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ルーブリックとは?新しい学習評価の実態と評価表の作り方

ルーブリックとは?新しい学習評価の実態と評価表の作り方

ルーブリックとは、学習の達成度を表を用いて測定する評価方法のことです。これまで学習を評価する方法としては、ペーパーテストが一般的でした。しかし、ペーパーテストだけでは学習者のやる気を引き出せず、評価できる範囲も狭いことから、2010年以降ルーブリックが注目され続けています。そこで今回はこのルーブリックとは一体何なのか、その実態を解説すると共に、実際の評価方法と評価で使用する表の作成方法をご紹介していきます。

この記事のまとめ

  • ルーブリックとは評価項目と評価基準の2軸からなる学習達成度の評価手法で、テストのみでは評価し辛い定性的な観点を評価することができる
  • 「アクティブラーニング」という学習者主体の学習スタイルが広まったことで認知されるようになった
  • 学習者に事前にルーブリックを公開することで到達目標が明確になり、学習者自身の自己評価を促したり、学習速度の向上が見込める

ルーブリックとは

ルーブリックとは、先にも少し述べたように、学習の達成度を測るための評価方法の一種です。ルーブリックについて見ていくにあたって、まずは概要として「注目されている理由」「第一人者」「特徴」について解説していきます。

ルーブリックが注目されている理由

ルーブリックが注目されるようになった理由の中で最も大きな要因は、「アクティブラーニング」の重要性が日本で認識されたことです。アクティブラーニングとは、学習者が主体となって能動的に学習することであり、アメリカで普及していた教育方法の総称でもあります。アクティブラーニングに該当する学習方法としては「ディスカッション」「体験・実演」「他者に教える」などがあり、これらを行うことで学習の定着率が一層高まるとされています。

2010年以降、日本でもこのアクティブラーニングが注目され始め、導入されていきました。しかし、導入するにあたって問題となったのが、アクティブラーニングの学習を評価する方法です。それまで一般的な評価方法だったテストでは、アクティブラーニングの学習を適切に評価できず、テストに代わる新たな評価方法が必要でした。そこで注目されたのが『ルーブリック』です。

ルーブリックの第一人者

そんなルーブリックの第一人者として知られるのは、ポートランド州立大学の名誉教授であるダネル・D・スティーブンス教授です。ルーブリックの手引書であり、ベストセラーにもなった「Introduction To Rubrics(大学教員のためのルーブリック評価入門)」の共著として有名です。

ルーブリックの特徴

ルーブリックの特徴は、点数という1つの尺度で評価が決まるテストとは違い、複数の評価項目についてそれぞれのレベルを評価します。レベル(評価尺度)の判定のための具体的な評価基準が示されているため、一貫性をもった評価が可能です。

評価項目にはそのプログラムで身につけてもらいたい観点が示されます。例えば「技能」「表現力」「理解度」といったパフォーマンス項目や、「興味・関心」「意欲」「態度」といった定性的な項目などが入ります。

評価基準には、例えば「〇〇という概念について説明できる」のように、その評価項目のレベル別の達成基準が具体的に示されます。

このように多様な観点とその習熟度別の達成基準を組み合わせることで、テスト形式では評価が難しい定性的な観点であっても明確に評価できるという特徴が挙げられます。

さらにルーブリックは評価する対象や内容に合わせて、評価基準と評価の項目数を調整することができるため、様々な学習の場に適した評価基準を設定することができます。

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ルーブリック表の作成方法

ルーブリックは複数の評価項目から構成されるのが一般的であり、それらの評価項目を一覧にまとめたものを「ルーブリック表」と呼びます。 以下がルーブリック表のイメージです。どのような構成で作成すればよいのかを確認していきましょう。

評価尺度

評価尺度とは、学習目標の達成度を判断するための尺度になります。表では一番上の列に並んでいる1~4の数字が評価尺度にあたります。5段階評価であれば1~5、4段階評価であれば1~4といったように、評価段階に合わせて調整可能です。また、数字以外にもA・B・Cなどのアルファベット、「優秀」「良」「再学習」などの言葉で表されることもあります。

評価項目

左端の列に記入されているA~Cが評価項目です。この項目は評価する対象によって内容と数を適宜設定していきます。例えば、ディスカッションを評価する場合の評価項目としては、「傾聴力」「意欲」「リーダーシップ」「トークスキル」「理解力」と言ったものが挙げられます。

評価基準

評価尺度と評価項目が交差するマスに、評価基準を記載します。評価基準を設定する上でのポイントは、なるべく行動ベースで記載することです。ルーブリックで評価するのは、「ディスカッション」や「実演」といったものがメインとなるため、その中でどのような行動が求められているのかを評価基準として設定すると、より明確な評価が可能になります。

例として、ディスカッションワークについて作成したルーブリック表をご紹介します。

ルーブリック評価のメリット・デメリット

ここまでルーブリックの特徴や作成方法について解説してきました。ここでは、ルーブリックを使って評価を行う場合のメリットとデメリットについてご紹介します。

ルーブリック評価のメリット

まずルーブリック評価ではルーブリック表で評価の軸が定められているため、評価者と学習者が事前に「何が評価されるのか」「達成すべきレベルはどこか」という認識をすり合わせることができます。評価の際にはルーブリック表を見ながら評価項目の達成度を見ていくため、素早い評価とフィードバックが可能となります。また、評価の公平性を保つことができるというメリットもあります。例えば曖昧な評価基準で学習者間に成績の差がある場合、その理由が可視化されにくく、公平性を欠いたものに見えることもあります。ルーブリック評価では何がどのように評価されたのかをクリアにすることができます。

ルーブリック評価のデメリット

一方でルーブリック評価では、妥当性や信頼性を備えたルーブリック表を作成するスキルが求められるという課題があります。日本ではまだルーブリック評価の実践の歴史が浅いため、「評価尺度」「評価項目」「評価基準」が適切なものになっているかを随時確認し改善していく必要があります。

ルーブリック活用のポイント

では、ルーブリックについての基本知識が理解できたところで、ルーブリック活用のポイントについてご紹介していきます。

学習者に評価基準を共有しておく

ルーブリックだけに関わらず、評価基準というのは評価を受ける人には教えないものだと考えている方が多いと思います。ですが、ルーブリックに関して言うと、学習者にその評価基準を教えることで、様々なメリットを得ることができます。例えば、学習者が評価基準を知った上で学習する場合、学習の中で「今自分がどの項目をどれくらいできているのか?」という自己評価を実施しやすくなります。このような自己評価をすることで、内省の習慣を身に付ける、メタ認知力を高める機会を作ることができます。また、評価基準を通して良いパフォーマンスとは何かが明確になれば、学習意欲と学習速度の向上も見込めます。

評価規準の作り方を工夫する

ルーブリックの特徴として、評価項目と評価基準を調整できるというものがありますが、学習者の意見をルーブリックの作成に取り入れることで、より学習者の主体性と意欲を引き出す教育の設計が可能になります。特に高校生や大学生、大人の教育では、学習する人がそれぞれに目的を持って参加している場合が多くなります。そういった場合に、学習の目的に関して教育を実施する側と学習する側の間にずれがあると、教育側には「学習者が付いてこない」、学習者側には「内容が思っていたのと違う」といった問題が発生しやすくなります。ですので、学習者の意見を取り入れて評価基準を設定し、それに沿って教育を設計することで、より学習者のニーズをとらえた教育を実施することができます。目的を持って参加している学習者は、ニーズが満たされると分かれば主体的に参加する傾向があるため、学習者と教育者の熱量のギャップも生まれにくくなります。

ルーブリックを活用している企業の事例

教育現場で使われることの多いルーブリックですが、人材育成の場面での活用も近年増えています。ここではルーブリックを活用して成果をあげている企業事例をご紹介します。

株式会社JTB

株式会社JTBでは、「社員を育てる」から「自ら育つ社員」を支援するという方向性にシフトし、研修制度にルーブリックを導入しました。研修ごとに「この研修を受けるとどのような力が身に付くのか」を定義しています。評価項目はレベル1からレベル4まであり、レベル2が研修を受ける前提として必要な到達レベル、レベル3が研修で身に付く力、レベル4が研修後に目指す姿というように設定しています。社員はこのルーブリックを見ながら自ら目標設定をして受講し、研修直後には学んだ内容をどのように活用していくのかを考えます。そして受講の1週間後、1か月後、3か月後にその実践状況や成果、改善方法を振り返りシートに記入していきます。このようにルーブリック表があることで、社員は自律的に成長するための行動変容を起こすことができる仕組みになっています(株式会社ライトワークス:導入成功事例 株式会社JTB「社員を育てる」から「自ら育つ社員」へ。社員の行動変容を促す人財育成をLMSで実現する)。

まとめ

日本の教育は、指導者が一方的に情報を発信して学習者がそれを覚えるという学習形態から、学習者が主体となり能動的に学習をする形態へと変化を続けています。そしてこのような動きは学校教育だけではなく、企業研修や社会人教育に関しても同様です。リカレント教育や生涯教育が必要とされる現代では、教育の在り方はすべての人にとって重要な要因となっています。

ルーブリックは、そんな現代の学習方法に適した評価方法として、現在も様々な教育現場に導入され実践されています。もしこれから「教育を設計していく」「教育を見直していく」という方がいましたら、ルーブリック表の作成を検討してみてはいかがでしょうか?また、すでにルーブリックを活用しているという方も、活用法を見直す機会を設けてみるといいかもしれません。教育に関するすべての方に、この記事を通して少しでも役に立てたならば幸いです。

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