リカレント教育とは?企業と政府の動向から現状をチェック

リカレント教育とは、教育を終えて一度社会人となった人が、再び就労に活かすための教育を受けることを指し、生涯にわたって就労と教育を繰り返すシステムのことです。1970年代に経済協力開発機構(OECD)が推進する生涯教育の一形態として位置づけられて以来、世界的に注目を集めています。今回は、このリカレント教育が必要とされている理由、また企業と政府の動きから日本での普及度合いをチェックしていきます。

リカレント教育とは

リカレント教育とは、スウェーデンの経済学者あるゴスタ・レーンの提唱した概念であり、「基本的な教育を終えて社会人になってからも、学校などの教育一環に戻って学習し、再び社会へ出ていく」というサイクルを一生涯続けていくことのできる教育形態をいいます。

リカレント(recurrent)には、繰り返しや循環、反復といった意味を持っており、リカレント教育は「反復教育」「循環教育」「回帰教育」と訳されることがあります。また、「学び直し」という表現が使われることもあります。

第3回目の開催となる2017年の「人生100年時代構想会議」では、安倍首相がリカレント教育の拡充と財源の投入を宣言しました。また、2018年3月に開催された第6回目となる「人生100年時代構想会議」では、安倍首相は下記のように述べております。

本日、議論を行ったリカレント教育は、人づくり革命のみでなく、生産性革命を推進する上で、鍵となるものです。
リカレント教育の受講が職業能力の向上を通じ、キャリアアップ・キャリアチェンジにつながる社会をつくっていかなければなりません。
リカレント教育を進めるため、労働者の時間的余裕を確保するとともに、受講の際の負担軽減制度の大幅拡充を図ります。ただし、制度を拡充するのであれば、対象講座をふさわしいものに改善していくべきとの意見もありました。
教育内容の実践性を高めるためには、実業出身の実務家教員の育成に加えて、企業参加の下でのプログラム策定やインターンシップを取り入れるなどの取組が不可欠でございます。産業界の全面的な協力をお願いしたいと思いますのでよろしくお願いします。
(一部省略)
働き方が変わる中で、企業内教育にのみ人材育成を期待するのは限界であります。教育機関、産業界、行政が連携してリカレント教育を進めてまいります。
この夏に取りまとめる基本構想に向けて、教育訓練給付の拡充、そして産学連携によるリカレント教育プログラムの策定、企業における中途採用の拡大、技術者のリカレント教育等について検討を進めます。

リカレント教育が必要とされている理由

このように日本で注目されているリカレント教育ですが、必要とされている理由はなんでしょうか?

リカレント教育が注目されている理由は、「高齢化」と「少子化」にあります。高齢化は先進国を中心に急速に進んでおり、その中でも日本はトップランナーと呼ばれるほど高齢化が進んでいます。国の総人口に対して65歳以上の人が占める割合を高齢化率と言いますが、1950年代の日本は高齢化率が5%ほどであったにも関わらず、2015年現在での高齢化率は26.6%にまで上昇しており、世界トップとなっています。そして下記の図の通り、日本以外でも欧米、アジア関係なく先進国の高齢化率が上昇しています。

高齢化が進むことで問題となるのが「退職後の生活の長期化」と、それに伴う「生活資金の不足」です。人生100年時代とも言われているように、日本の平均寿命は男性で80歳、女性で87歳となっており、60歳もしくは65歳で退職した後の生活期間が長期化しています。また、少子化によって労働人口が減少しており、慢性的な人材不足が大きな問題となっています。

リカレント教育は、これらの問題を解決するための有効な手段として注目されています。その効果とは、下記のものが挙げられます。

・キャリアアップ

・キャリアチェンジ

・女性の社会復帰

・高齢者の退職後の再就職

リカレント教育の現状

つまりリカレント教育は、労働者増やす・労働者の生産性を高めるために効果的な施策だと言えます。では、そのリカレント教育について現在の日本はどのくらい実現できているのでしょうか。

企業における教育訓練費の推移

労働省と厚生労働省の調査によると、民間企業が教育訓練に投資している金額は下記のように推移しています。

出典:第9回人生10年時代構想会議「人づくり革命 基本構想 参考資料」

図から読み取れるように、1990年代から教育訓練費は低下しており、1991年と2016年を比べると30%以上も減少しています。つまり、企業が従業員に対してリカレント教育の機会を提供することは、あまり行われていないのが現状です。

リカレント教育の課題

企業からリカレント教育の機会が与えられないとすれば、個人的に実施するリカレント教育については、どうなっているのでしょうか。

厚生労働省が平成27年に行った調査によると、対象となった労働者のうち7割強がリカレント教育を受けることに問題を抱えていると回答しました。その問題点の内容を調査した結果が下記の図です。

出典:第9回人生10年時代構想会議「人づくり革命 基本構想 参考資料」

主な問題点を図から読み取ると、「時間がない」「費用が高い」「何を受けるべきかが分からない」の3点です。特に、労働や家事に追われてリカレント教育を受ける時間がないという問題が最も重く、問題を抱えている人の8割がこの時間の問題を抱えていることが分かります。

教育訓練給付制度の改善

教育訓練給付制度とは、条件を満たした45歳未満の離婚者に対して、能力開発とキャリア開発のために教育訓練費の一部を支援する制度です。離婚した45歳未満を対象としているため限定的なものではあるが、女性の社会復帰に貢献しています。教育訓練には、一般教育訓練と専門実践教育訓練の2種類があります。
平成30年6月13日に行われた「人生100年時代構想会議」の資料によると、専門実践教育訓練の開講形態別講座数と受給者数は下記の通りです。

専門実践教育訓練の開講形態別講座数と受給者数

専門実践教育訓練の開講形態別講座数と受給者数
出典:第9回人生10年時代構想会議「人づくり革命 基本構想 参考資料」

図を見ると、給付が受けられる指定講座は昼間課程が圧倒的に多いですが、受給者の数でみると夜間・土日・通信の受給者も昼間より少ないですがかなり多いことが分かります。現状では、受給者に対して夜間・土日・通信課程の指定講座が少ないことが明らかであり、政府はこのミスマッチングを払拭するため、昼間以外の過程にも教育訓練費が給付される講座を増やすことを検討しています。

まとめ

これまでに見た通り、現在の日本では、リカレント教育はあまり普及されていません。ですが、2018年から政府と大学が主体となってリカレント教育を普及させようと積極的な取り組みをはじめています。今はまだ、民間事業者の動きは消極的な動きですが、これから教育機関と民間事業者の連携や制度の更なる拡充が期待されています。ですので、今後もリカレント教育に関する動きを追っていきたいと思います。

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