マネジメント能力とは、「管理能力」と一言で表すことができます。管理の責任範囲は、経営者であれば企業全体、マネージャーやリーダーであれば所属する部署やチームになります。以下に、具体的な4つの能力をご紹介します。
部下とのコミュニケーションは、常に現状を把握することから始まります。現状を把握するためにはまず部下に現在起こっていることを正直に話してもらう必要があります。そこで身に付けておくべきマネジメント能力が傾聴する能力です。
傾聴するとは相手の話を注意深く、能動的に聞くことです。部下に、「マネージャーは自分の話に興味を持ち、重要だと思ってくれている」と感じてもらえるように聞きいる必要があります。傾聴する目的とは相手の現状を100%理解するということです。間違っても、アドバイスをしよう、自分の意見を述べて解決しようという前提で相手の話を聞こうとするのは避けましょう。途中で口をはさむことなく、相手が言っていることを理解することに焦点を置きます。
次に必要となってくるマネジメント能力は、質問する能力です。部下が自分の意見を述べ終わったら、まず自分が正しく理解できているか部下とすり合わせるとよいです。その上で明確になった現状に対して部下がどう思っているか、プロジェクトを進める上で何か良いアイディアはないかを尋ねます。
あくまでもコーチングスタイルなので、部下が主体的に自分で考えるように促すことが重要です。そこでポイントとなってくるのが、”Why” ではなく”How” や ”What” を使うことです。Why 型の質問とは、「なぜあのような行動をしたのか?」など、過去の過ちを責めることにつながりがちで、部下の話やアイディアを聞き出すことを妨げてしまいます。
そのため、例えば部下がミスを起こした場合でも、「なぜあのような行動をしたのか?(Why)」ではなく、「何が原因だったのか?(What)」「次、同じ状況があったらどのように対処するか?(How)」のように質問をすることが大事です。また、最後には部下の意見に対する自分の理解が正しいか確認することも大切です。
部下の現状を確認し、それに対する部下の意見も聞きました。次に必要なマネジメント能力は部下の現状や部下の考えに対して正直にフィードバックをする能力です。「正直に」というのがポイントです。始めてマネージャーをする方だと、部下が傷ついてしまうのではないかと心配して思ったことを素直に言えないこともあります。
ただ、自分の考えを正直に伝えずに問題をそのままにしておいては、プロジェクトの完遂も部下の育成もうまくいきません。また、しっかりと傾聴し、尋ねることをしていれば、部下も「自分のことをしっかりと理解してくれた上でフィードバックをしてくれているな」ということがわかります。
このような関係性ができていれば部下が傷つくことはありませんし、むしろマネージャーの意見により部下は新たな気づきを得られます。もちろん、マネージャーは自分の意見が絶対と思うのではなく、意見を述べた後でそれに対する部下の意見にもオープンである必要があります。
部下の現状を把握し、彼らの意見と自分の意見をすり合わせた上でお互いに納得のもと次に取るべきアクションを定めたら、あとは部下に任せることが必要です。割と忘れられがちなこのマネジメント能力ですが、マネージャーが自分に全幅の信頼を寄せてくれていると感じられるのとそうでないのでは部下のコミットメント具合も大きく変わってきます。人は自分のことを信頼してくれている人のために頑張ろうというモチベーションが動きます。
ここまでマネジメント能力についてご紹介してきましたが、リーダーシップと混同されることがありますので、マネジメント能力とリーダーシップの違いについて述べておきます。リーダーシップとは「指導力・統率力」と表現されるように、目標達成のために周囲の人に進むべき方向性を示す力のことを指します。リーダーシップは発揮する対象が人であるのに対して、マネジメント能力では人に加えて、モノやカネも管理対象となります。マネジメントでは経営資源となる「ヒト・モノ・カネ」をトータルに管理していくことが求められます。
マネジメント能力の中でも特に極めたい4つの能力についてご紹介しました。それではこれらの能力を高めるためには、どのような方法があるのでしょうか?
社内研修ではしっかりと時間を取ってマネジメント能力を体系的に学ぶことができます。特に、傾聴する能力や質問する能力、フィードバックする能力は一人で鍛えることが難しいため、研修でのペアワークを通じて実践的に身につけることをおすすめします。
社内で研修を実施できない場合には、社外研修やビジネススクールの講座を受講するという手もあります。また、最近は1時間~2時間でセミナーを開催している企業も増えていますので、情報収集のアンテナを立てておくことをおすすめします。
これまでマネージャーが絶対に身に付けるべきマネジメント能力についてご紹介させていただきました。ただ、このマネジメント能力を最大限に活かすには部下がマネージャーを信頼していなくてはいけません。部下がマネージャーを信頼していなければいくら傾聴して、その上で彼らの意見を聞いても部下は本音を話さないかもしれません。
信頼がなければ、いくらマネージャーが正直にフィードバックをして、部下を信じても彼らはプロジェクトにコミットしてくれないかもしれません。部下から信頼されて初めて、先ほど紹介したマネジメント能力は力を発揮してくれるのです。
もちろん、上記のマネジメント能力を身に付けること自体も部下の信頼を勝ち得るのには有効ですが、それだけでは十分ではありません。ここでは、部下から信頼されるために必要な要素をご紹介させていただければと思います。
マネージャーとしての仕事ができるのは当然として、実際に部下がやる仕事内容にも精通していることが重要です。部下の立場からすると、自分の仕事内容を理解していない上司と、自分の仕事内容を理解してくれる上司と、どちらを信頼するでしょうか。
部下と一緒に決めたことを、マネージャーが勝手に変えてはいけません。言っていることとやっていることが一致していることが必要です。部下と合意の元行ったことでミスが生じた場合は、マネージャーが責任を取ります。決めたことを変える際にもチーム全員の合意を取るのが必須です。
部下にだけ一方的に聞くのではなく自分をだすことも信頼を築くうえで大事です。たとえば、目標を部下から聞くときなどにもまず自分はどういう目標を持っているのか、自分が大事にしている価値観は何か、自分をしっかりさらけ出すことが大事です。
全員同じ方法で接するということを平等と言っているではありません。その部下に合った方法で、適切に接することが重要です。もちろん、「えこひいき」のようなものがあってはなりません。
マネージャーが必ず身に付けるべきマネジメント能力と部下との信頼を築くのに必要な要素についてお伝えしてきました。初めてマネージャーをする方にとっては、一人のプレーヤーとして求められる能力とマネージャーに求められる能力は大きく異なり、困ってしまうかもしれません。この記事を通して少しでもマネジメント能力とはどのようなものかおわかりいただけたら幸いです。
アチーブメントHRソリューションズのマネジメント研修は、マネージャーが組織の「目標達成」と「部下育成」を両立できるようになることを目的としています。研修では、具体的なマネジメントスキルの体得と、部下の特徴に合わせたコミュニケーションスキルの習得を通して、管理職者のマネジメント力を向上させていきます。
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著者はインテルでCEOを務めていた、故アンドリュー・S・グローブ氏です。マネージャーが果たすべき役割や姿勢、影響力などについて記述されています。30年以上も前に書かれたものでありながら、現在でも多くの読者に共感を呼んでおり、「マネジメントの教科書」「マネージャーを目指すならば必読の書」という声も上がっています。グローブ氏のマネジメント経験を追体験しながら、マネジメントの原理原則を学べる一冊です。