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職場のメンタルヘルス対策とは?ストレスの3つの原因と不調のサイン

職場のメンタルヘルス対策とは?ストレスの3つの原因と不調のサイン

社員の心の健康状態は、組織全体の活力や生産性に影響を与えます。不調を抱えたまま働き続けると、仕事中の集中力低下や判断力低下に加えて、その人のやる気や好奇心といった原動力が失われていきます。今回の記事では、メンタルヘルスに大きな影響を及ぼすストレスの原因と社員に表れる不調のサインをご紹介します。また、段階的にどんな対策方法を取っていけばよいのかに注目してください。

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メンタルヘルス対策とは?

メンタルヘルス対策の目的

メンタルヘルスとは、心の健康のことです。WHO(世界保健機関)はメンタルヘルスについて、以下のように定義しています。

「個人が自分の能力を認識し、日常のストレスに対処することができ、生産的かつ有意義に働いて自分のコミュニティに貢献し得る良好な状態。」

これは単に病気でないというだけでなく、身体的にも、心理的にも、社会的にも健康で幸福な状態にあるということです。これら3つの側面が満たされている必要があるため、例えば以下に当てはまるものが多いほどメンタルヘルスに問題を抱えている可能性が高まります。

  • ぐっすり眠れない
  • 何らかの悩みや不安がある
  • 幸福感や生きがいが感じられない
  • 人間関係がうまくいっていない
  • 仕事がうまくいっていない

企業におけるメンタルヘルス対策は、すべての働く社員を対象としています。企業がメンタルヘルス対策を行う目的は以下の3つになります。

組織の生産性低下の防止

メンタルヘルスが不調になると「普段なら半日でできていた仕事が1日かかるようになる」「重要な決定事項が判断できなくなる」といった事が起こります。本来その人が持っていた業務遂行能力を十分に発揮できなくなり、生産性が落ちていきます。メンタルヘルスの不調を早期に発見して対処することで、このような生産性の低下を防止しましょう。

事故やトラブルのリスクマネジメント

メンタルヘルスの不調によって集中力や注意力が低下すると、意図しない事故やトラブルに繋がる可能性があります。特に、公共交通機関の運転や危険物を取り扱うような職種では、本人だけではなく周囲の人々の安全や健康も脅かされます。このような事故やトラブルを起こさないためにも、メンタルヘルスに十分配慮する必要があります。

職場の活気や活力の向上

メンタルヘルスの不調に陥った人だけではなく、組織全体のメンタルヘルス対策が日常的にうまくいっていると、全社員が健やかに生き生きと働けるようになります。個々の仕事の質が高まるため、チーム内のメンバー同士の相乗効果も高まります。職場の活気を向上させたい、社員のモチベーションを高く維持したいという場合にもメンタルヘルス対策は有効です。

メンタルヘルスが注目されている背景

それでは、メンタルヘルスが注目されるようになった背景には何があるのでしょうか。

現代日本は少子高齢化が加速し、多くの企業が人手不足という課題に直面しています。それに伴って、一人ひとりの社員の仕事量や責任の重さが増加しています。以前は当たり前だった年功序列や終身雇用といった雇用形態が変化し、将来の見通しが持てずに不安を感じる社員が増えています。また、成果主義の広がりによって成果を上げ続けなければならないというプレッシャーを感じる社員もいるでしょう。

2019年厚生労働省の労働衛生調査によると、「現在の仕事や職業に関して強いストレスを感じている」と回答した人の割合は58.0%でした。2015年の調査以降、例年50%を超える結果が出ています。つまり、半数以上の人々がメンタルヘルスの不調に陥る危険性があるということです。ストレスの内容は「仕事の量・質」が59.4%と最も高く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が34.0%、「対人関係(ハラスメントを含む)」が31.3%となっています。

このような背景から、現代は「ストレス社会」と呼ばれることが多くなっており、企業でもストレスに適切に対処するメンタルヘルス対策に注目が集まっています。

ストレスとは?

ここまでメンタルヘルス対策にはどんな目的・背景があるのかをご紹介しました。メンタルヘルス対策においては、ストレスにどう対処していくかが大きなポイントとなります。そこでストレスにはどのような原因があり、どのような症状が表れるのかを見ていきましょう。

ストレスの3つの原因

ストレスとは、外部からの刺激によって心や体に負担がかかっている状態のことを指します。ストレスの原因になる要因をストレッサーと言い、以下の3つに分類することができます。

物理化学的ストレッサー

暑さや寒さ、周囲の騒音や人混み、悪臭などの環境変化が含まれます。

生物的ストレッサー

細菌やウィルスへの感染、カビ、花粉、妊娠などが含まれます。

社会的ストレッサー

上司や同僚、家族、友達など身の回りの人々との人間関係、家庭環境、景気や政治など社会情勢の変化が含まれます。また、悩み、不安、焦り、緊張、怒り、憎しみ、寂しさといった感情の変化が含まれます。

会社で特に注意が必要なものは、社会的ストレッサーに挙げられている人間関係や精神的な緊張状態です。

ストレスによる症状

このようなストレッサーが増加していくと、以下のような症状が反応として見られるようになります。精神面と身体面に分けてご紹介します。

【精神面】

  • イライラする
  • 気分が落ち込む
  • 集中できない
  • 今まで興味あったものに関心がなくなる
  • 楽しめない
  • やる気がなくなる

【身体面】

  • 頭が痛い
  • 肩がこる
  • 目が疲れやすくなる
  • 顔がピクピクする
  • 胃が痛い
  • 食欲がない
  • 便秘になる
  • 下痢になる
  • 動悸や息切れがする
  • 体のふしぶしが痛い
  • 腰が痛い
  • 眠れなくなる(または寝すぎてしまう)

※ストレスによる症状の現れ方は人それぞれです。ここに挙げていないものも、ストレスによる反応として現れる場合があります。特に、身体面の症状は病気によるものなのか、ストレスによるものなのか判別が必要ですので、早期に医療機関を受診するようにしましょう。

ストレスチェックの方法

それでは、社員のストレスの状態をチェックするための方法を確認します。「労働安全衛生法」という法律が改正され、2015年12月から、労働者が50人以上の事業所では毎年1回「ストレスチェック」を全員に実施することが義務付けられました。「ストレスチェック」とはストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することでストレス状態を調べる簡単な検査です。

実際の実施にあたっては「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」が無料で配布されていますので、以下のURLをご参考になさってください。

厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム

また、詳しい手順などが知りたい方は「ストレスチェック制度導入マニュアル」が公開されていますので、以下のURLをご参照ください。

ストレスチェック制度導入マニュアル

ストレス過多による心の病気

ここまでストレスの原因や症状、チェック方法について述べてきました。人はストレス状況に直面した時、ストレスを緩和・軽減するための対処行動を取っています。もしこの対処行動がうまくできないと、ストレスがどんどん蓄積して心の病気を発症してしまうことがあります。今回は、誰もが発症する可能性のある心の病気を3つご紹介します。

うつ病

うつ病は脳内の神経伝達物質が減少することによって、意欲の低下や不安症状が引き起こされる病気です。もともと責任感が強く几帳面な性格の人がなりやすい傾向にあります。また、転勤や転職、昇進をしたばかりの頃など、何か身の回りで急激な環境変化があった際にはうつ病になりやすいと言われていますので注意が必要です。

以下の①~⑨の症状のうち、①か②のいずれか1つを必須、③~⑨のうち4つ以上、合わせて5つ以上の症状が2週間にわたって出現している場合、臨床検査を合わせて行い、うつ病と診断されます。(大うつ病診断基準DSM-Ⅳ)

  1. 悲しい、憂鬱な気分、沈んだ気分
  2. 何事にも興味がわかず、楽しくない
  3. 激しい体重減少または体重増加がある
  4. 寝つきが悪く、朝早く目が覚める
  5. 心配事が頭から離れず、考えが堂々めぐりする
  6. 疲れやすく元気が出ない
  7. 集中力が下がった
  8. 自分を責め、自分は価値がないと感じる
  9. 自分が消えたらいいのに、死んでしまいたいと思うことがある

うつ病を抱えた人には、叱咤激励はしてはいけません。すでに長い間辛い気持ちに立ち向かってきた事に対して共感・受容し、静かな環境で心身を休めることが大切です。

適応障害

適応障害はその人にとって耐え難いストレスに直面した時に引き起こされる感情や行動の変化によって、社会生活が障害されている状態です。ストレスが始まってから3か月以内に症状が出現します。適応障害からうつ病に移行することもあります。症状もうつ病とよく似ていますが、見分けるポイントがあります。**適応障害ではストレスになっている物や人、状況から一旦離れると症状が緩和され、通常通り生活することができます。**うつ病ではストレスの原因から離れたとしても、抑うつ状態が続きます。 したがって、適応障害をもつ人のためにはストレスとなっている原因を見極めて環境を改善することが大切です。通常はストレスの原因が消失すると6か月以内に回復し、新たな環境に適応することができるとされています。

自律神経失調症

自律神経失調症は自律神経のバランスの乱れによって引き起こされる病気です。自律神経は交感神経と副交感神経という2つの神経系に分けられます。交感神経は身体を活発に動かす時に働き、副交感神経は身体を休める時に働きます。わかりやすく言うと、戦う時が交感神経、リラックスした時が副交感神経が働きます。これらがお互いにバランスを取りながら身体の状態を調整していますが、強いストレスによってこのバランスが崩れると全身に様々な症状が出ます。例えば、朝起きられなくなる、倦怠感、めまい、発汗、動悸、のぼせ、手足の冷え、片頭痛、突然泣くなどが挙げられます。 まずは、規則正しい生活リズムを取り戻すことによって、自律神経のバランスを改善することが何より大切です。

効果的なメンタルヘルス対策とケア方法

それでは、企業におけるメンタルヘルス対策はどのように進めていけばよいのでしょうか。すべての基本は「予防」からスタートするということです。そして、一次予防から段階的に行うのがポイントです。

一次予防:職場環境の改善

一次予防とは、社員がメンタルヘルスの不調を起こさないようにするための対策です。一次予防には、職場環境の改善が重要です。効率的に職場環境を改善するためには以下の項目を実践してみてください。

職場改善のポイント

  • 特定の社員に仕事量が集中したり、少なくなりすぎることを避ける。
  • 各自作業スペースの調整ができる職場レイアウトにする。
  • 社員の社会生活に合わせて、勤務形態の配慮を行う。
  • 職場の心理的安全性を高める。
  • 業務ローテーションを取り入れ、お互いに他の業務のサポートができるようにしておく。
  • 社員それぞれの仕事の役割、責任、意義を明確にする。
  • 職場で各社員が意思決定へ参加できる機会を作る。

(参考:国際労働機関(ILO)、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)報告)

二次予防:不調のサインに気づいて早期発見

二次予防とは、メンタルヘルスの不調をできるだけ早期に発見して、早期に対処することで、重症化を防ぐための対策です。以下のようなサインが社員に見られたら、まずは最近の仕事や身の回りのことで心配なことはないか傾聴し、相談に乗ってあげてください。ストレスによる症状がつらく、業務に支障が出ている場合には、早めにカウンセリングを勧めてください。

メンタルヘルス不調のサイン

  • 朝の遅刻や無断欠勤が増えた(朝に調子が悪くなることが多い)
  • 業務効率が著しく下がり、今までしなかったようなミスが増えた
  • 報告、連絡、相談が減った
  • 表情が暗く、活気がなくなった
  • 髪型や服装が乱れている
  • 落ち着きがなく、挙動不審である**

※個人差があり、必ずしもすべての項目が現れるわけではありません。以前の様子と比べて、どのような変化があるかに注目してください。

三次予防:職場復帰支援

三次予防とは、メンタルヘルスの不調によって休職をしていたり、何らかの治療を受けたりしている社員の職場復帰を支援し、再発を防止するための対策です。実際の職場復帰支援プログラムでは、休業している社員に加えて上司、人事労務管理スタッフ、産業医、主治医、家族など多くの関係者と共に多くのステップを踏むことになります。ここでは、その際大切にしたいポイントについてご紹介します。

職場復帰支援のポイント

心の健康問題について正しく理解する

まず、一番大切なことは病名を聞いた時に思い込みで判断しないということです。多くの企業の担当者から聞かれるのは、「本人にどう接したらいいかわからない」「どのような状態なのかわからない」という声です。これはその健康問題について正しく理解していないために起こることです。その発生機序、症状、治療方法、飲み薬と副作用までを専門書で確認してみることが大切です。その人がどんなことで辛い思いをしているのか、どんな接し方をされると嬉しいのかがわかります。 健康問題について他のメンバーに知らせるかどうかは本人との相談になりますが、周囲のメンバーがそういった正しい知識を持って誠実に迎え入れることができれば、職場復帰は成功するでしょう。

職場環境が改善されているかを確認する

メンタルヘルス不調の原因となったストレッサーが改善されていない場合には、せっかく職場復帰をしてもまた調子を崩してしまいます。ストレスの原因をきちんと突き止め、解決に向けたサポート体制を構築しましょう。

試し出勤制度を設ける

これは正式な職場復帰の前に休業していた社員の不安を和らげ、段階的に復帰の準備をしていく社内制度です。職場の状況も自分で確認しながら進められるため、再発率が減少します。試し出勤制度は法律で制度化されているものではなく、各企業が自社の裁量で実施できる制度になります。導入にあたっては労使間で内容を十分に検討し、ルールを定めておきましょう。

尚、いずれのメンタルヘルス対策においても、社員のプライバシーには十分な配慮が必要です。情報の漏洩がないよう、慎重に取り扱いましょう。第三者に相談する場合も原則本人の同意が必要になります。

メンタルヘルス対策の取り組み事例

メンタルヘルス対策で成果をあげていらっしゃる企業様2社をご紹介します。

株式会社松下産業:ヒューマンリソースセンターを設置し、社員のあらゆる相談にワンストップで対応する

社員数:234名(2019年6月時点) 業種:総合建設業

2013年にヒューマンリソースセンター(HRC)を設置すると、メンタルヘルスの問題が新たに発生することはほぼなくなったそうです。HRCという独立した部署に実質的な権限を持たせ、産業医と産業保健師と連携して社員の面談を実施することによって、幅広い支援を的確に提供しています。

株式会社ベネッセコーポレーション:手厚いメンタルヘルス研修によって、ラインケアを充実させる

社員数:約6,000人(2020年6月時点) 業種:教育支援業

新入社員研修、入社後半年のフォロー研修の他、新任管理職研修などで必ずメンタルヘルスについて取り扱い、ラインケアの充実に力を入れています。ラインケアとは直属の上司などの管理職が部下の異変にいち早く気づき、ストレスの軽減に向けて適切に対応することを言います。その他のメンタルヘルス対策と組み合わせることで、2008年以降メンタルヘルス不調による休職者は10年間で3分の1に減少しました

まとめ

あらゆるストレスがメンタルヘルスの不調を引き起こす可能性があります。企業にとって重要なことは、一次予防、二次予防、三次予防と段階的に対策を進めていくことです。まずは職場において社員のストレスの原因になるものがあれば、周囲と連携して改善を図りましょう。そして社員が発する不調のサインには、早期に適切な支援を行うことが大切です。

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