人材育成を始める中小・ベンチャー企業では、前例がない事が多く、担当者が手探りで進まざるを得ない状況も多々あります。しかし、がむしゃらに進めるのではなく、まずは自社の育成の環境を理解し、その上で育成戦略を練り、戦略に沿った人材育成の目標と計画を立てる事が人材育成のポイントです。
今回は、ベンチャー企業特有の育成戦略と、その戦略に沿った人材育成の目標・計画の立案方法と重要なポイントをまとめてお届けいたします。
人材育成を始める中小・ベンチャー企業では、前例がない事が多く、担当者が手探りで進まざるを得ない状況も多々あります。しかし、がむしゃらに進めるのではなく、まずは自社の育成の環境を理解し、その上で育成戦略を練り、戦略に沿った人材育成の目標と計画を立てる事が人材育成のポイントです。
今回は、ベンチャー企業特有の育成戦略と、その戦略に沿った人材育成の目標・計画の立案方法と重要なポイントをまとめてお届けいたします。
ベンチャー企業にとって何かをしようとするときに常について回る課題は、やはり「使える経営資源の少なさ」ではないでしょうか?
この課題は事業運営にはもちろん、企業の土台を築くための組織作りにも大きな影響をあたえます。
まず、人材採用という領域において決して多くの報酬や福利厚生などを用意できないベンチャー企業はスタープレイヤーのような優秀な人材を採用する事は大変難しくなります。同時にネームブランドが無い点もことさら不利にはたらきます。
同時に人材育成の領域にも影響をあたえます。例えば、多くの経営資源を持つ大企業であれば階層別の研修を用意できたり、10年スパンの育成を踏まえてジョブローテーション等の制度が整えることができます。しかし、ベンチャー企業ではそのような制度を整えられるほどの資源はありません。そのため、ベンチャー企業の環境はとてもシビアなものになります。
それでは、ベンチャー企業の人材育成の環境とは、具体的な例としてどのようなものなのでしょうか。
このような環境だからこそ、ベンチャー企業では最小限の時間と資源のみを割いて、できるだけ早いスピードで会社にとって一線級の人材に育て上げるための方法を考えなければなりません。そのため、人材育成は計画的に行わなければならないですし、人材育成の目標と計画が重要なポイントとなるのです。
では、このような人材育成の環境のもとで、どのように人材育成をすればよいのでしょうか?「人材育成」と一口に言っても、どのような人材を、どのように育成するべきなのか、そこにはしっかりとした目標と計画が必要となります。そこでまず、人材育成の計画を立てるまでのフローをご紹介します。
人材育成の計画を立てるまでには、「経営環境」「経営戦略」「人材戦略」が必要です。自社の事業活動を推進する際に求められる「能力や人材像」を導き出し、いつまでにそのレベルまで引き上げるのかという期間を明確にする必要があります。たとえば、求められる能力や人材像とは、「自律的に思考し、主体的に活動を行える人材」などです。社員を「自律的に思考し、主体的に活動を行える人材」に育成するために、ビジネスシーンにおいて求められる3つのスキル(ヒューマンスキル,テクニカルスキル,コンセプチュアルスキル)を判断基準として、階層別に考えていくことが人材育成の計画になります。
では、「求められる能力や人材像」はどのように考えるかというと、そこに経営環境や経営戦略の視点が欠かせません。マニュアルワークを丁寧にやることが求められるビジネスの場合は、「自律的に思考し、主体的に活動を行える人材」はミスマッチになってしまいます。また、どのような人材を育成していくかという点は、会社のカルチャーを決める重要なポイントになります。「自社が経営戦略を進めていく上で、どのような人材を育成したらいいのか?」を人材育成の戦略として明文化しておくことがポイントです。これがなければ、自社に合った人材育成の計画を立てるのが困難になります。
改めて人材育成計画とは何かということを確認しましょう。人材育成計画とは、社員の育成を促進するための中長期的なプランのことです。
これまで触れてきた通り、育成の計画を立てるには、経営環境を踏まえ、その環境の中で勝ち抜いていく経営戦略を立て、そこに求められる人材像を明確にし、人材育成の戦略を立てていくことがポイントとなります。では、人材育成の戦略を立てることができたとしたら、どのように目標・計画を立てていくのでしょうか。
一般的には、新卒~若手にはコミュニケーション能力や論理的思考能力など、ビジネスパーソンとしての基本的なスキルであるヒューマンスキルと、業務に必要な専門的な知識が求められます。中堅~管理層になると、決められた業務を遂行していくだけでなく、与えられた役割の中で自分自身で考える能力が求められるようになります。したがって業務を戦略的に遂行していくコンセプチュアルスキルも重要なポイントとなってきます。年齢や階層によって求められる能力は異なりますので、年齢・階層別に細分化していくと育成レベルを定めやすいと言われています。
一方ベンチャー企業では、人数が少ないということもあり、年齢・階層別にグループ分けすることが適切でないケースが多くあります。だからこそ求められるのは、年齢・階層別ではなく育成のフローを個人レベルで策定していくことです。そして、人材育成の計画を立て、計画を実行していくためには「目標の設計と現状の把握」が何よりも重要なポイントになってきます。対象となる人材はどのような目標を持っているのか?今どのレベルにあるのか?ということが分かれば、目標と現状の間のGAPが明確になり、育成の方法を導くことが出来るようになります。ここからは、着実にゴールに向かうための目標の設計方法と、成長曲線から見た現状把握の方法をご紹介します。
人材育成計画を作成するために必要なスキルは、コミュニケーション力と分析力です。まず、計画を作成する前に現状を正しく把握する必要があります。「組織に求められているのはどういう人材なのか?」、「今の人材に足りない能力は何か?」、「今現場で解決すべき課題は何か?」ということを把握するためには、コミュニケーション力を駆使して関係者各位から情報を収集する必要があります。そして正しく分析する力が必要になります。 また、育成施策を進めていく上でも育成担当者や対象者と円滑にコミュニケーションを取り合い、ゴールと現在の状況のギャップを埋めるためにはどうしていくのかというPDCAを回し続ける必要があります。
対象となる社員が育成の目標を達成するためには、まずスタートからゴールまでをいくつかのステップに分けていきます。あまり細かすぎると分かりにくく、あまり粗すぎても結果が見えづらくモチーベションを保てなくなるので、粒度のバランスがポイントになってきます。 具体的には3か月~半年ごとに目標となるステップを設計するのがおすすめです。 ステップ自体も多くて5つ程度であれば良い目標だと言えるでしょう。 そしてステップごとに「●●ができているor理解しているor設定水準のコミュニケーションが行えている」などのクリアアクションやレベルを具体的に設定するのもポイントです。また、目標の設定に役立つSMARTの法則を活用するのも良いでしょう。
誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表す。
目標の達成度合いを、本人だけでなく上司や同僚などにも客観的に判断できる達成基準を設定する。
希望や願望ではなく、ましてや気合や根性でもなく、その目標が達成可能な現実的内容かどうかを確認する。
設定した目標が期待された役割に基づくものであるかどうか、自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連する内容になっているかどうかを確認する。
いつまでに目標を達成するか、その期限を設定する。
次は、設定した目標を達成してくためには、目標に対する現在地がどこなのかを明確にしていきます。特に重要なポイントは、目標設定の際に決めた達成基準に対して、今どのレベルなのかということを客観的に分析することです。例えば、「業務遂行に関する領域で満たすべき知識の領域が5つあるとしたら、現在はいくつの領域まで身に付けているのか?」「コミュニケーションに関する領域で満たすべきレベルを100とした時、いまはどのレベルか?」というように、設定した目標に対する現在地を把握していきます。理想の状態と現在地を比較することで、何が問題なのか、どのくらいのGAPがあるのかがより浮き彫りになり、人材育成における計画が考えやすくなります。
ここまでで具体的な目標を設定する方法、現在地を確認していく方法をご紹介してきました。あとは育成方法の選択です。人材育成における育成方法としては「集合研修(Off-JT)」「OJT」「eラーニング」の3つが主流となっています。
セミナールームや合宿など、一つの場所に大勢が集まって研修を行うため一体感とライブ感がでます。ですが、その反面で時間調整やコストの負担が大きいのがネックです。研修には、研修会社が主催する公開型の研修と講師が自社に派遣される派遣型の研修がありますが、公開型の研修は一般論で終わってしまうことが多いので、その学習内容を現場に転用するにはかなりの応用力が求められます。
現場の中で実務と共に行う育成手段であり、主に先輩社員との1対1で行われます。OJTのデメリットとしては、OJT担当者によって育成の水準が左右されることです。育成担当者が自身の業務で忙しかったり、そもそも育成へのコミットが低いと内容や水準にバラつきがでてしまい、効果的な育成になりえない場合もあります。
インターネットを利用したコンテンツ式の学習形態で、個人がいつでも好きな時に学習ができ、学習状況ごとのリカバリー策を提示できるなど、管理のしやすさにメリットを持ちます。知識の習得を目標とした育成にはぴったりの方法です。ただし、デメリットとしては他人の目が無い状況下では緊張感が生まれにくく、期待していた通りの学習効果が出ない場合もあります。その点では、同期の学習進度を目に見えるようにするなど、モチベーションを刺激する工夫が必要になるでしょう。
上記の3つの方法をそれぞれの階層や求められる能力に応じた効果的な方法を育成計画に沿って選択していくことがポイントとなります。
たとえば「新人研修などの大人数で受講すべきものは集合研修として導入し、eラーニングで事前段階の知識を学習してもらい、実践段階として現場OJTを取り入れる」といった計画です。企業によって使える資源は異なり、それによって育成の計画にどう反映させるかも異なります。ですから自社にとってどの組み合わせが最適なのかを考えることが重要なポイントとなります。
以下の記事において、各階層別に定着を目指すスキルや研修の内容についてご紹介しておりますので、ご参考になさってください。
ベンチャー企業が置かれる人材育成の環境は「シビア」の一言に尽きます。
そのため、実際は本業務の方にウエイトを置いてしまいがちですが、企業が忘れてはいけないのは、人が価値を創造し、事業を伸ばしているということです。その意味で人材育成は事業推進と同程度、もしくはそれ以上に重要なポイントとなります。
厳しい育成環境のなかで人を育てるということは、限りある経営資源を常に効率的・効果的に運用するということが求められます。一見厳しいと思われるこの育成環境をチャンスととらえ、人材育成に活かしていくことが企業のポテンシャルの底上げに繋がるでしょう。
この記事を参考にして、経営戦略にマッチした人材育成の目標・計画を今一度立ててみてはいかがでしょうか?
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