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裁量労働制とは、労働者の実労働時間に関係なく、会社があらかじめ定めた時間を労働者が働いたとみなして給与を支払う「みなし労働時間制」の一つです。昨今は、「働き方改革」が推進されている中で、特に注目を集めています。今回はそんな裁量労働制について、適応できる職種からや導入の方法、手続き、メリット・デメリットを会社側と社員側の立場からご紹介いたします。

裁量労働制とは?

働き方改革推進の中でよく話題に上がる裁量労働制ですが、実は裁量労働制の歴史は古く、1988年から施行されています。当時は「専門業務型裁量労働制」という名称でした。この制度の施行に至った背景には、特定の専門業務(システムエンジニアやデザイナーなど)では画一的な規則に基づいて業務にあたるよりも、それぞれの労働者が業務遂行の方法や時間配分を自分で考えて行う方が合理的だという考え方がベースにありました。

そして、2000年にはその考えを企画業務(事業計画の立案など)にも応用させ、「企画業務型裁量労働制」という制度も施行されました。この二つの労働裁量制ですが、導入できる職種や導入するための手続きは異なりますが、その仕組み自体は類似しています。

特に近年裁量労働制が注目を集めるのは時代背景の変化も大きな営業があります。少子高齢化が進み労働力人口が減少傾向にある中、従来の画一的な労働環境では労働力の確保が困難になっています。そこで安倍政権は2016年一億総活躍社会を実現するために「働き方改革」を打ち出しました。テレワーク(在宅勤務)、副業・兼業、残業規制など様々な施策が打ち出されましたが、その中の一つとして裁量労働制が注目を集めているのです。

裁量労働制とはどんな制度か?

そもそも裁量労働制とは、労働者の実労働時間に関係なく、会社があらかじめ定めた時間を労働者が働いたとみなして給与を支払う「みなし労働時間制」の一つです。労働者は、労働時間が長くても短くても、契約した労働時間分の仕事量をこなすことが求められます。つまり成果が評価の対象となるので、成果さえ出せれば始業時間や終業時間も個々の労働者の裁量で決めることが出来ます。この制度を導入している場合、業務遂行のための手段や時間配分は労働者に委ねられており、会社側は社員の実労働時間や出社・退社の時間を決めることはできません。

例えば、みなし時間を8時間とする場合は、社員が5時間働こうと11時間働こうと、どの時間帯に働こうと8時間働いたとみなし、8時間分の給料を支払うことになります。また、裁量労働制にも、残業時間の概念が存在し、会社が設定したみなし時間が1日に8時間・1週間に40時間を超えた場合には時間外手当てを支払う必要があります。つまり、みなし時間を9時間とすると1時間分残業代を払う必要があるということです。また、休日勤務や深夜勤務に対しても残業手当を支払う必要があります。

業務に合わせた働き方を会社の制度として推進できる点でも、組織作りを始めるベンチャーにとっては、この制度を利用するかどうかは検討しておきたいところです。

裁量労働制とフレックスタイム制との違い

始業・終業時刻を自分の裁量で決められるという点では、フレックスタイム制を思い浮かべた方も多いかもしれません。しかしながら、フレックスタイム制は、労働時間帯に自由度を与えることを目的とした労働時間制度ですので、成果主義の裁量労働制とは根本的な考え方が異なります。フレックスタイム制では、従業員は、自由に出退勤時間を決められますが、会社が定めたコアタイムの間はオフィスにいることが求められます。また先に述べたように、裁量労働制では残業代が出ないのに対して、総労働時間は、月単位で計算されるので、1ケ月の労働時間が規定時間を超えれば、残業代が支払われます。

裁量労働制を導入できる職種

ただ、先ほど紹介したように、裁量労働制は、労働者が創造的な能力を発揮できる働き方として立案されましたが、全ての職種に認められているわけではありません。クリエイティブな業務や専門的業務など、労働時間を管理されるよりも、業務遂行を従業員の裁量で決められることがより能力や成果を発揮できるような職種にのみ認められています。そのため、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の以下の2種類があり、それぞれ適応できる職種が限られています。

①専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関して使用者が具体的な指示をすることが困難な業務」とされており、次の19種の業務が対象とされています。

  1. 新商品、新技術の研究開発または人文科学、自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析、設計の業務
  3. 新聞、出版、放送における取材、編集の業務
  4. 衣服、工業製品、広告等の新たなデザイン考案の業務
  5. プロデューサー、ディレクターの業務(告示で定める業務)
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用のソフトウェア創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士、二級建設士、および木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

引用:東京労働局

上記の業務以外では専門業務型裁量労働制は適用できませんので注意が必要です。

②企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制の対象となる業務は、次の要件に該当するものであることとされています。

企画業務型裁量労働制の要件

  1. 事業の運営に関する事項についての業務であること。
  2. 企画、立案、調査および分析の業務であること。
  3. 当該業務の性質上、これを適切に遂行するためには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること。
  4. 当該業務の遂行手段および時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること。

実際にどのような業務であるのかについては、主なものとしては次のような業務が対象になり得るとして例示されています。

実際の業務例

  • 経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境などについて調査および分析を行い、経営に関する計画を策定する業務

  • 人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方などについて調査および分析を行い、新たな人事制度を策定する業務

  • 財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態などについて調査および分析を行い、財務に関する計画を策定する業務

  • 広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法などについて調査および分析を行い、広報を企画・立案する業務

  • 営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点などについて調査および分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務

  • 生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料などに係る市場の動向などについて調査および分析を行い、原材料などの調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

つまり企業全体の事業運営に係る企画・立案・調査を行う業務が対象となっており、ルーティン業務や経営に関する会議の庶務等の業務などは対象にはなりません。

裁量労働制を導入する場合の必要手続き

裁量労働制は会社の独断で一方的に適用することができません。

専門業務型裁量労働制の必要手続き

専門業務型裁量労働制を適用するなら、労働者側と次の事項について定めた労使協定を結び、労働基準監督署に届け出を出さなければいけません。

労使協定の項目

  1. 対象業務
  2. 対象業務の遂行手段や方法、時間配分などに関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています)
  7. 上記、④および⑤などに関する記録を、⑥の期間およびその後3年間保存すること

企画業務型裁量労働制の必要手続き

企画業務型裁量労働制を適用するなら、労使委員会を設置し、その委員会で5分の4以上の多数決により、次の事項について決議し、決議内容を所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

決議内容

  1. 対象業務の具体的範囲
  2. 対象労働者の具体的範囲
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象労働者に適用する健康・福祉確保措置の具体的内容
  5. 対象労働者からの苦情処理のための措置の具体的内容
  6. 本人の同意の取得・不同意者の不利益取扱いの禁止について
  7. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています)
  8. 上記、4~6などに関する記録を7の期間およびその後3年間保存すること

参考:厚生労働省ホームページ

専門業務型裁量労働制で労使協定に提出することに加え、対象労働者の具体的な範囲(職能資格〇級以上の労働者など)、本制度の適用について労働者本人の同意を得なければいけないこと及び不同意の労働者に対し不利益取り扱いをしてはならないことに同意する必要があります。

裁量労働制のメリット・デメリット

ここまで裁量労働制とはなにかについてご紹介してきましたが、ベンチャーで組織作りをするにあたってこの裁量労働制を導入すべきかどうかは、その特徴を踏まえて会社側の視点と社員側の視点からメリット・デメリットを考え、検討する必要があります。

会社視点から見たメリット・デメリット

メリット①:人件費のコスト管理がしやすい

まずあげられるのが、人件費のコスト管理がしやすいことです。なぜなら、裁量労働制を導入した場合、会社があらかじめ定めた時間を労働者が働いたとみなして給与を支払うためです。ただし、休日出勤や深夜出勤があった場合は、さらに追加で残業代を払うことになるので上振れする可能性はありますが、ある程度固定で人件費を算出できる点は、ベンチャーにとってはコスト管理のしやすさからメリットと考えられます。

メリット②:社員の生産性が上がる=人件費を削減できる

また、社員の生産性を上げ、結果として人件費を削減できる点もメリットです。というのも実労働時間に合わせて給料を支払うと、生産性が低くても長時間働く社員には、その分多くの給料を支払うことになります。そのため、社員としても仕事を早く終わらせるモチベーションにはつながりにくいです。一方で裁量労働制は、従来の制度と比べて残業代が出ず、逆に早く仕事が終わればその分早く帰れるというメリットがあり、社員にとっても生産性を上げる動機づけになります。

デメリット①:労働管理が難しい

一方でデメリットとしては、従業員が自分のやり方で自由な時間に働くことになるので、労働管理が難しいことがあげられます。ミーティングの設定や1on1などの設定も難しくなるでしょう。また、決められたみなし時間に合わないような仕事を振っては長時間労働が習慣化してしまうので、個人個人にあったような仕事を割り振る必要があります。そういった管理がしっかりできる管理職人材がいればよいですが、駆け出しのベンチャーでまだそういった管理職人材が不足している場合には労働管理という面では、難易度が上がりそうです。

デメリット②:意図した文化醸成がしにくい

またチームとして共に過ごす時間も短くなる傾向にあるので、文化醸成や組織作りがあまり進まない可能性もあります。ベンチャーとして組織を一つにまとめていこうとしている段階においては、しっかりと対策を練らなければなりません。仕事以外でのコミュニケーションの場を設けるなど、直接社員同士が会う機会を作ることも欠かせない対策になってくるでしょう。

従業員側から見たメリット・デメリット

メリット①:仕事の自由度が高まる

仕事の自由度が格段に高まります。出社時間や退社時間を自由に決めることができるので、その人のライフサイクルに合わせて働くことができます。ベンチャーで成長を望む人材にとっては、自分の裁量で仕事を追求できる仕事のスタイルは利点にもなり得ますので、採用時の魅力のひとつにもなるでしょう。

メリット②:労働時間を短くすることが可能

裁量労働制では、仕事の成果が求められます。そのため、従来の働き方であれば仕事が終わっても8時間は会社にいることが求められていました。それが、自分でPDCAを回して短い時間で仕事を終わせることができれば、早く帰ることができるということになります。

デメリット①:残業代が出ない

業務が立て込んでいる時でも、業務遂行に時間がかかっている場合でも、原則として深夜労働と休日勤務以外は残業代の請求は出来ません。もし裁量労働制の導入が、慢性的な長時間労働を生み出してしまっている場合は、従業員の不満がたまるだけでなく、心身の健康にも支障を来しかねないので、適正な導入が出来るよう注意が必要です。

デメリット②:高い自己管理能力が求められる

生産性を上げることができればよいですが、その一方で自らPDCAを回せず、生産性を上げることができなければ必然的に長時間労働をすることになるというデメリットも存在します。そうなると、従来の制度と比べて残業代が出ませんので、結果として労働時間に対して収入が減ってしまうことになります。

まとめ

裁量労働制とはなにか、そしてそのメリット・デメリットについてご紹介してきました。組織作りを本格化するベンチャーにとって、労務制度は避けては通れないものであり、いかにして会社にとっても社員にとっても良い制度を採用するかがカギになります。

裁量労働制の一つのキーは適切な仕事量を社員一人一人に与えることです。そうすれば、社員の生産性も上がり、会社の収益性も上がります。一方で、裁量労働制を謳って、仕事を大量に社員に押し付けては、長時間労働が習慣化するだけでなく、生産性も下がり、社員と会社の双方にとって不利益になります。社員にとっても会社にとってもwin-winな組織をつくるということを前提に皆様に合った労務制度を導入することが大切です。

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