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チェンジマネジメントとは?組織変革が成功するステップと手法

チェンジマネジメントとは?組織変革が成功するステップと手法

チェンジマネジメントとは、組織の変革をスムーズに進めるためのマネジメント手法です。技術の進歩とビジネス展開が高速化している現代では、新しい組織体制や社内システムを導入する機会が増えています。そんな組織変革の需要が高まっている中、組織変革を進めるうえで効果的なチェンジマネジメントとは、一体どんなものなのか。今回は、チェンジマネジメントの概要から変革を阻害する要素、組織変革が成功するステップと手法をご紹介します。

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チェンジマネジメントとは

チェンジマネジメントの起源は、1990年初頭のアメリカでBPR(Business Process Reengineering)が発明されたことにあります。当時のアメリカは長い間不況が続いており、疲弊していました。そんな現状を打開するため、経営の抜本的な変革手法として開発されたのがBPR(Business Process Reengineering)です。当時マサチューセッツ工科大学の教授であったマイケル・ハマー氏と当時経営コンサルタントであったジェイムス・チャンピー氏の共著「Reengineering the Corporation」が世界的なベストセラーになったこともあり、BPRは世界的に知られるようになりました。

Reengineering the Corporation

その頃の日本ではバブル崩壊期を迎えており、BPRは日本でも歓迎され、多くの組織が変革手法として導入し、実践しました。しかし、アメリカにおいても日本においても、BPRの成功率は非常に低く、日本ではリストラの助長とそれに伴う混乱からBPRの導入は成功しませんでした。BPRが成功しない原因を提唱者であるマイケル・ハマー氏が調査したところ、その原因はBPRの戦略やステップ、手法に問題があるのではなく、組織変革に関わる人々の意識や感情といった心理的要因に問題があることが分かりました。

今回紹介するチェンジマネジメントとは、組織変革に関わっている人々に起こる意識や感情といった心理的な抵抗を和らげ、組織変革がスムーズに進める心理的なマネジメント手法として開発されました。

チェンジマネジメントが必要な理由

では、組織変革を円滑に進めるためのチェンジマネジメントが今、改めて注目を集めているの何故でしょうか?その答えの一つとして、現代がVUCAワールドであることが挙げられます。

VUCAとは、Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実さ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ)の4つの頭文字から作られた言葉です。VUCAは元々は軍事用語だったとされていますが、2010年代にはビジネス領域でも用いられるようになり、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で世界の現状を表すキーワードとして「VUCAワールド」という言葉が用いられたことで注目を集めるようになりました。

ビジネススピードと技術の進歩が高速化していることや、環境や気候の変動だけでなく、経済や国際情勢の不確実性が増していること、グローバル化の本格化によって、組織や個人のあり方は複雑さを増すばかりです。こんな時代だからこそ、組織が生き抜くには柔軟性が欠かせないと言われています。柔軟な組織とは、組織変革が必要とされたとき、即座に行動を起こし、その行動を素早く組織全体に浸透させられることを言います。そんな変革の折に、浸透の妨げになるのが組織に属する人々の心理的な抵抗です。この心理的な抵抗を和らげる手法がチェンジマネジメントです。VUCAワールドといわれる時代の背景があるからこそ、チェンジマネジメントは今まさに注目を集めているのです。

チェンジマネジメントを阻害するチェンジモンスターとは

先にも何度か述べたように、組織の変革を阻害するのは、そこに関与している人々の意識や感情といった心理的な要因であり、チェンジマネジメントはこれを緩和する手法です。この阻害要因について、著書「チェンジモンスター-なぜ改革は挫折してしまうのか?」を書いた当時ボストンコンサルティンググループのコンサルタントであったジーニー・ダック氏は「チェンジモンスター」と命名し、同書で紹介されています。現在では、この阻害要因は「チェンジモンスター」という呼び名で浸透しています。

チェンジモンスター

日本に特有のチェンジモンスター3選

先ほど紹介した「チェンジモンスター-なぜ改革は挫折してしまうのか?」では、日本の組織に特有のチェンジモンスターが紹介されています。今回はその中から3体のモンスターをご紹介します。

タコツボドン

タコツボドンは、自分のツボに閉じこもって外部と関わろうとしないモンスターです。自分の担当や部署を超えた仕事内容には興味を示さず、また自身の領域に関しては周りからの関与を拒絶するといった姿勢を持つ人を指します。タコツボドンは、組織内の連携を妨げ、変革の成功を妨げるモンスターとして紹介されています。

ウチムキング

ウチムキングは、内側からの評価ばかりに興味、関心を向け、外部には目を向けないモンスターです。社内で何がどのように評価されているかに目を向けるばかりで、顧客や社会からの評価に目を向けられない人を指します。ウチムキングは、社外の動向に目を向けないため、時代や社会の動きに合わせた変革が分からず、本当に必要な変革に反発してしまうモンスターだと言えます。

ノラクラ

ノラクラは、できない理由ばかり述べて行動に移さないモンスターです。変革が提案されたときに、「なぜその変革が必要なのか」「どうすれば実行できるか」を考えず、できない理由ばかり考える人を指します。ノラクラは、提案された変革に否定的な意見ばかり出すため、変革への抵抗になるだけでなく周りのモチベーションも下げるモンスターです。

チェンジマネジメントが成功する8段階のステップ

これまで、チェンジマネジメントの起源や概要、阻害要因をご紹介しました。では、チェンジマネジメントを成功させるには、具体的にどのようなステップと手法が必要なのでしょうか。

チェンジマネジメントについては様々なコンサルタントが様々なステップを紹介しています。今回は、チェンジマネジメントを実践する具体的な手法の代表例として、リーダーシップ論の世界的な権威であるジョン・コッター氏が提唱した組織の変革に必要な「8段階プロセス」について解説していきます。

1.危機意識を高める

8段階の最初のステップは、危機意識を高めることです。コッター氏によると、変革に失敗する企業の50%がこのステップで失敗をしていると言います。危機意識を高めるのは、変革をする必要性を理解してもらうためです。そのためには、社会や市場、競合の分析を通して、自社がこのままいくとどうなるのか、どのような危機的な状況に陥るのかを根拠をもって提示する必要があります。このステップでどれだけ変革の必要性を訴えることができるかが、のちのステップの動機付けになるため、チェンジマネジメントにおいて最も重要なステップであると言えます。

2.変革推進のための連帯チームを築く

第2のステップは、変革を進めるチームを編成することです。この変革を進めるチームに誘う人材としては、「変革内容に合わせて十分に能力のある人」と、「企業において影響力のあるキーマン」です。能力のある人材は変革を設計、実施するために、影響力のある人は、変革を浸透させていくために、どちらもチェンジマネジメントに欠かせない存在です。

3.ビジョンと戦略を生み出す

第3のステップは、ビジョンと戦略を生み出すことです。ビジョンとは、「変革を進めていくとどんな状態を迎えられるか」を明確にしたものであり、正の動機付けになります。第1ステップで危機意識を高めるために提示した、「このままでは、どのような状況に陥るか」というのは、負の動機付けであり、ビジョンはこれと反対のアプローチです。

コッタ―氏は、優れたビジョンの特徴として下記の6つを挙げています。

  • 目に見えやすい(イメージが目に浮かぶくらい明確であること)
  • 待望される(そのイメージを迎えたいと心から思えること)
  • 実現可能である(現実的であり、実現が可能だと思えるイメージであること)
  • 方向を示す(意思決定をする際の判断基準となること)
  • 柔軟である(いかなる状況においても行動を制限しないこと)
  • コミュニケートしやすい(5分以内で説明することができること)

この第3ステップでいう「戦略」とは、方針や方向性を表しており、優れたビジョンの「方向を示す」という点に戦略が含まれています。つまり、6つの特徴を満たすことで、チェンジマネジメントに必要な、ビジョン・戦略となります。

4.変革のためのビジョンを周知徹底する

第4のステップは、先のステップで作ったビジョンを全従業員に周知することです。このステップでのポイントは、作られたビジョンをただ広めるだけではなく、このビジョンに込められた6つの特徴を漏れなく伝え、「知る」だけでなく「理解する」ところまで徹底することです。

5.従業員の自発を促す

第5のステップは、ビジョンに向けた行動を自発的にできるよう促すことです。ビジョンを実現するためには、実際の行動にまで落とし込む必要があり、行動に移されなければ形だけのビジョンになってしまいます。ビジョンに向けた行動を自発的にしてもらうには、3つのポイントがあります。1つ目は、ビジョンに向けた行動がどんなものかを、具体的にリストアップして周知することです。2つ目は、ビジョンに向けた行動をすることが評価・称賛・承認される制度を作ることです。3つ目は、推進者がしっかりと手本となる行動をすることです。この3つのポイントを押さえることで、従業員がビジョンに向けて行動しようと思える土台を整えることができます。

6.短期的成果を実現する

第6のステップは、第5のステップで明確になった取るべき行動を、短期的な目標の下に実行していく段階です。短期の目標を達成することで、ビジョンと行動の方針が正しいことが確認でき、目標達成に貢献した従業員を評価・表彰・承認することで、モチベーションの維持と向上にもつながります。ビジョンが大きければ大きいほど、実現までの期間が長くなり、モチベーションの低下が危惧されます。その点で、短期目標の設定はチェンジマネジメントには欠かせない要素といえます。

7.成果を活かして、さらなる変革を推進する

第7のステップは、第6のステップを受けての改善と修正の段階です。ビジョンの実現までの近道は、短期的な目標を達成し続けることです。第6のステップで明確になった変革を促進する点と妨げる点に対して、教育・人材登用・制度改革といった手段で改善・修正していくことがチェンジマネジメントでは必要となります。

8.新しい手法を企業文化に定着させる

最後のステップは、6と7のステップで見つかったビジョンへの到達に有効な手法を企業に根付かせることです。ここでのポイントは、「どんな手法がどの結果に有効だったのかを明確にすること」と「有効だと分かった手段を周知すること」です。

チェンジマネジメントでは、この8つのステップを順に進めていくことがポイントです。

チェンジマネジメントが成功した事例

ここまでチェンジマネジメントを成功させるためのステップについてご紹介してきました。それでは、実際の企業での成功事例をピックアップしてご紹介します。

富士フィルム

富士フィルム社では、2008年5月より本格的にチェンジマネジメントプログラム研修を導入し、1200名の課長の意識変革に取り組みました。1回あたり25~30人の課長を対象に2泊3日での研修になります。この研修の特徴は、過去の自分やこれまでの仕事を振り返り、さらに上司や部下10人に回答してもらった多面評価(360度サーベイ)の結果に基づいて現在の自分を見つめ直すことによって自らの長所・課題を導き出していきます。自己変革へのアクションプランを策定し、6か月後にはフォロー研修を1泊2日で実施しています。担当者は「課長が変わって職場が元気になった」と語っており、経費削減が重視される中でもこの研修には力を入れていらっしゃいます (日経クロステック:「第2の創業」に向け部課長に意識変革研修)。

Google

Google社ではITを駆使して業務プロセスを改善するという取り組みの中で、社内のメールやカレンダー、ドキュメントなどのツールをGoogle Cloudに移行することを決めました。その際に、社員に対してその取り組みを行う理由を「端的で分かりやすい表現」で繰り返し伝え、その重要性を理解してもらっています。社員の不満が高まるリスクを回避することによって、チェンジマネジメントを成功させました(Google Cloud Japan 公式ブログ:【動画公開】社員の働き方改革のために~チェンジマネジメントとその手法~)。

まとめ

チェンジマネジメントは、これからさらに不安定性・不確実性・曖昧さ・複雑さが増していく時代を生き抜くための重要なヒントとなり得ます。今まさに組織を変革に取り組んでいる方にも、これから組織変革に取り組んでいこうと考えている方にも、この記事を通して少しでも貢献できたならば幸いです。

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