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社員のフォロワーシップの向上は、組織を活性化させる鍵として注目されています。特に入社4年目以降の中堅社員に対する研修のテーマになるものととして、フォロワーシップがリーダーシップとともに最も高い割合を占めています。今回の記事では、リーダーシップとの関係性も含めてフォロワーシップに関する知識を深めていきたいと思います。また、フォロワーの分類とフォロワーシップの実践方法にも着目してまいりましょう。

フォロワーシップとは?

フォロワーシップの定義

組織に属する人々を大きく2つに分けるとするなら、組織を統率するリーダーと、リーダーの下で活動するフォロワーがいます。フォロワーシップという言葉は、1992年アメリカカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授による著書『The Power of Followership』の中で初めて紹介されました。ここでフォロワーシップの定義は明確に提唱されていないものの、以下のように言及されています。

「リーダーの言動に対して建設的な批判をし、自発的で担当業務以上の仕事をすること」(Kelly, 1992)

注意したいのは「批判」という言葉の意味です。ここでは物事の善悪や是非を評価して論ずることを指しており、ミスを非難するといった否定的な意味合いは含まれません。しかし日本人にとって批判という言葉は、否定的な使われ方が多いです。アメリカのフォロワーシップの研究では「批判する力」という言葉が出てきますが、日本ではそのような否定的な意味と誤解されるのを避けるため、「提言する力」として用いられることが多いのも事実です。我が国の近年の研究では、フォロワーが発揮する影響力に着目して、2013年以下のような定義がなされています。

「フォロワーが組織のゴールをリーダーと共有し、そのゴールに向かって行動することで直接的または間接的にリーダーや組織に対して発揮される影響力」(西之坊・古田,2013)

リーダーの指示に従うだけではなく、主体的にゴールに向かって行動することの重要性が伺えます。

フォロワーシップが注目されている背景

ロバート・ケリー教授の研究によると、組織の成果に対してリーダーが及ぼす影響力は1割~2割程度で、残りの8割~9割はフォロワーの力に左右されると言われています。現代では、新入社員ですら自ら考えて主体的に行動し、リーダーや組織に影響力を与えて貢献することが強く求められています。

フォロワーシップが求められるようになってきたのには、3つの組織的背景が要因だと指摘されています。

  1. チームで行う作業が増えてきたため、チーム全体で業績をあげる仕組みづくりが重要になった。
  2. 事業がヒエラルキー型組織ではなくプロジェクト組織で行われるようになり、メンバーの関与が重要になった。
  3. 専門能力の高い社員を活用する知識生産型のビジネスが増えてきた。

リーダーシップとの関係性

リーダーシップとは、 企業において各社員が組織の目標達成のために周囲に対して発揮する肯定的な影響力のことを指します。これはリーダーと呼ばれる人だけではなく、組織の一員であれば誰でもリーダーシップを発揮することができます。

一方でフォロワーシップは、リーダーや組織に対して発揮される肯定的な影響力のことです。その主体は、リーダーがいる社員となります。そのため、一般社員の他に部長や課長級のリーダー層もその上司に対してフォロワーシップを発揮することになります。

リーダーシップとフォロワーシップは相互に補い合い、相乗効果を生み出す関係にあります。例えばリーダーが主導するのに対して、フォロワーはリーダーを支えます。リーダーが決断するのに対して、フォロワーは批判・提言を行います。両者がリーダーシップとフォロワーシップの両方について理解することで、信頼関係の構築が進みます。互いに互いの役割を尊重して業務を遂行するからこそ、建設的な議論が可能になり、余計なストレスなく目的に向かって業務を遂行できるようになるのです。

フォロワーの分類

それでは、フォロワーシップ理論の具体的な中身について見ていきます。フォロワーとは、リーダーを支援する周囲のチームメンバーや部下のことです。

2つの分類基準

ロバート・ケリー教授はフォロワーを分類する際に、2つの分類基準を設けました。それは、「批判的思考力」と「貢献力」です。ここではまず、その2つの分類基準についてご紹介していきます。

批判的思考力

independent critical thinking(独自の批判的思考) と表現されます。批判的思考とは、感情や主観に流されずに物事を客観的・論理的に判断しようとする思考プロセスのことです。批判的思考の対極にあるものとしては、dependent uncritical thinking(依存的・無批判の思考) があります。

貢献力

貢献力とは、自分の能力を積極的に発揮してリーダーを支援し、 組織の目的達成に貢献する力のことです。貢献力を評価する基準は、「フォロワーがリーダーに対して積極的に関与しているか」になります。active(積極的関与)passive(消極的関与) に分類されます。

5つのタイプのフォロワー

上記2つの分類基準をもとにフォロワーを分類すると、以下の5つのタイプに分けることができます。

模範的フォロワー:パートナータイプ

独自の批判的思考力を有し、組織に対して積極的関与を示すフォロワーです。組織の非能率的な壁に立ちはだかっても才能をいかんなく発揮し、目指すべき目標に対して積極的に取り組んでいくという特徴を持っています。

孤立型フォロワー:一匹狼タイプ

独自の批判的思考力を有するものの、組織に対して消極的関与を示すフォロワーです。興味深いことに多くの孤立型フォロワーはもともと模範的フォロワーであったが、リーダーや組織に対して嫌気がさした経験があったり、不当な扱いを受けたと考えていたりするとも言われています。

順応型フォロワー:ゴマすりタイプ

組織に積極的関与を示すが、依存的・無批判の思考のフォロワーです。リーダーに対して服従し順応することが義務であると考える傾向があります。

消極的フォロワー:無気力タイプ

依存的・無批判の思考を有し、消極的関与を示すタイプのフォロワーです。考えることをリーダーに頼り、仕事に対する熱意や責任感、積極性に欠ける傾向にあります。自分の業務分担を超えるような危険を犯すことはありません。

実務型フォロワー:リアリストタイプ

適度に独自の批判的思考力と積極的関与を示すフォロワーです。いい仕事はしたがるが、進んで自らを危険にさらすことはなく、失敗も避けたがります。

このようにフォロワーには5つのタイプがありますが、この分類の目的はフォロワー内に優劣をつけることではありません。社員が現在、どのフォロワータイプなのかを把握することが目的です。その上で今後、批判的思考力と貢献力の両方を伸ばしていけるようサポートすることが重要になります。

フォロワータイプ別コミュニケーションの具体例

では、具体例を通じてフォロワーの分類について理解を深めていきます。会話例の中では、上司と部下が登場します。それぞれの部下が5つのフォロワータイプの中でどれに当てはまるか考えながら読んでみてください。

〈 具体例① 〉Aさん

上司: 最近売れ行きが伸びていないシュークリーム商品の改良を考えているんだが、相談に乗ってくれないか。私としては、カスタードクリームの量を増やすのはどうかと思っているんだ。意見を聞かせてくれるかな?

部下A: 素晴らしいアイディアですね。喜ぶお客様が増えると思います。私もそれが良いと思います。

上司: そうか、ありがとう。Aさん、良かったら企画書の作成を手伝ってもらえるかな?

〈 具体例② 〉Bさん

上司: 最近売れ行きが伸びていないシュークリーム商品の改良を考えているんだが、相談に乗ってくれないか。私としては、カスタードクリームの量を増やすのはどうかと思っているんだ。意見を聞かせてくれるかな?

部下B: 確かにカスタードクリームが好きなお客様は喜びそうですし、良いアイディアだと思います。ただ、甘くなりすぎてしまわないか心配です。増やしたクリームによってコストも上がります。私としては、別な課題があると思いました。先日の消費者調査で、大きなシュークリームは子どもや女性の口では食べづらいという結果が出ています。誰でも手軽に食べられるよう、敢えてサイズを小さくして販売してみてはいかがでしょうか?

上司: そうか、それは私一人では思いつかなかったよ。おもしろい試みだね。

部下B: ありがとうございます。企画書を作成してみてもよろしいでしょうか?

それぞれはどのようなタイプか

AさんとBさんの対応について比較してみましょう。Aさんは上司を立てながら、上司の意見に同意しています。上司の企画書の手伝いにも快く応じています。Aさんは順応型フォロワーと言えます。

一方、Bさんは上司を立てつつも自分の意見をしっかりと提言し、建設的なコミュニケーションを行っています。また、自ら積極的に企画書の作成を申し出ています。Bさんは模範的フォロワーと言えます。

これはほんの一例ですが、フォロワーシップがどんなものか、より具体的にイメージできたのではないでしょうか。

フォロワーシップによるメリット

フォロワーシップが強化されることで、組織全体の団結力を築き上げることができます。お互いが意見を出し合うことによって、目標達成までのプロセスが明確になり、全員が納得できる方向性を示すことができるようになります。上司と部下の信頼関係構築も進みやすいでしょう。また、部下にとっては成長スピードが上がったり、自分の意見が採用されて自信に繋がったりと、モチベーションアップにも良い影響を与えてくれます。

フォロワーシップを身につけてもらうポイント

批判的思考力を高めるポイント

まずは、社員に批判的思考力を身につけてもらうためのポイントです。2つご紹介します。

日常的に、「自分だったらこうする」と考える癖をつけてもらう

日常的な様々な場面で「自分だったらこうする」と考える癖をつけてもらうことが大切です。上司の考えを鵜呑みにしていては、自分の意見を深めることはできません。上司の考えや行動に対して常に客観的な視点を保ちながら、「もし自分がこの状況に置かれたらどのように考え、どのように行動するか?」と考える癖をつけてもらうことをオススメします。したがって、上司が解決策をすべて指示するのではなく、簡単な領域から「どうするのが良いと思いますか?」と問いかけてみるのも有効です。そうすることによってメンバーは当事者意識を持つことができ、上司に頼りきりになるのではなく自分で考えて行動する力が身につきます。

自分が行うのは非難ではなく、提案であると理解してもらう

一般的に批判と聞くと、「人事評価に響いたらどうしよう」「上司との仲が悪くなったらどうしよう」と考えてしまい、なかなか実行することができなくなってしまいます。しかし、あくまでも自分のやっていることは提案なのだと理解すれば、その社員は少し気持ちが軽くなり、積極的に上司に意見を言いやすくなるはずです。

貢献力を高めるポイント

次に、社員に貢献力を身につけてもらうためのポイントです。こちらも2つご紹介します。

自分の業務をしっかり遂行することに専念させる

逆説的に思えるかもしれませんが、社員にはまず自分の業務をしっかり遂行してもらうことがとても重要です。自分の責任範囲の仕事をしっかりと終わらせることによって、その社員には心に余裕が生まれて周囲のことをよく観察できるようになります。そして積極的に他者に対して貢献できるようになっていきます。

周囲の人のことをよく観察し、「自分にできることはないか」と考える癖をつけてもらう

自分のことだけを考えていては、貢献力は身につきません。上司の仕事ぶりや周りの人の動きをよく見て、手伝えることがあった場合は積極的に動くようにアドバイスすることをオススメします。

フォロワーシップを発揮してもらう環境づくり

ここまで、社員にフォロワーシップを身につけてもらうためのポイントについて見てきました。しかし、フォロワーシップを発揮するために必要なのは、その社員だけの問題にとどまりません。社員がフォロワーシップを発揮しようと思っても、社内環境が整備されていないという状況もよく起こりうるのです。そこで最後に、社員がフォロワーシップを発揮しやすくするための環境づくりについてご紹介していきます。

経営層が人事評価に対する明確なメッセージを発信する

社員がリーダーに対してフォロワーシップを発揮する際に最も気になることが人事評価です。「提案を批判ととられ、人事評価に影響してしまうのではないだろうか」と社員が考えてしまえば、フォロワーシップはうまく発揮されません。そのため、経営層が社員に対して「リーダーへの提案を批判と捉えることは我が社ではしません。また、提案が拙いからといってそれが人事評価に影響することはありません。」という明確なメッセージを発信することをオススメします。それに加えて、そういったリーダーへの提案を主体的にしてくれる人を評価するというメッセージを発信することも有効です。

リーダー層に心理的安全性について学んでもらう

社員がフォロワーシップを発揮していくためには、リーダー層の意識改革も必要不可欠です。オススメなのは、心理的安全性について学んでもらうことです。心理的安全性とは、自分が感じたままのことを周囲に率直に伝えられる環境や雰囲気のことです。心理的安全性は、企業におけるチームの生産性を高める方法としてGoogleが発表したことで注目されました。心理的安全性が高い職場環境を作っていくことで、社員のフォロワーシップも発揮されるようになっていきます。心理的安全性について理解を深めることは、今後企業がチームビルディングを行う上でとても重要なことだと言えます。

まとめ

フォロワーシップは、リーダーシップと並んで今後重要になっていく概念です。まず、フォロワーには「模範的フォロワー」「順応型フォロワー」「孤立型フォロワー」「消極的フォロワー」「実務型フォロワー」の5つのタイプがあります。フォロワーは自分が現在どのタイプなのかを見極めることが大切です。そして「模範的フォロワー」のように、批判的思考力と貢献力の両方を高めることを目指してフォロワーシップを学んでいきましょう。合わせて、社員がフォロワーシップを発揮するための環境づくりも行うと効果的です。それぞれのリーダーが組織の目標や方向性を明確に示し、リーダーシップを取れているかも確認しましょう。フォロワーだけにフォロワーシップを求めるのではなく、組織全体の問題として捉えた施策を実行していくことが重要です。

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