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パワハラの基準をご存知ですか?昨今、ニュースでもパワハラ問題をよく見かけるようになり、社会全体の意識の高まりを感じます。そのようなニュースを見ると、自分がしている行動がパワハラではないかと、不安になる方も多いのではないでしょうか。また、パワハラとパワハラでないのかを分ける基準は何か、と聞かれるとすこし曖昧な方が多いようです。そこで今回は、パワハラとパワハラでないものの違いを明確にするために、パワハラにおける「受け手の基準」と「法的基準」という2つの基準についてご紹介します。パワハラの加害者にならないためにも、しっかりと基準を確認していきましょう。

パワハラの定義

パワハラとは

パワハラとは、パワーハラスメントの略語です。パワーハラスメントのパワーは、「力」ではなく「権力」を表しています。また、ハラスメントとは「いじめ」という意味です。つまり、パワーハラスメントをわかりやすく言うと、「権力者によるいじめ」もしくは「権力を利用したいじめ」となります。ここから分かるように、パワハラは権力の強い人と弱い人の間に起こるものです。たとえば、「上司と部下」「教師と生徒」「親と子供」「コーチと選手」などが挙げられます。

職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書1においては、以下の①~③までの要素をすべて満たすものをパワーハラスメントとして定義しています。

優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること

これは、その行為を受けた者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われるものを意味します。

業務の適正な範囲を超えて行われること

これは明らかに業務上必要性がなく、社会通念に照らして許容される範囲を超える様態の行為を意味します。

身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

これは行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担に感じること、または職場環境が不快なものになり、能力の発揮に重大な悪影響が生じることを意味します。

パワハラの6つの類型

それではどのようなものがパワハラにあたるのでしょうか?厚生労働省2によると、パワハラは大きく6つに分けられます。

精神的な攻撃

脅迫や名誉棄損、侮辱、暴言など、業務の適正な範囲を超えて精神的苦痛を与える言動を指します。例えば、同僚の前で必要以上に叱責される、他の職員も含めたメールで罵倒される、長時間繰り返し執拗に叱るといった行為が挙げられます。

身体的な攻撃

目に見える暴力や傷害を負わされるような身体的苦痛を与える言動を指します。例えば、叩く、殴る、蹴るなどの暴行、丸めた紙やポスターで頭を叩くといった行為が挙げられます。

過大な要求

業務上明らかに達成不可能なノルマを課すことを指します。例えば、入社したばかりでやり方もわからないのに他の人の仕事までおしつける、同僚は皆先に帰ってしまうといった行為が挙げられます。

過小な要求

単調な作業を延々とさせたり、程度の低い作業を与え続けることを指します。例えば、運転手なのに営業所の草むしりだけを命じたり、事務職なのに倉庫業務だけを命じたりといった行為が挙げられます。

人間関係からの切り離し

無視や仲間はずれといった意図的に職場の人間関係から切り離すような言動を指します。例えば、職場で話しかけても無視をしたり、1人だけ別室に席を移す、性的嗜好・性自認などを理由にコミュニケーションを取らない、送別会に出席させないといった行為が挙げられます。

個の侵害

プライベートな内容に過剰に踏み込んでくる行為を指します。例えば、交際相手について執拗に言及したり、配偶者に対する悪口を言ったりする行為が挙げられます。

パワハラの3段階

このパワハラは、深刻度によって3段階に分けることができます。ここでは、それぞれの段階を理解しやすいように信号機に例えて「赤の段階」「黄色の段階」「青の段階」の3つに分けてご紹介します。

  • 赤:パワハラを感じている人がおり、受けている行為に違法性がある
  • 黄:職場にパワハラを受けていると感じている人がいるが、法律的にはパワハラと認められない
  • 青:職場にパワハラを受けていると感じる人がいない

まずはもっとも危険な「赤の段階」についてご説明します。「赤の段階」は、職場にパワハラを受けていると感じる人がおり、その行為に違法性がある状態を表します。もし被害者が訴訟を起こした場合、パワハラを行った個人はもちろんのこと、会社にも責任があるかどうかを問われます。

続いて「黄色の段階」です。「黄色の段階」は、職場にパワハラを受けていると感じている人はいるが、法律の観点では違法性がない状態を表します。パワハラを受けていると感じている人が訴訟を起こしても、その要求を裁判所に取り下げられるのがこの「黄色の段階」です。

最後は、理想的な状態と言える「青の段階」です。「青の段階」では、パワハラを受けていると感じる人が職場におらず、もちろん法律的にも何ら問題がない状態を表しています。上司と部下が良好な関係を築けており、快適な職場環境が整っているのがこの「青の段階」です。

パワハラにおける2つの基準

このように、パワハラは深刻度から3段階に分けることができます。そして、それぞれの段階を分けているのが「パワハラの基準」です。パワハラの「赤の段階」と「黄色の段階」を分けている基準を「法的基準」といい、「黄色の段階」と「青の段階」を分けている基準を「受け手の基準」といいます。「法的基準」は、パワハラと思われる行為に法律的な違法性が認められるかどうかで分ける基準です。違法性があれば「赤の段階」に、違法性がなければ「黄色の段階」になります。そして、「受け手の基準」とは、職場でパワハラを受けていると感じる人がいるかどうかで分ける基準です。パワハラを受けていると感じる人がいれば「黄色の段階」に、パワハラを受けていると感じる人がいなければ「青の段階」になります。

パワハラ防止法とパワハラの基準

それでは、「法的基準」と「受け手の基準」について詳しく解説していきます。

法的基準~アウトかセーフか~

「赤の段階」と「黄色の段階」を分ける法的基準については、2019年5月「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が成立し、大企業では2020年6月1日から施行されています。中小企業は2022年4月1日から施行になりますので、改めて内容を確認していきましょう。

パワハラ防止法3の概要

この法律は「職場におけるいじめや嫌がらせを防止する」ことを目的に制定されています。背景として総合労働相談コーナーへのいじめ・嫌がらせの相談件数は平成30年に8万件を超え、7年連続ですべての相談の中でトップとなっていました。職場でのいじめ・嫌がらせを受けた社員がうつ病などの精神疾患を発症する率も高まってきたため、国の施策にハラスメント対策が明記されています。 まず、以下の4つの観点すべてに当てはまっていればパワハラとなります。

法的基準における4つの観点
  • (1) 職場の地位、優位性を利用しているか
  • (2) 業務の適正な範囲を超えた指示や命令をしているか
  • (3) 精神的苦痛を与えているか
  • (4) 職場環境を害しているか

次に、法律では事業主の義務として、以下の措置を講じることが規定されています。

事業主が雇用管理上で講じるべき措置
  • 事業主の方針の明確化 及びその周知・啓発
    • 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
    • 行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
    • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
    • 職場におけるパワハラの発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること
  • 職場におけるパワーハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
    • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
    • 速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
    • 行為者に対する措置を適正に行うこと
    • 再発防止に向けた措置を講ずること
  • 上記の措置と併せて講ずべき措置
    • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
    • 相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

受け手の基準~ベターかベストか~

「受け手の基準」は、「黄色の段階」と「青の段階」を分ける基準ですが、「法的基準」とはことなり、判別のための明確な観点を持ちません。なぜかというと、行為の受け手が「パワハラだ」と感じるか否かが判別の観点であり、受け手の性格や行為者との人間関係によって行為のとらえ方が大きく異なるからです。 ですが、パワハラと受け取られやすい言動には共通点があり、ミスやトラブルを起こした部下に指摘をするときの言動が「パワハラだ」と受け取られるようです。 では、パワハラと受け取られる指摘と受け取られない指摘を分けているものは何かと言うと、理由は様々ですが、その一つとして「叱っている」か「怒っている」かが挙げられます。「叱る」というのはもともと相手の成長を促すことを目的としていますが、「怒る」ことは目的もなく、ただ相手に自分の感情をぶつけることを意味しています。したがって、長時間の執拗な叱り方はパワハラにあたりますが、そうではなくて受け手が自分の成長のために言ってくれているんだと感じるよう、改善に向けた助言の仕方が大切ではないでしょうか。

パワハラの法的基準が問われる判例

このように、パワハラは2つの基準によって3段階に分けられています。その中で最も重要なのは「法的基準」をしっかり理解し、自社の中で「赤の段階」のパワハラを起こさないことです。そこで、先ほどご紹介した法的基準の4つの観点から見て、どのような言動が違法と判定されたのかを見ていきます。

判例1:日本ファンド事件(東京地裁平成22年7月27日判決)

これは、消費者金融会社に勤務していた社員3名が、上司及び会社を被告として損害賠償を求める訴訟を起こした判例です。この事件では、原告に対して12月から翌年の6月まで風が直接当たる位置に扇風機を固定し、扇風機を回し続けたこと、上司の提案した方法で作業をしなかったことに対して「今後、このようなことがあった場合には、どのような処分を受けても一切異議はございません。」という始末書を強制的に書かせたこと、原告が会議で業務改善の提案をした際に「お前はやる気がない。なんでそんなことを言うんだ。明日から来なくていい。」と怒鳴ったこと、報告のミスに対して「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」と叱責したこと、原告の背中を殴打し、膝を足の裏で蹴ったこと、原告の配偶者を指して「よくこんな奴と結婚したな、もの好きもいるもんだな。」と原告の前で言ったことのそれぞれが違法だと認められました。

この事件を法的基準の4つの観点から見ていきます。まず、扇風機を当て続けた行為は「(4) 環境を害している行為」に当たります。次に、始末書を強制的に書かせた行為は「(2) 業務の適正な範囲を超えた指示や命令をしている行為」です。そして、会議での発言に対して怒鳴ったことは「(3) 精神的な苦痛を与えている行為」といえます。また、報告のミスに対する叱責も同じ観点に当たります。殴打や蹴るといった行為は「3.精神的苦痛を与える行為」と「4.職場環境を害している行為」の両方に当たります。最後に、配偶者に対する侮辱発言は「3.精神的な苦痛を与える行為」となります。

判例2:千葉がんセンター事件(東京高裁平成26年5月21日判決)

これは、当がんセンターの手術管理部に勤務している麻酔科医の原告が、部の問題点を上司に当たる部長を通さずにセンター長に伝えたところ、一切の手術から担当を外されるなどの報復を部長から受け、退職を余儀なくされたことに対して慰謝料を求めた判例です。原告が問題点を指摘してから担当の割り当てが著しく減らされた事実が確認できたこと、担当から外す正当な理由が見受けられなかったこと、麻酔の指導経験を希望していた原告が、職務を奪われたことで退職することに相当な因果関係が認められることを鑑みて、部長の行為が違法であると判断されました。

この事件を法的基準の4つの観点から見ていきます。この事件で問題となったのは、報復目的で原告を業務担当から外したことです。この行為は4つの観点のうちの「1.職場の地位、優位性を利用している行為」「2.業務の適正な範囲を超えた指示や命令をする行為」に当たります。

パワハラを受けた場合どうすればいいか

ここまでパワハラの定義や種類、パワハラ防止方法についてご紹介しました。それでは実際にパワハラが起きてしまった場合の対処方法について見ていきたいと思います。

パワハラ防止法の中で、就業規則にパワハラに対する措置内容を規定することが企業には義務付けられています。したがって、自社の就業規則を確認し、社内または社外に設置されている相談窓口に事情を説明して、適切な対処方法を相談しましょう。

パワハラ対策の取り組み事例

企業としてのパワハラ対策事例をご紹介します。以下の事例集には、50件の企業や教育機関におけるパワハラ対策の取り組みの方法とポイントが載っていますので、自社の取り組みを検討する際にご参考になさってください。

職場のパワーハラスメント対策取組好事例集(厚生労働省平成28年度働きやすい職場環境形成事業)

ハラスメント研修の導入(日本貿易振興機構JETRO様)

ここでは弊社の研修を導入いただいた日本貿易振興機構様のご紹介をさせていただきます。導入前は、パワハラ防止を意識するあまり上司の指導力低下が課題となっていました。「○○してはいけない」という禁止事項を伝えるという点に主眼が置かれていたため、パワハラ防止の周知啓発という面では効果があったものの、管理職が必要以上にパワハラに対して過敏になり、人材育成が進まなくなっていました。 研修では、ハラスメントを起こさないということに留まるのではなく、上司は部下の成長・目標達成を支援する存在であるという視点に立ったうえで指導スキルの向上を目指せるプログラムを実施しました。ロールプレイを通じて、上司が部下の個性をよく観察し、一人ひとりに合った指導ができるようになったことで、「受け手の基準」に良い影響が見られ、パワハラ対策と部下育成の両立に成功しています。

まとめ

社内のパワハラ問題の解決を目指すとき、そのゴールとなるのは「裁判を起こされてしまったときに、負けないこと」ではなく、「パワハラを受けていると感じる社員が一人もいないこと」であるはずです。ですから、パワハラへの対策を考えるときには、黄色と赤を分ける「法的基準」ではなく、青と黄色を分ける「受けての基準」を意識する必要があります。今回は、パワハラのアウトとセーフを分ける「法的基準」について重点的に話しましたが、どうすればパワハラと受け取られずに済むかという「受け手の基準」についても、今後の記事でご紹介していきます。パワハラのない良好な人間関係に基づく職場環境を作るために、この記事を通して貢献できたならば幸いです。

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アチーブメントHRソリューションズのパワーハラスメント防止研修では、「どんなマネジメントが正解か」「どんなコミュニケーションが適切か」という疑問に答え、部下の成長を加速させるマネジメント方法の学習によって効果的にパワハラを防止します。NHK・東京MX・読売新聞・毎日新聞にも取り上げられた大好評の研修です。

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