アサーティブ・コミュニケーションとは?主張できて尊重できる話し方

アサーティブ・コミュニケーションとは?主張できて尊重できる話し方

アサーティブ・コミュニケーションをご存知でしょうか?この名前を初めて聞いたのが最近の方には、新しい言葉のように思えるかもしれません。ですが実のところ、アサーティブ・コミュニケーションの始まりは60年以上も前に遡ります。では、始りからこれほど長い年月が経ってなお、主張と尊重のコミュニケーション方法として注目を集め続けているアサーティブコミュニケーションとは一体どんなものなのか。今回は、アサーティブ・コミュニケーションの意味や起源から実践方法までを一挙にご紹介いたします。

アサーティブ・コミュニケーションとは?

アサーティブ・コミュニケーションの意味

アサーティブ・コミュニケーションの「アサーティブ」は、「Assertive」と書き、「断言的な」「言い張る」といった意味の英語です。この「Assertive」は、行動療法に起源をもつ「Assertiveness」という単語からきており、その意味は「自分と相手を同等に尊重しながらも自身の意見や気持ちを適切に表現すること」です。そこから派生して、アサーティブな会話方法を「アサーティブ・コミュニケーション」、アサーティブネスを鍛える方法を「アサーション・トレーニング」と呼ぶようになりました。

アサーティブ・コミュニケーションの起源

アサーティブ・コミュニケーションの起源は、1949年にまで遡ります。この年にアンドリュー・ソルター氏が書いた「条件反射療法(Conditioned Reflex Therapy)」に由来しており、この本の中で、ソルター氏は本来の人間が持っている「活動性」が、躾や社会的な規範によって抑制されていると述べました。そして、本来の「活動性」を取り戻すために必要なものとして紹介したのが「アサーティブネス(自己主張)」です。

「Conditioned Reflex Therapy」

その後、アサーティブ・コミュニケーションは、1960年~1970年代のアメリカで黒人差別に対する運動や女性の権利を求める運動の中で、いかに自己主張するかを探る中で発達していきました。

アサーティブ・コミュニケーションとそうでない主張方法

アサーティブネスが発達していくと、アメリカの心理学者のウォルピとラザルスがアサーション・トレーニングの基礎を構築しました。そんなウォルピによると、人間の自己主張の方法は3種類あると言われています。それが、「アグレッシブ」と「ノンアサーティブ」と「アサーティブ」の3つです。これより、この3つの主張方法について、詳しくご紹介していきます。

アグレッシブ

アグレッシブとは、攻撃タイプを意味します。自身の気持ちや意見を主張することができる一方で、相手の気持ちや意見を尊重できていないのがアグレッシブです。そんなアグレッシブなコミュニケーションをする人に見られる特徴としては、下記のものが挙げられます。

アグレッシブなコミュニケーションの特徴

・自分のことだけを考える

・相手の気持ちや意見を無視する

・攻撃的な表現で自身の意思を全うする

・自分が一番であることにこだわる

・勝ち負けへの執着が強い

ノンアサーティブ

ノンアサーティブとは、非主張タイプを意味します。相手の気持ちや意見を考えることができる一方で、自分の気持ちや意見を伝えることができない、もしくは苦手と感じるのがノンアサーティブです。そんなノンアサーティブなコミュニケーションをする人の特徴としては下記のものが挙げられます。

ノンアサーティブなコミュニケーションの特徴

・自己主張が控えめ、もしくは苦手

・曖昧な表現が多い

・言い訳が口癖

・自分よりも相手を優先してしまう。

・頼まれたら断れない

・相手に気を遣える反面、相手にも気を遣ってほしい、言わないでもわかってほしいと考える

アサーティブ・コミュニケーション

アサーティブはアグレッシブとノンアサーティブの中間に位置します。自分の気持ちや意見をはっきりと言うことができ、同時に相手の気持ちや意見を尊重することができます。そんなアサーティブ・コミュニケーションの特徴には下記のものが挙げられます。

アサーティブ・コミュニケーションの特徴

・場に沿った適切な表現を選択できる

・相手の気持ちや意見を受け止められる

・自分の気持ちや意見をはっきりと主張できる

・相手と意見が対立しても、お互いが納得できる結論を導くことができる

アサーティブ・コミュニケーションのビジネスへの活用

このようにアサーティブ・コミュニケーションは、アグレッシブとノンアサーティブのいいとこ取りをしたコミュニケーションです。そんなアサーティブ・コミュニケーションがビジネスにおいて注目されているのは何故かというと、職場でのコミュニケーションを円滑にし、人間関係を改善するのに有効な手立てとして認識されているからです。職場での円滑なコミュニケーションや人間関係は、チームや組織の生産性、従業員の満足度、離職率など、企業にとって重要な要素に大きく関与しています。これが、アサーティブ・コミュニケーションがビジネスにおいて注目を集めている理由です。

アサーティブ・コミュニケーションの導入によって大きな改善が期待できるものの一つに、「上司と部下の関係」があります。そこで今回は、上司と部下のそれぞれがアサーティブ・コミュニケーションを身に付けることで、どのような効果が得られるかについてご紹介していきます。

アサーティブ・コミュニケーションを上司が身に付けた場合

自己主張の3タイプの中で、上司にありがちなのが「アグレッシブ」です。アグレッシブなコミュニケーションを使う上司は、自身の意見が正しいという前提で話を進める、思ったように動いてくれない部下、言った通りのことしかしない部下に対して強い言葉で叱責するといった行動を取ってしまいます。そうした言動が原因となって、部下と良好な関係を築けないといったケースがよくあるそうです。そんな上司がアサーティブ・コミュニケーションを身に付けた場合、部下の気持ちや意見を尊重しながらも「自分がどうしたいのか」「どんな気持ちで仕事を任せているのか」を部下に伝えることができます。上司自身も結果を出したいと思っていることや、部下への期待をアサーティブに伝えることができれば、部下との関係は一転するかもしれません。

アサーティブ・コミュニケーションを部下が身に付けた場合

自己主張の3タイプの中で、上司とうまくいっていない部下にありがちなのが「ノンアサーティブ」です。ノンアサーティブなコミュニケーションに陥ってしまうと上司に対してイエスマンになってしまったり、人の手を借りることができなくなってしまいます。そんな言動が習慣化すると、過剰なストレスから心身に異常が出てしまう、大事になってからミスの報告をするといったケースがよくあります。そんな部下がアサーティブ・コミュニケーションを身に付けた場合、自分でしっかりと考えて意見をすることができるようになり、仕事がうまくいっていないこと、困っていることを素直に打ち明けることができるようになります。

アサーティブ・コミュニケーションをDESC法で実践する

このように、アサーティブ・コミュニケーションは管理する立場の人にも、管理される立場の人にとっても効果的なコミュニケーション方法です。では、アサーティブ・コミュニケーションを実践するためにはどうしたらいいのでしょうか?

アサーティブコミュニケーションを実践するうえで必要なポイントは4つあります。そして、それぞれのポイントのイニシャルを取って、「DESC法(デスク法)と呼ばれています。

Describe(事実を描写する)

まず、状況や相手の行動について述べます。この時に、相手への評価や自分の気持ちは含めず、具体的で客観的な事実のみを述べることに注意してください。

事実を描写した例
「あなたは待ち合わせに10分遅れてきた。」

事実でない例「あなたは私を大切に思っていない。」

Explain(気持ちを説明する)

次に、「Describe」で述べた事実に対する自分の主観的な気持ちを伝えます。

この時には感情的になったり、攻撃的にならないようにするのがポイントです。

自分の気持ちを建設的かつ率直に伝えましょう。

また「○○と感じている」という表現を使うと、感情を表現できない可能性があるので注意が必要です。

気持ちを説明した例
「あなたが時間になっても来ないから、会えないのかと思って不安になりました。」

気持ちを説明していない例
「あなたが時間になっても来ないから、ぞんざいに扱われたと感じました。」

Specify(求めるものを提案する)

気持ちを伝えることができたら、自分が何を求めているのかを相手に伝えます。ここで重要なのは、「具体的な行動を要求する」と言うことです。「優しくしてほしい」「愛してほしい」といった要求は、抽象的すぎるためにどんな行動をしてほしいのかが相手に伝わりません。具体的な行動を要求するというのは、例えば「週末は疲れているから皿洗いを代わってほしい」「週に1回は会ってほしい」などです。

具体的に求めるものを提案した例
「遅刻しそうなときは『遅刻する』って連絡してくれませんか?」

求めるものが具体的でない例
「私のことを大切にしてくれませんか?」

Choose(相手の反応に対する行動を選択する)

具体的な行動で自分の求めているものを提案したら、その提案に対して相手が「Yes」といった場合と「No」といった場合の自身の行動を示します。ここで注意するのは、「Specify」に再び戻ってしまわないことです。

自身の行動を提示した例
「連絡してくれれば、待っててあげるわ。ただ、もし連絡がなかったら帰っちゃうからね。」

Specifyに戻ってしまった例
「連絡してくれれば、待っててあげるわ。ただ、もし連絡がなかったらアイス買ってくれない?」

まとめ

仕事の場面でもプライベートな場面でも、自身の気持ちや意見をしっかりと伝え、同時に相手の気持ちや意見を尊重することは欠かせません。ましてや、従業員それぞれに主体性が求められ、管理の立場にある人は部下の主体性や自立性を高めるようなマネジメントが求められている昨今のビジネストレンドの中では、アサーティブ・コミュニケーションの重要性がより一層増しています。皆さんの職場が実りあるコミュニケーションであふれるように、この記事を通して少しでも力になれたならば幸いです。

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