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人手不足の深刻化を解消するためにも、働き方改革の推進は喫緊の課題です。特に中小企業では、長時間労働の是正や、賃金格差解消がポイントとなります。この記事では、働き方改革関連法の施行日と導入のコツ、注意点を解説します。

中小企業の働き方改革11選を施行スケジュールと合わせて解説!

中小企業の働き方改革で、事前に把握すべき内容が“働き方改革関連法”です。大企業に続いて、中小企業にも順次施行されます。初めに、中小企業の定義を確認し、次に、法に則った働き方改革を行うためには、どのような対応が必要かを見ていきます。

中小企業の定義:業種により異なる

中小企業は、下記のいずれかの基準に則って判断します。

  1. 資本金の額または出資金の総額
  2. 常時使用する従業員の数

個人事業主や医療法人などで出資金の概念がない場合は、②常時使用する従業員の数を判断基準とします。 業種別の基準は、下記の表のとおりです1。これらの基準に当てはまるものを中小企業、当てはまらないものが大企業となります。

業種

①資本金の額または出資金の総額②常時使用する従業員の数

小売業

5,000万円以下50人以下

サービス業

100人以下

卸売業

1億円以下

その他(製造・建設・運輸業、など)3億円以下

300人以下

次から、中小企業の働き方改革関連法2を確認します。

中小企業の働き方改革1. 時間外労働の上限規制

残業時間の上限は、原則月45時間、年360時間とし、臨時的で特別な事情がない限りこれを超えることはできません。また、特別な事情があり、なおかつ労使の合意があったとしても下記の基準を超える労働は認められません。

  • 年720時間以内
  • 休日労働を含む、複数月平均80時間以内
  • 月100時間未満

違反した場合、6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。(施行日:2020年4月1日)

中小企業の働き方改革2. 時季を指定し年5日間の有給休暇を義務化

年次有給休暇は、下記をどちらも満たす労働者に付与される権利です。

  • 半年間継続して雇用されている
  • 全労働日数の8割以上出勤している

  年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者は、時季を指定した上で年5日の年次有給の取得が義務化されました。企業は労働者に取得希望を事前に聴取し、なおかつ労働者の意見の尊重に努め、有給取得日を決定しなければいけません。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革3. フレックスタイム制が3ヵ月間に延長

労働者自らが始業・終業時刻や労働時間を決定する“フレックスタイム制”を導入している場合、清算期間が1ヵ月から3ヵ月に延長されます。今までは、労働時間の超過分や不足分を当月以内に清算する(割増賃金の支払いや不足分の賃金控除など)必要がありましたが、法改正により3ヵ月に渡り清算が可能となります。

たとえば、6月が繁忙期で労働時間を超過したとしても、8月の閑散期で相殺するなど、より柔軟な働き方が可能となります。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革4. 勤務時間インターバル制度

勤務時間インターバル制度とは、その日の勤務終了後、翌日の出勤時刻までの間に一定の休息時間(インターバル)を設ける仕組みです。 始業時刻8時、終業時刻17時、インターバル11時間の会社を例に見てみましょう。この日、労働者Aの終業時刻は23時でした。本来、翌日の始業時刻は8時ですが、インターバルを考慮し10時から業務を開始します。

インターバル制度の導入は努力義務ですが、導入により睡眠時間や生活時間の確保など、労働者の健康を守りながら働くことができるでしょう。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革5. 労働時間把握の義務化

裁量労働制が適用される労働者や管理監督者を問わず、全ての労働者の客観的な労働時間の把握が義務化されました。“客観的な”方法としては、下記が当てはまります。

  • タイムカードによる記録
  • 電子計算機の使用時間の記録(パソコンなど)
  • その他、適切な方法

労働時間の把握と合わせて、出勤簿やタイムカードなど、労働時間を記録した用紙・媒体は、当分の間、3年間の保管も義務付けられました。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革6. 産業保健機能の強化

労働安全衛生法の改正により、労働者の健康リスクを見逃さないための取り組みとして、産業医・産業保健機能の強化が決定しました。下記のとおり、労働者の健康問題を安心して産業医に相談できる環境の強化や整備が求められます。

  • 事業者から産業医へ、健康管理に必要な情報の提供
  • 労働者からの健康相談に対応できる仕組み作り
  • 長時間労働者に対する面接指導

事業主・産業医・衛生委員会の関係を強化し、労働者の健康を守る取り組みです。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革7. 高度プロフェッショナル制度

コンサルタントや研究開発職など特定の業種で、なおかつ年収が1,075万円以上の労働者は、賃金を時間ではなく成果で評価する制度です。ただし、高度プロフェッショナル制度を導入するためには、労使委員会の社内設置、労働者との合意、年間104日以上の休日の確保、健康面への配慮などが必要です。(施行日:2019年4月1日)

中小企業の働き方改革8. 月60時間以上の労働の割増賃金の引き上げ

2023年4月以降、時間外労働の割増賃金率が25%から50% に引き上げられます。1日8時間以上、週40時間以上の法定労働時間を超える時間外労働(残業)には、現在25%の割増賃金率が適用されています。割増賃金率の引き上げに伴い、法定時間外労働+深夜労働となった場合などは、75%の割増賃金が発生します。法定時間外労働、休日労働、深夜労働の組み合わせによっても割増賃金率が変わるため、労働時間の把握がより一層重要となります。(施行予定日:2023年4月1日)

中小企業の働き方改革9. 不合理な待遇差の禁止

同一労働同一賃金の実現に向け、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容や配置の変更範囲などが同じ場合、賃金や福利厚生など“不合理な待遇格差”が禁止されます。(施行日:2021年4月1日)

中小企業の働き方改革10. 待遇に関する説明義務の強化

非正規労働者と正規労働者の待遇差について質問を受けた場合、事業者は労働者に説明する義務が発生し、説明を求めたことを理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されています。説明の際は、資料などを用い、労働者が理解できるようにしなければいけません。(施行日:2021年4月1日)

中小企業の働き方改革11. 裁判外紛争解決手続の整備

従業員が、不合理な待遇格差に不満がある時、都道府県労働局で無料・非公開の紛争解決手続きが行えるようになりました。これにより、事業主と労働者の間に紛争が生じた場合、裁判によらず、第三者を交えた話し合いを通して問題が解決しやすくなりました。(施行日:2021年4月1日)

中小企業で働き方改革が必要とされる3つの理由

働き方改革は、少子高齢化による労働力不足の解消を目的としてスタートしました。中小企業は、日本国内の雇用の約7割を担っており、意識の共有がされやすいことから、働き方改革の推進が期待されています。

1. 人手不足の解消

日本の人口は2004年をピークに急激な減少を続けており3、中小企業では2013年から全ての業種において人手不足が続いています。4

慢性的な人手不足を解消するためには、労働環境の整備や多様な働き方の実現など、“魅力的な職場作り”が必要です。

2. 長時間労働の解消

OECD(経済協力開発機構)の統計5によると、2020年の日本の年間労働時間は1598時間となっており、世界主要国中21位となっています。この数字は平均値である1687時間よりも低く、また4位の韓国(1908時間)、11位のアメリカ(1767時間)よりも低い数値となります。勤勉なイメージが強い日本の労働時間が、世界平均よりも少ないというのは、意外に思われる方も多いかも知れません。

ただし、上記のデータには、サービス残業の時間が含まれていません。サービス残業とは、割増賃金を伴わない時間外労働や休日労働のことを指します。サービス残業ではなく「賃金不払残業」といわれる場合も同じ意味です。

日本労働組合総合連合会が2014年に実施した調査によると、約52% の正規労働者が「サービス残業をせざるを得ないことがある」と回答しました。役職別では係長クラスが約64%と最も多く、過半数を超える正規労働者がサービス残業をしているという実態が浮かび上がってきます6

さらに時短勤務やアルバイト労働者の労働時間も含んでいるため、一概に「日本の労働時間は平均よりも少ない」とは言えません。2019年に行われた厚生労働省による「毎月勤労統計調査」7を見てみると、パートタイムを除いた労働者の月間平均残業時間は14.3時間、パートタイムを含む全ての労働者の月間平均残業時間は10.6時間となっています。

各業界での人手不足が懸念される中で、1人当たりの労働量が増え、サービス残業や休日出勤も当たり前となれば、さらに人手不足に陥る悪循環が生まれてしまいます。働き方改革では、残業時間に上限を設け厳罰化する、労働時間の適正な管理、インターバル制度の導入などにより、労働者の健康を害する働き方の見直しに重きを置いています。また、フレックスタイム制の拡充により多様な働き方の実現を目指すことで、長時間労働の是正を計っています。

3. 労働生産性の向上

人手不足を解消し、長時間労働を是正するためには、労働生産性の向上が不可欠です。労働生産性の国際比較2020のデータ8によると、日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.9ドル(4,866円) と、米国(77.0ドル/7,816円)の約6割の水準に相当します。順位は、OECD加盟37カ国中21位。また主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いているという状況です。

諸外国と比べ日本の生産性が低い要因として、情報通信網の整備不足やイノベーションの欠如が上げられます。中小企業では、ICT投資による業務の効率化や、テレワークの推進による女性や若者・地方在住者の活躍などを促すことで、生産性の向上が見込めるでしょう。

中小企業の働き方改革成功事例3つを紹介!

中小企業の働き方改革で期待できる変化を厚生労働省の発表している成功事例を元に紹介します。

1. 「NO残業」で月平均残業時間を14.5時間削減!

創業約70年の木製ハンガー専門メーカーでは、「働き方がブランド価値の向上に繋がる」と考え、2014年から働き方改革をスタートしました。“ノー残業デー”を導入し、一人ひとりに残業削減の意識を芽生えさせた結果、月平均24時間あった残業時間は、2019年には9.5時間まで減少しました。

働き方改革では、営業を個人からチーム制に変える、女性の採用を積極化するなどの取り組みを行っています。業務が効率化したことから、育児休暇とは別に10日間のペアレント休暇制度を導入できたり、自社ブランドの海外展望を行えたり、従業員にも企業にもうれしい好循環が生まれています。9

2. 企業理念の共有で社員が自主的に働く会社

1958年設立の寒天メーカーでは、働き方改革の一貫として、企業理念(“社員を幸せにし、社会に貢献すること”)が書かれたカードを全社員に配布しています。企業理念が浸透しているため、社員が自主的に働き、怠けるものはいないと言います。

また、社員が安心して長く働けるよう、60歳まで毎年昇給、65歳までの定年延長に人事制度を改革しました。会社を良く知る人に長く勤めて欲しいとの思いから、産休・育休後も復職しやすいよう、新卒採用時には10人程度多く採用を行っています。結果、産休・育休取得者は、5年で76人となっています。

48期連続の増収増益は、企業理念を守り、社員を大切にする姿勢から生まれた結果と言えるでしょう10

3. “テレワーク”と“KPIボード”の活用で生産性を270%向上

1911年、筆や墨を販売する文具店としてスタートし、現在は事務用品やOA機器の販売を行う会社では、2015年からビジネスモデルを含む働き方改革を続けています。最初は、長時間労働を是正するため、社長自ら早く帰ることを促すも、かえって生産性は低下してしまいます。

そこで導入したのが“テレワーク”と“KPIボード”です。テレワークの導入により、ワークライフバランスが取れるようになり、KPIボードの導入により、会社の状況と個人の進捗状況が全社員で共有できるようになりました。結果、地道な働き方改革が功を奏し、2015年~2019年までの時間当たり生産性は270%向上し、さらに、2017年は前年比41.3%の残業時間削減に成功しました。

現在は、働き方を変えたい企業のモデルカンパニーとして、テレワーク支援のコンサルティング業務にも取り組んでいます。リーマン・ショックやインターネット販売の普及など、度重なる倒産の危機を乗り越えられたのは、働き方を見直し、改革し続ける姿勢によるものでしょう。11

中小企業の働き方改革のコツ

それでは、これらの働き方改革を進めていくにはどうすればよいのでしょうか?中小企業の働き方改革の中でもポイントとなるのは、労働時間の削減と、同一労働・同一賃金です。業務の効率化や、社員それぞれの事情に合わせた働き方を提案するなど、働き方改革のコツを解説します。

業務効率化

労働時間を削減するためには、業務の効率化が不可欠です。一人ひとりの労働内容が不明確であったり、ICTの導入が遅れていたりすると、労働時間の削減は難しいでしょう。まずは、全従業員の業務を見える化し、本当に必要な仕事のみに絞り、効率化を計りましょう。

  • 業務マニュアルの作成
  • ペーパーレス化
  • 人工知能の活用

など、アナログ作業をデジタル化するだけでも、大幅に業務は改善できるでしょう。

社員それぞれの事情に合わせた働き方を提案する

同じ会社に勤めていても、社員によって抱える事情は様々です。例えば、育児や介護など、家族のケアが必要な場合、働ける時間は限られてきます。また、毎日出社することが必須となっていると、持病などにより通勤が困難な場合や遠方に住んでいる場合、働きたくても働けないと状況が生まれてしまいます。その他、業種や各個人の能力によっても、最適な働き方は異なります。

そこで、フレックスタイム制度、テレワーク、高度プロフェッショナル制度を導入することによって、社員それぞれの事情に合わせた働き方を提案することができます。例えば、家庭の事情によって長時間オフィスで働くことが難しい従業員を、フレックスタイム制やテレワークに移行すれば欠員を出さずに業務を続けることが可能になります。

また、社員によっては、賃金を時間ではなく成果で評価できる高度プロフェッショナル制度を導入することで、より高い成果を上げることに繋がるでしょう。

このように各個人に最適な働き方を導入し、それぞれの能力を最大限に引き出すことで、企業全体の業務効率・生産性の向上に繋げましょう。

賃金の見直し

働き方改革では、正規雇用従業員と、非正規雇用従業員の不合理な賃金格差が禁止されます。同じ職務を全うしているのに、賃金に差があるようでは、モチベーションの低下にもつながりかねません。従業員の職務内容と労働時間を適正に管理し、働きに見合った待遇を用意しましょう。

中小企業の働き方改革の注意点

中小企業で働き方改革を実行する際は、関連法案の施行状況や、従業員教育に注意が必要です。

働き方改革関連法の内容把握

働き方改革では、法律上守らなければならいない規則など、さまざまなルールの確認が必要です。また、既に施行されている法案もあれば、将来施行予定の法律もあります。法律は「知らなかった」では済まされないため、常に最新の動向をチェックしましょう。

管理職・従業員への教育

働き方改革を実行しても、従業員全員が意識して取り組まなければ、変革は難しいでしょう。特に、時間外労働が常態化している場合などは、法律が変わっても、人の意識がすぐに変わるものではありません。なぜ労働時間の削減が必要か、どうして業務効率化をするのかなど、全員従業員が理解できるように社員教育が重要です。

余裕を持って取り組む

働き方改革は一朝一夕に達成できるものではありません。また、労働時間記録簿の3年保管など、関連法に基づき新たに作成する書類も発生します。事前にしっかりと準備をした上で、従業員とコミュニケーションを深めながら、余裕を持って労働環境の改善を進めましょう。

まとめ

働き方改革では、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態によらない公正な待遇がテーマです。中小企業はコミュニケーションが取りやすい分、働き方改革が推進しやすい環境が整っています。より良い労働環境の実現に向けて、できることから始めていきましょう。

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