ただいま開催中のATD2018。マーカス・バッキンガム氏がATD2018で行った基調講演「LOVE + WORK」についてレポートします。
マーカス・バッキンガム氏が語る強みを活かした仕事術
マーカス・バッキンガム氏のプロフィール
基調講演のレポートの前に、マーカス・バッキンガム氏の紹介をしておきたいと思います。
マーカス・バッキンガム氏はケンブリッジ大学を卒業後、ギャラップで17年間、世界トップレベルの職場やリーダー、マネジャーの調査に携わり、現在はADP研究所のコンサルタントとして強みを発揮したエンゲージメントの高い従業員が、売上、顧客満足度、利益、生産性などにどのように貢献しているかを研究し続けています。
「さぁ、才能に目覚めよう」「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」など日本でもベストセラーになった書籍も執筆しており、トヨタ、Facebook、 Lululemon、Coca-Cola、Microsoft、Disneyなど数々の企業と協力して、従業員一人ひとりが自身の強みを見出し、人生で成功し続けることためのコンサルティングを行っている世界を代表するビジネスリーダーの一人です。
フリーシンキングで考える
マーカス・バッキンガム氏は、強みや個性をどのように測定するのか?それがどのように仕事につながるのか?ということを研究する専門家です。マーカス・バッキンガム氏は普段研究をするときに、「フリーシンキング」という考え方を活用しているそうです。
「フリーシンキング」とは、先に理論や考えを持ってくるのではなく、まず問いを立てて先入観なく考える思考法のことです。
この考え方を説明するために、マーカス・バッキンガム氏は、結婚についての考察を例に挙げていました。たとえば、「悪い結婚というのは何か?」と考えた時に、ケンカが多いのは悪い結婚である、とします。この考え方を念頭に「良い結婚というのは何か?」ということを考えると、ケンカしないのは良い結婚であるということになる。しかし、実はケンカの数に結婚が幸せかどうかの統計的に優位な違いはない。つまり、「悪い結婚」をどれだけ調べても、「良い結婚」を考えることはできないということです。
マーカス・バッキンガム氏は「本当に卓越したリーダーはどのような人だろう?」「強みはどのように活かされるのだろう?」とフリーシンキングで思考し、探求を続けているそうです。
私たちがハマってしまう9つのウソ
強みをテーマに研究を続けているマーカス・バッキンガム氏ですが、「強みにフォーカスする」という彼の主張とは異なる状況が世の中にはたくさんあるようです。世の中には私たちがついついはまってしまうウソとして下記の9つを挙げていました。
- 人はどの会社で働くかに意識を向けている
- 良いプランを持っていれば勝てる
- 良い会社はゴールをトップダウンで指示する
- バランスの良い人材が優秀である
- 人はフィードバックを求めている
- 人の他者を適切に評価できる
- 人には潜在的能力がある
- 人はワークライフバランスを求める
- 「リーダーシップ」は一つの行動だ
これらの中で、特に注目をすべきなものとしてあげたのが、「4.バランスの良い人材が優秀である」ということです。なぜこれがウソだと言えるのでしょうか?
強みにフォーカスを当てる
このことを説明するために、マーカス・バッキンガム氏はサッカーの世界的スターであるメッシ選手のゴールを紹介していました。
紹介された動画で注目をすべきなのは、メッシ選手がほとんど左足しか使っていないということです。メッシ選手の強みは左足です。まるでボールが吸い付くような左足のタッチは、ディフェンダーがわかっていても止められないほどの技術です。13歳でスカウトされたとき、メッシ選手は「一流のプレイヤーになるためには左足しか使わなすぎる」と言われ、右足を使うトレーニングを行いました。しかし、15歳の時に、左足の技術の向上に集中することにしました。メッシ選手は1試合の92%を左足でプレーすることもありますが、世界の超一流プレイヤーになったのです。
このエピソードを引用しながら、マーカス・バッキンガム氏は聴衆に問いました。
あなたにとって、メッシ選手の左足となるものはなんですか?
マーカス・バッキンガム氏は「弱みを無視せよ、と言っているのではありません」と続けます。「人には弱みもあるということを前提に、強みにフォーカスせよと言っているのです」と主張しました。これはまさにフリーシンキングの考え方です。
調査によると、強みに焦点を当てるという人は、アメリカで41%、フランスで36%、日本ではわずか24%しかいないのだそうです。70%の親は子どもの弱みに注目してしまう、というデータも紹介されていました。英語A 社会B 数学B 理科Fという成績表を見た時に、ついつい理科の成績を見てしまうのが人の常である、ということなのです。
強みを活かしたマネジメント
先にも触れましたが、マーカス・バッキンガム氏は「強みにフォーカスせよ」と言っているだけで、「弱みを無視せよ」と言っているわけではありません。では、メンバーを持つリーダー、マネジャーとして、この考えをどのようにマネジメントに活用すればよいのでしょうか?マーカス・バッキンガム氏が語った大切なポイントを記載します。
全ての人が強みを持っている
どのような人だとしても、その人の強みがあると考える。強みがないのではなく、その強みが表に出てきていないだけであり、本人も気が付いてないだけなのです。
フィードバックのバランスは5:1
マーカス・バッキンガム氏は「メンバーにフィードバックするときには、強みと弱みのフィードバックのバランスが大事である」と主張します。理想的なバランスは5:1と言います。弱みは1でよく、強みを5の量でフィードバックしてあげることが効果的なのだそうです。
メンバーの強みを見てあげる
メンバーの強みを見つけ、強化し、活かすためにのキーワードは、”I saw this(私は見たよ)”ということだとマーカス・バッキンガム氏は主張します。これが強みだ!と大げさに褒める必要もない。「素晴らしい仕事だった」をしたということ伝えてあげるだけで十分であり、そのことからメンバー自身が自分の仕事ぶりをリプレイし、自分で強みを発見していくのだそうです。
メンバーが熱中するものに注目をする
メンバーが何に喜びを感じ、何に熱中をしているのかに注目をします。マーカス・バッキンガム氏は恋愛に例えながら話をしました。
「恋に落ちた時、気分はどうでしょうか?時間がゆったり流れ始め、あらゆる幸福な気分が訪れます。なぜ相手のことが好きなのかを考えるかもしれません。でも、そこに明確な理由がないこともあります。言うなれば、運命の赤い糸を感じますよね。仕事も同じなのです。熱中できる仕事には、熱中できる何かがあります。仕事の中で赤い糸がつながっているもの、そこにあなたの強みがあるかもしれません」
このようにマーカス・バッキンガム氏は語りました。メンバーが好きなもの、熱中しているものに注目していくことが効果的なのです。
まとめ
1週間、恋に落ちたように仕事をしてみてください。 そして、運命の赤い糸、あなたの強みを見つけてください。
強みを研究してきたマーカス・バッキンガム氏が講演の終盤で語った言葉です。強みにフォーカスし、強みを活かすことについてはこれまでのマーカス・バッキンガム氏の首尾一貫したメッセージでしたが、今回の講演では、恋愛に例えながら強みを見つける方法について語られていたことが印象的なセッションでした。
皆さんの強みは何でしょうか?そして、皆さんが熱中できるものは何でしょうか? 考えるきっかけとなれば幸いです。
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