モラハラ(モラルハラスメント)とは?職場での対策方法と事例を紹介

モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、家庭や職場で発生する精神的ないじめや嫌がらせのことです。職場で発生するモラハラは、実態の把握が難しく、企業側が状況を確認できないまま被害者の社員が休職や退職に至るケースもよくあると言われています。

今回の記事では、そんなモラハラに対して、企業として取るべき予防策や、発生後の対応で気をつけるべきポイント、実際の職場で取り組まれているモラハラ対策の事例などをご紹介いたします。

モラハラの定義

モラハラとは、身体的な暴力ではなく、言葉や態度によって精神的な攻撃をする行為を指します。もとの語源は、モラル(仏語で精神的な)+ハラスメント(いやがらせ)です。呼称としては、モラハラと略して使われることもあります。精神的な嫌がらせであることから、「見えない暴力」とも呼ばれます。

また、モラハラには家庭で起こるものと職場で起こるものがあります。家庭のモラハラは、主に夫婦の間で起こり、弁護士への相談や裁判を通して離婚に至るケースが一般的です。一方で職場のモラハラでは、加害者の職員に損害賠償が請求されるケースや、モラハラを防げなかった企業に対して損害賠償が請求されるケースもあります。

家庭のモラハラか職場のモラハラかによって、関与する法律や対応策が大きく異なります。今回の記事では、企業という視点から、職場で起こるモラハラをいかに予防し、対応策を整えるのかについて考察していきます。

モラハラとパワハラの違い

職場におけるモラハラと似ているものに、パワハラ(パワーハラスメント)があります。言動だけを見ると、どちらとも取れるようなケースも多いですが、モラハラとパワハラには明確な違いがあります。

パワハラとは、力関係を利用した、上位の者から下位の者への嫌がらせを指します。パワハラの定義は、以下の3つの要素に該当するものとされています。

1.優越的な関係に基づいて行われる

2.業務の適正な範囲を超えて行われる

3.身体的、もしくは精神的な苦痛を与える、または就業環境を害する

この定義の中で、モラハラとパワハラの違いが大きく表れているのが、「1.優越的な関係に基づいて行われる」と「3.身体的、もしくは精神的な苦痛を与える、または就業環境を害する」です。

モラハラは、上下間の力関係に関係なく行われるものであり、無視や意見を尊重しないといった精神的な攻撃を対象としています。一方でパワハラは、上司と部下、先輩と後輩など、力関係や上下関係に差がある中で起こるものです。また、精神的な攻撃だけでなく、身体的な攻撃や就業環境を損なう行為も対象となります。

モラハラの具体例

では、モラハラに該当する行為には、具体的にどんなものがあるのでしょうか?

職場で起こるモラハラとして、以下のような行為が挙げられます。

・継続的に無視をする

・見下した態度を頻繁にとる

・周りに聞こえるように嫌味や悪口を言う

・職場ぐるみで特定の人物を孤立するように仕向ける

・被害者が意見を発信するのを妨げる

・被害者の権利や主張を尊重しない

・被害者の信用が失われるように仕向ける

・仕事に必要な情報を与えない

これらの内「周りに聞こえるように嫌味や悪口を言う」や「仕事に必要な情報を与えない」といった行為は、パワハラに該当する行為としても良く挙げられています。具体的な言動においては、モラハラとパワハラには強い類似性が見られます。

モラハラがもたらす個人・職場へのデメリット

モラハラが職場の中で起きた場合、どのくらいのデメリットがあるのでしょうか?

モラハラは、被害者に精神的ダメージを与える嫌がらせですが、その影響は被害者の精神的な不調だけにとどまりません。被害を受ける個人だけでなく、職場や組織全体にも悪影響を及ぼしたりします。

個人に与えるダメージ

モラハラは精神的な暴力ですが、精神的なダメージが蓄積すると、明確な症状として被害者蝕みます。軽度のものでは、仕事に対する意欲の低下や、自尊心の低下、不眠症や食欲減退といった症状があらわれます。また、重度のものでは、うつ病や適応障害を発症し、社員が休職や退職に至るケースもあります。

職場に与えるダメージ

企業は、労働契約法5条や男女雇用機会均等法を根拠として、労働者の職場環境が該されることのないよう、体制を整え、必要な措置を講じる義務(職場環境配慮義務)を負っています。そのため、職場で起きたハラスメントを放置しておくと、被害者から損害賠償を請求される可能性があるほか、組織として社会的な信用を失う可能性があります。

また、職場でモラハラが起きている場合、職場の雰囲気や人間関係が悪くなると考えられます。ギスギスした雰囲気や、「次は自分がハラスメントを受けるのではないか」という不安がストレスとなり、仕事のミスやコミュニケーションの質が低下することも予想されます。職場での連携が乱れれば、職場全体の生産性が下がる恐れもあります。また、職場の雰囲気や人間関係の悪さは、社員が離職する原因にもなりえます。社員の離職が増えれば、その分だけ採用のコストが増加します。

モラハラ対策に向けた職場の取り組み

では、職場のモラハラを防ぐために、職場ではどのような対策に取り組むべきでしょうか。厚生労働省の『平成28年度パワハラ実態調査』をもとに、実施する企業数が多く、かつ効果を実感できたと感じる割合が高い以下の3つの取り組みをご紹介します。

・相談窓口の設置

・社内での研修の実施

・アンケート等で、社内の実態調査を行う

・基準や措置が記述されたガイドラインの整備

では、それぞれについて詳しく紹介していきます。

相談窓口の設置

まずは、専門の相談窓口を設置することです。人事部や管理部、もしくは第三者委員会など、専門の相談窓口を設けることで、モラハラが発生した際、被害者が迷わず相談できるようになります。

社内での研修の実施

次に、社内全体のモラハラに対する研修や講演の実施です。研修で、どんな行為がモラハラに該当するのかや、その具体例を知ることで、モラハラに対する社員の意識や行動が変化するきっかけを創ることができます。

職場のモラハラは、社員同士の意見や価値観の違い、意思疎通の不足が原因であることもよくあります。モラハラについて調査を進める中で、加害者とされた側から「そんなつもりで言ったのではなかった」「傷つける意図はなかった」という声が上がることが多いのはそのためです。

意見の違い価値観の違いから起きるモラハラは、社員同士の相互理解とコミュニケーションに対する心がけ次第で、十分に防ぐことができるものです。ですので、コミュニケーション力の強化やチームビルディングを意図した研修を実施することで、勘違いや認識違いから起きるモラハラを予防することができます。

アンケート等で、社内の実態調査を行う

モラハラの対策においては、定期的な実態調査も効果的です。相談窓口は受け身の対処法であり、相談が来ない限り組織の現状が見えてきません。そこで、アンケート等で実態を調査することにより、能動的に社内の現状を把握することができます。たとえば、定期的に実施しているアンケートの中に、「社内でいじめや嫌がらせを見かけたことがある」といったチェック項目にいれるなど、ハラスメントが起きていないかどうかのアンテナを張っておくことが早期発見につながります。

基準や措置が記述されたガイドラインの整備

職場におけるモラハラに対応するとき、「どんな行為が該当するか」「該当する行為をするとどんな処罰を受けるのか」を明確にすることが大切です。もちろん、起きないに越したことはありませんが、起きてしまった場合、組織がそれをどのように捉え、どのように対応するべきかが明確になっていると、その後の対応がしやすくなります。

「見えない暴力」といわれるモラハラだからこそ、状況の把握は慎重に行わなければいけません。訴えがあった場合、被害者・加害者双方の言い分を聞くだけでなく、周りの聞き込み等、プライバシーに配慮した上で客観的に判断することが必要です。

ハラスメントの問題は非常にデリケートであり、被害者と加害者のプライバシーに配慮する必要があります。起きた事実が確認できる前に話が広がってしまい、被害者や加害者が2次被害に遭うといったことがないように、ハラスメントに対する考えや対応方法が記載されたガイドラインを整備することをオススメします。

ただし、該当する行為などに個別の具体事例を列挙すると、「これならばOK」という例外を作り出す恐れもあります。人事がガイドラインでモラハラの判断基準を設ける際は、抜け道ができないよう包括的な内容にする必要があります。

モラハラへの取り組み事例

では最後に、組織の通報体制を整えて、モラハラ・パワハラに取り組んでいる大津市役所の事例をご紹介します。

滋賀県・大津市役所では、2010年以降不祥事が相次いだことにより、再発防止にむけた取り組みを続けてきました。組織体制の改善に着手したのは、2015年16年に起きた複数のハラスメントがきっかけです。

大津市役所が取り組んでいるのは、「職員が声をあげやすい体制」の整備です。指導を各部署にゆだねるのではなく、第三者的立場への通報窓口を設置し、本人だけではなく周囲からの通報も可能にしています。

以前は部署内に情報が集まり、所属長が自らの判断で対応していました。しかし、なかには「指導」と「ハラスメント」の区別が難しい事案もあり、第三者が一定の基準のもと判断するべきという考えを土台に、体制が新しく構築されました。

現在では、コンプライアンス推進室と職員支援室に情報が届けられるようになり、通報手段も4つと広く窓口を設けています。また、コンプライアンス推進月間の設定により、気になることがあればすぐに上司へ相談できる機会も設けられています。

2017年からは、毎年実施していたハラスメントの防止研修対象を正社員以外へも拡大。新しい職員が入ってくれば、ハラスメントが発生するかもしれないという考えの元、年に1回の研修を気づきの機会とし継続して行っています。

大津市役所の取り組みからの学びは、「専用かつ第三者的な相談窓口があること」「定期的なハラスメント予防研修があること」です。モラハラは、部内の人間関係を知っている立場の人からすると、ハラスメントかどうかの判断を公正に下せない可能性もあります。職場の人間関係を重んじるあまり、指導が難しいケースも。相談者が躊躇せず通報ができ、かつ公正な判断を下しやすいという点で、専門相談窓口の設置は一定の効果をもたらすでしょう。

また、モラハラ予防研修をはじめ、各種研修・啓発活動は継続性が重要です。組織の人員は入れ替わります。新しく入ってくる社員とハラスメントの基準を共有しつつ、「いじり」と呼ばれるようなコミュニケーションが定着しないよう、定期的な気づきの機会を設けることが、職場の風通しを良くします。

参考:Recruit Works Institute 「Works 152 ハラスメントを許さない」

まとめ

身体的な攻撃とは異なり、精神的な攻撃であるモラハラは、目に見えづらいため実態の把握が難しいものです。また、被害者と加害者の言い分が食い違うケースも多く、明確に判断を下せない場合がほとんどです。ですので、モラハラが発覚したときのために、企業としての方針や対応のガイドラインを整えておくことが、モラハラを適切に対処するための重要なポイントとなります。

また、モラハラの発生に備えることに加えて、モラハラの起こらない組織づくりを進めることをオススメします。医療業界において「予防こそが最高の医療」と言うように、ハラスメントにおいても「予防こそが最高のハラスメント対策」です。社員同士が互いに理解を示し、適切なコミュニケーションを通して一致団結できるよう、施策を検討してみてはいかがでしょうか?この記事を通して、ハラスメントのない組織づくりに少しでも貢献できたならば幸いです。

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