アクティブラーニングとは、講師から受講者に対する一方的な講義形式ではなく、受講者が能動的に学習に参加する学習形態のことです。このアクティブラーニングは、2010年以降日本で注目を集めており、企業研修においても導入・活用が進められています。そこで今回は、アクティブラーニングとはどのようなものなのか、どんなメリットがあるのか。また、企業研修に導入する場合のポイントをご紹介いたします。
アクティブラーニングとは?企業研修への導入方法とメリット
アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、受講者自らが能動的に取り組む学習方法のことです。講師が受講者に対して一方向的に情報提供を行う座学形式とは異なり、受講者同士が情報を発信していくのが特徴です。そのためアクティブラーニングでは、議論やゲーム、ビジネスシミュレーションといった、グループワークが多く取り入れられます。
たとえば、「不動産業界についての業界知識を深める」ことを目的に学習をするとします。
従来型の学習の場合、不動産業界について詳しい人物を講師として招き、不動産業界の歴史やトレンド、主なプレイヤーについての講義をしてもらうのが一般的でした。ですが、アクティブラーニングで学習する場合には、自分たちで情報を集めて発表してもらったり、一人ひとりに異なる資料を渡してディスカッションしてもらうなどします。このとき、講師は業界知識を与えるのではなく、グループに対して「○○について調べてみたらどうかな?」「△△についてはどう考えているかな?」といった気づきを与える役割を担います。
アクティブラーニングが生まれた簡単な経緯
そんなアクティブラーニングの始まりは、1980年代のアメリカにあります。当時のアメリカでは、国力の増加を目指して教育の大衆化を進めていました。ですが、教育の大衆化を進める中で大きな問題が生まれます。それは、「学びが習得されない」という問題です。つまり、大衆化を進めることで「既存の学習方法では理解が進まない人物」や「モチベーションを維持できない人物」が増加したのです。これを受けて、学習方法を見直す動きが生まれ、学習者が主体となる学習方法が考案されたと言われています。
アクティブラーニングが導入される理由
アクティブラーニングを研修に導入する企業が増えている背景には、日本の社会構造の変化があります。始まりはアメリカと同様で、教育の大衆化を進める手段として学校教育に導入されていきました。ですが、当初の段階におけるアクティブラーニングは、グループワークなどの導入には至らず、「学習者に調べ物をしてもらう」「授業に対する感想や質問を募る」といったレベルに留まっていました。
現在のように、グループワークによる学習方法が用いられるようになったのは、「生産性」「主体性」「問題解決力」「クリエイティブ」といった要素が重要視されるようになったためです。VUCAと言われているように、社会の成長スピードが世界的に上昇し、「AI時代にはクリエイティブが欠かせない」という声は各所で挙がっています。また、日本は少子高齢化によって労働人口が減少しており、労働者一人ひとりの生産性の向上が必要とされています。そういった変化の中で、誰かの一方的な指示を仰ぐのではなく、自らが主体的に課題を発見し、周りの人を巻き込みながら課題を解決していく人材が求められるようになりました。このような社会トレンドを背景に、アクティブラーニングを企業研修に導入する動きが生まれているのです。
アクティブラーニングを導入するメリット
このアクティブラーニングを企業研修に導入するメリットは、主に4つあります。そのメリットとは、以下の通りです。
- 問題解決力の向上
- 受講者の自発性が向上
- 新しい発想や観点の誘発
- 対人スキルの習得
では、それぞれについて詳しく解説していきます。
1.問題解決力の向上
アクティブラーニングの手法を導入した企業研修では、課題に対して受講者自身が自分で考え、自分で答えを出す機会が増えます。講師から知識や正解を教わるだけではなく、自分なりに答えを出すプロセスを学べるため、受講者の問題解決力向上につながります。
2.受講者の自発性が向上
アクティブラーニングでは、講師はあくまで受講者のサポート役であり、受講者自身に主体性が求められます。企業研修においては、あるビジネスのケースについて、「自分ならどうするか」を問われることも多くあります。自分で考えて答えを出し、それを実践するという経験を通して、日常業務における自発性の向上が期待できます。
3.新しい発想や観点の誘発
アクティブラーニングでは、正解がない課題に取り組むことも少なくありません。そういった課題には、これまでの知識や経験を駆使して、自分のアイデアや解答をまとめることになります。そのようなアウトプットの過程で思考が整理され、新しいアイデアや斬新なアイデアに出会うことがあります。また、受講者同士の意見交換によって自分にはない観点や考え方に触れることができます。そういった経験によって、新しいアイデアの創造や新しい観点の醸成が期待できます。
4.対人スキルの習得
アクティブラーニングでは、複数名で構成されたチームで学習を進めることがあります。そのため、活動の中では話を聞く力、意見を伝える伝達力、意見をまとめる力、議論を進める質問力など、多くの対人スキルが求められます。これにより、受講者は研修のテーマだけではなく、チームワークや対人スキルの向上も期待できます。
アクティブラーニングを導入した企業研修例
続いて、アクティブラーニングを導入した企業研修について紹介します。昨今の企業では、以下のようにしてアクティブラーニングを活用しています。
ケースメソッドを利用した研修
ケースメソッドとは、実際に起こった事例(ケース)を基にして、問題の分析や課題解決について議論を進めていく形式の研修です。基本的なやり方としては、まず受講者が各自でケースを読み込んで自分の意見をまとめます。その後、チーム内で討議を行い、結論をクラス全体で発表し、最後に講師がまとめるという形をとります。この種のアクティブラーニングにおいては、実際のビジネス事例という実践的な課題に対して、受講者にこれまでの知識や経験をもとに「自分であればどうするか」という視点で主体的に考えることを促します。特に中堅層以上のビジネススキル研修やマネージャー層向けのマネジメント研修で使われることが多く、多くの企業研修で導入されています。
フィールドリサーチを主体とした研修
フィールドリサーチとは、あるビジネスの課題について調査やヒアリング等を行い、研究を行うタイプの研修です。まずはじめにチーム内で仮説を立て、同時に座学型の講義を交えて、調査の進め方についてのレクチャーや動機付けを行います。それから、検証方法の議論も含めて検証・調査を行います。
このタイプの企業研修は1日や数日といった短い期間ではなく、中には数ヶ月にも及ぶ形で研究を行い、その成果を発表するものもあります。企業研修においては、新人研修から経営層向け研修まで幅広い階層に対して実施可能です。
アクティブラーニングを企業研修に活かす際のポイント
最後に、アクティブラーニングを企業研修に活かす際のポイントをご紹介します。ポイントは、以下の4つです。
- 研修の設計(研修の目的、対象、ゴール)を明確にする
- 講師に高い力量が求められる
- 研修のクオリティが受講者の性格や能力に依存する
- 学習内容が現場に活かされるための工夫をする
1.研修の設計(研修の目的、対象、ゴール)を明確にする
すべての企業研修の設計には目的と対象者、ゴールを明確にすることが求められます。アクティブラーニングはあくまで学習手法の一つにすぎません。そのため、その3点が明確でないと、アクティブラーニングを導入したとしても効果的な研修にはなりません。したがって、研修の設計時に研修の目的、対象、ゴールの明確化が求められます。特に前にも述べた通り、アクティブラーニングを導入することで学習効果が見込まれる研修かどうかについての見極めも必要になります。
2.講師に高い力量が求められる
アクティブラーニングの主体はあくまで受講者で、講師はファシリテーターに徹します。そのため、アクティブラーニングを行う講師については、研修の目的やゴールをから逸れることのないように、受講者に気づきを与えてゴールへ誘導できるような高いファリテーションスキルが重要となります。
3.研修のクオリティが受講者の性格や能力に依存する
アクティブラーニングのほとんどは受講者をチーム分けして、チームごとに学習を進めます。その時に学習に積極的ではない受講者がいたり、研修受講にあたって前提知識に乏しい受講者がいたりした場合、他の受講者の学習の質に影響します。他の受講者から学ぶことが多いことはアクティブラーニングの利点ではありますが、他の受講者自体が学習の質を下げる可能性もあります。
4.学習内容が現場に活かされるための工夫をする
これはアクティブラーニングを用いた研修だけではなく、すべての企業研修に言えることですが、学習した内容が現場に活かされるための工夫が必要となります。人は、学んだことをすぐ忘れてしまうものです。特にアクティブラーニング型の企業研修においては、受講者が主体となって活動をする場面が多くなるため、「楽しかった」という感想で終わりがちです。「楽しかった」という感想で終わってしまっては、経費をかけて研修を実施した甲斐がありません。「学習した内容は、現場でどのように活かすことができるのか」「現場に戻ったらどのような実践をするのか」ということを、研修の中で明確にすることが大切です。
まとめ
アクティブラーニングとは、受講者が主体的に参加する学習プログラムです。アクティブラーニングにおける講師は、受講者の学びをサポートするようなスタンスで受講者と関わり、コーチングやファシリテーションによって学びを促進します。そのため講師には、一般的な講師力に加えて、コーチング能力やファシリテーション能力、受講者への影響力など、高いレベルが要求されます。この条件をクリアできる人材は、どの企業においても多くはないかもしれません。ですが、講師に求められるレベルが高い分、座学型の研修よりも大きな効果が期待できます。もし、より実践的に受講者の能力を高める研修を求めている方がいましたら、アクティブラーニングを活かした研修を企画してみてはいかがでしょうか。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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