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1on1とは?従来の人事施策とは異なる2つの特徴

1on1とは?従来の人事施策とは異なる2つの特徴

1on1とは、上司と部下による1対1での定期的な対話を指します。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、2022年1月時点で1on1を導入している日本企業は既に7割近くに及びます。1on1が注目されている背景やその目的はどのようなものなのでしょうか?今回の記事では従来の人事施策と比較することによって浮かび上がってくる1on1の特徴を紐解いていきます。1on1実施までの具体的なイメージを持つためにも、1on1の進め方や実施する上で求められる上司のスキルや部下のマインドなどについても解説いたします。

この記事のまとめ

  • 1on1とは「上司と部下による1対1での定期的な会話」のことであり、短時間且つ短期的な頻度で行われることに特徴がある。
  • 1on1は部下主導で進められることに特徴があり、様々な悩み事の解決やさらなる成長に繋がるフィードバックを得られる。
  • 効果的で有意義な1on1を実践するためには、上司側のスキルと部下側のマインドセットの両方が重要となる。
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1on1とは?

1on1ミーティング(以下、1on1)とは、上司と部下による1対1での定期的な対話のことです。1on1では、短時間の対話が一定の短期的な頻度で繰り返し行われます。上司-部下間のコミュニケーションやフィードバックが活性化されやすい状態を作ることによって、個人の生産性を高め、ひいては組織全体の成果に繋げることを目的として多くの企業で活用されています。

1on1が注目されている背景

そもそも1on1は、世界的IT企業が集結するアメリカのシリコンバレーから広く普及したと言われています。日本では2012年ヤフー株式会社がいち早く1on1を導入したことにより注目度が高まり、急速に広がりを見せました。2022年時点では1on1を導入している日本企業は67.7%となり、従業員規模3,000名以上の企業に限定すると、1on1の導入率は75.7%にもなります1

このように多くの日本企業が1on1を導入している背景には、企業を取り巻く外部環境の変化が激しく、正解を導き出すことが難しくなっていることも影響を及ぼしています。VUCAとも呼ばれるこのような時代においては上司が答えを持っていない状況も多く発生するため、部下自身が主体的に課題解決のための答えを見つけ出していく必要があります。そのために1on1では、短期的なサイクルでフィードバックを行い、部下の成長促進を図ることが求められています。

1on1の目的

それでは1on1を実施する目的は具体的にどのようなものなのか、ここでは大きく2つに分けてご説明します。

経験学習の促進

まず1つ目は、経験から学び成長に活かす「経験学習」の促進です。変化の激しい現代では常に知識やスキルがアップデートされていきますので、年齢や役職に関わらず学び続けることが大切になります。一度学んだことで満足してしまうと、時代の変化とともにそれらの知識やスキルが通用しなくなる場面が出てきます。

ここで参考となるのが経験学習という考え方です。「経験から学習していくには4つの活動を繰り返す必要がある」と提唱されるモデルであり、4つの活動とは(1)具体的な経験をして、(2)その内容を振り返り内省することで、(3)その体験から得られた学びを教訓とし、(4)その教訓を新しい状況に応用して実践するという内容です2。1on1は、この経験学習のプロセスにおける「内省」をサポートする機会となります。部下が経験した出来事に対して客観的な視点を提供することによって、部下の経験学習を促進することを1on1導入の目的とする企業は多数存在します。

信頼関係の構築

上司と部下の信頼関係の構築も1on1の目的となります。部下が主体的に行動していくためには、上司-部下間での信頼関係が重要になってくるからです。信頼関係が構築されていない状態においては、「提案をして受け入れられなかったらどうしよう」「自分が上司に意見してよいのだろうか」といった恐れや不安が生じて、部下の主体性の発揮に歯止めをかけてしまう場合があります。

1on1を導入した企業の60.1%が「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」、46.5%が「部下のコンディションの把握ができている」、40.2%が「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と回答1するなど、信頼関係の構築に繋がる効果を実感しています。

1on1と従来の人事施策との違い

それでは1on1と従来の人事施策は何が異なるのでしょうか?人事評価面談とメンター制度を例に、1on1との違いを以下の表にまとめました。

表1:1on1と従来の人事施策との比較

1on1と従来の人事施策との比較

1on1は短期的なサイクルで行われる

1on1の特徴の1つ目は、短期的なサイクルで行われることです。一般的に1on1は、1回15〜30分程度の短時間の対話を、毎週や2週間に1回といった短期的なペースで定期的に行います。一方で、人事評価面談では人事評価が出るタイミングということで半年や年に1回、メンターとのミーティングも必要時、不定期に行われることが多い傾向にあります。

部下主導で進められる

1on1の特徴の2つ目は、1on1は部下主導で進められるということです。例えば、トピックは部下自身が決めることが一般的です。内容も部下の希望によって幅広い話題を設定することができますので、部下は悩み事の解決策やさらなる成長に繋がるフィードバックを上司から受ける機会を得ることができます。一方、人事評価面談やメンターミーティングでは、業績評価や業務改善、キャリア形成に関する内容が中心となる傾向にあります。

1on1で求められる上司のスキル

ここまで1on1が上司-部下間の短期的なサイクルでのコミュニケーションやフィードバックを通じて信頼関係を築き、部下の成長を引き出すものであることを述べてきました。では、部下主導で1on1を進められるようにするためには、上司はどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?

傾聴と質問のスキル

1on1で陥りがちな失敗や気を付けるべきこととして、上司が部下に対する評価を伝えることに終始してしまうケースが挙げられます。上司による一方的なコミュニケーションでは、部下の成長を促進することはできません。1on1では部下が主体的にコミュニケーションを取ることができるように、上司には部下の発言を引き出す質問力と、部下が安心して発言できるような心理的安全性に繋がる傾聴力が重要になります。

フィードバックスキル

部下の話を傾聴するだけになっていないかということも気を付けるポイントです。フィードバックとは、実践によって得られた結果に対して良かった点や改善した方がよい点についての情報を与えることです。上司は部下からのアウトプットに対して、部下が成長している部分を承認し、さらにより良くできる部分を明確に伝えて具体的なアドバイスやサポートを提供することが重要です。そして部下自身がフィードバックの視点を活かして自分自身の行動を振り返り、経験学習における内省のプロセスを促進させられるようにすることが重要になります。

コーチングスキル

1on1を終えた時に、部下のモチベーションややる気が向上しているかということにも配慮しましょう。コーチングとは「答えはその人の中にある」という原則に基づいて、相手が本来持っている力や可能性を最大限発揮できるようなサポートをするためのコミュニケーション技術のことを言います3

持続的なモチベーションややる気を引き出すためには、外側からの刺激ではなく、部下自身の内側から湧き上がる原動力が必要になります。その原動力になるものは何なのかをともに確認し、決めた目標を自ら積極的に達成することができるように導いていくことが重要になります。

1on1で求められる部下のマインド

ここまで上司に求められるスキルや気を付けたいポイントについてご紹介してきましたが、部下にも意識しておくべきマインドがあります。

主体性マインド

1on1は部下主導で進めるものであるからこそ、部下の主体性が重要になります。部下は1on1という貴重な機会を有効活用しようという気持ちを持って、積極的な参加姿勢を示すことが期待されます。トピックは基本的に部下の自発性に委ねられるため、自身が現在解決したい問題や課題、上司の支援を仰ぎたい部分について整理をする必要があります。また、上司からアドバイスを得るだけではなく、部下自身もアイディアや提案、アクションプランを積極的に上司に示していく機会でもあります。

オープンマインド

オープンマインドとは、「心が開かれている状態」を示す言葉ですが、周囲の言葉や意見を素直に受け入れられること、そして自分の内面もさらけ出せることを意味します。上司からフィードバックをもらった時に否定されたと受け取るのではなく、さらに成長できるヒントをもらったと受け取り、意欲的に改善を進めていくことが大切になります。

1on1の進め方

ここからは1on1を実施するための具体的なイメージを持っていただけるよう、1on1の進め方を3段階に分けて解説していきたいと思います。

1on1の進め方

準備する

1on1を導入する前の準備として、1on1に取り組む目的を上司-部下間で確認し合うことをおススメします。目的がはっきりしないまま1on1を実施していても、次第に1on1が形骸化してしまい、上司・部下ともに有効活用することができなくなってしまうでしょう。明確な目的を共有していることによってお互いに齟齬を生じさせずに、毎回の1on1をスムーズに進めることができるようになります。

実際に1on1を導入後は、部下主導で日程調整を行い、事前に上司と話し合うべきトピックを洗い出しましょう。具体例として、以下のようなものがあります。

1on1のトピック例

  • 自身の業務における悩み
  • チームや組織で感じている課題
  • 目標設定に関する相談
  • キャリアに関する相談
  • 体調に関する相談

対話する

1on1当日の進め方としては、主にアイスブレイク、トピックに関する対話、振り返りの3段階から成ります。

アイスブレイク

関係性が浅い場合などは、最初は部下が緊張していることも考えられますので、部下の緊張をほぐすような声かけを入れましょう。アイスブレイクの話題としては以下のようなものがあります。

  • 共通の趣味(野球、サッカー、映画、音楽など)の話題
  • 年末年始やゴールデンウィークなど連休中の出来事を話す
  • 部下の最近の成果などをほめる
  • 体調を気遣う声かけをする

特に1on1は忙しい中でも部下としっかりと向き合うことができる時間でもありますので、このようなアイスブレイクを通して、最近の体調や仕事とプライベートのバランスに無理が出ていないかといった観点にも留意しながら会話を進めていくとよいでしょう。

トピックに関する対話

部下は事前に準備したトピックについて、報告・相談をします。上司に見てもらいたい資料などがある場合には、事前に余裕を持って上司に連絡しておきます。時間の使い方はトピックの内容によって異なりますが、上司は部下が言葉に詰まった時には、必要な情報や部下が本当に話したいことを引き出す効果的な問いかけを柔軟に出していく必要があります。部下は上司からのフィードバックをメモしておくなど記録を残しながら、解決策やヒントをより多く吸収しましょう。

振り返り

最後に本日の1on1で話し合った内容の振り返りを行います。トピックに対しての対応方法や新たな目標設定に結論を出し、具体的なアクションプランを決めます。そしてアクションプランを作成する際に重要なこととして、各タスクややるべきことに対して期限を決めることです。

実践する

1on1で決めたアクションプランをしっかりと実践に移していく段階です。経験学習サイクルにおける(1)具体的な経験をして、(2)その内容を振り返り内省することで、(3)その体験から得られた学びを教訓とし、(4)その教訓を新しい状況に応用して実践するという中で、1on1から得られた教訓を新しい状況にも応用して実践することが大切です。実践した結果をふまえて、次回の1on1ではうまくいったことを共有したり、新たに生まれた疑問点などを解消したりしていくことに繋がります。

1on1の導入事例

ここまで1on1の特徴や具体的な進め方についてご紹介してきました。最後に1on1の導入事例として、2012年に先駆けて1on1を導入し組織力強化に繋げている「ヤフー株式会社」4の事例をご紹介します。自社の参考になる部分はぜひお役立てください。

1on1導入前、ヤフー株式会社にはある組織課題がありました。それは社員同士のコミュニケーションが希薄化し、隣の席の同僚とさえもメールでコミュニケーションを取る状態があったということです。このことに問題意識を持った同社は1on1の導入を決定し、まずはコミュニケーションの頻度を高め、関係性の構築を目的として制度化を行いました。

当初は「1on1に時間をとられて他の業務ができない」「1on1に意味を感じない」などの声も上がりましたが、人事責任者の本間氏には「必ず企業風土が変わる」という確信があったと言います。

さらに外部の専門家による1on1のためのスキルを学ぶ研修も導入したことによって、今では社員の9割が少なくとも週に1回以上、30分間の1on1を実施しているとのことです。1on1が定着した成果として、社員がお互いにコミュニケーションを取りやすくなり、部下一人ひとりのことを理解できるようになったことで、上司が部下の能力を引き出し個人の強みを活かせる組織として機能するようになりました56

まとめ

1on1が従来の人事施策と異なる2つの特徴として、①短期的なサイクルで行われること、②部下主導で進められることがあります。1on1を継続することによって、部下は経験学習サイクルを自ら回し、主体性や問題解決力を鍛えていくことができます。また、上司側も部下の強みや特性を理解し、最大限能力を発揮できるように育成しやすくなるというメリットがあります。1on1を自社に導入する際には、組織全体および部下-上司間で目的を明確に共有することから始め、コミュニケーション改善や生産性向上に向けて有効活用していくことが大切です。

最後に、アチーブメントHRソリューションズでは1on1支援ツール「Kakeai」も活用することによって属人的と言われる1on1を可視化し、成果と定着に繋げることをご支援しています。より一層難易度の上がっているミドルマネジャーとメンバーとの日頃のコミュニケーションを活性化させ、双方の悩みを解決するとともに、コーチング研修やキャリア研修と組み合わせることによって知識やスキルのアップデートを可能にします。

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専門コンサルタントが御社に合わせた効果的な人事施策および1on1の実施方法についてアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。

Footnotes

  1. 【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査, リクルートマネジメントソリューションズ 2
  2. 松尾睦:職場が生きる 人が育つ 『経験学習』入門
  3. 一般社団法人日本コーチ連盟
  4. ヤフー株式会社
  5. 上司とのコミュニケーションこそが、部下を成長させる
  6. 「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション