

同社は外出先で仕事ができる「ノマド制度」を採用し全体の8割程度の社員が利用しており 社員の自由度や裁量性が高いのが特徴です。そのため同社では50人規模ではあるものの自由を担保できる組織づくりの重要性に着目しました。

同社では、タレントマネジメントシステムを導入することで、紙媒体やエクセルで散在管理されていた人材データの一元管理を始めました。そしてそのデータを組織作りに活かすと共に、機動的な人材配置や育成を目指しています。

まとめ

タレントの定義から始まりタレントマネジメントを行う目的や効果的な導入ステップなどを通して本記事では体系的にベンチャー企業でタレントマネジメントを導入するにあたって重要なポイントをご紹介しました。 様々な人事戦略や戦術が存在しますが、中でもタレントマネジメントは、人材のリソースが少なく少数精鋭の組織として事業を推進していく必要のあるベンチャー企業にとっては効率的な人事戦略を推進していく上でも大きな効果をもたらすマネジメント手法です。事例にもあった通り、成長フェーズにあるベンチャー企業では、短期間で増加する社員の顔や特性、スキルを経営者と人事担当だけで全てを把握することは難しいです。

是非、タレントマネジメントの概念や手法を取り入れてみてください。

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