エンゲージメントという言葉を、昨今よく耳にするようになりました。現在多くの書籍やコラムで、組織づくりをする上で重要なポイントとしてエンゲージメントが取り上げられています。そこで今回は、そんなエンゲージメントを高める方法の一つとして、『研修』がどのくらい有効なのかについて考察していきます。
エンゲージメント研修の実施で本当にエンゲージメントは高まるのか?
エンゲージメントとは
では初めに、エンゲージメントという言葉について簡単に説明していきます。
エンゲージメント(Engagement)という言葉は、元々は「約束・誓約・従事・没頭」という意味の英語であり、日本では組織開発とマーケティングの二つ分野でそれぞれ違った意味で使われています。マーケティングの分野では比較的古くから使われており、顧客が会社・サービス・商品・ブランドに愛着を持つこと、また愛着を持った顧客が取る行動のことをエンゲージメントと呼んでいました。
そして近年、人事や組織開発の分野でもエンゲージメントという言葉が使われるようになりました。この人事や組織開発の分野でエンゲージメントを使うとき、大抵の場合は2種類の内のどちらかを意味しています。それは、「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント(Emproyee engagement)」と呼ばれているものです。この二つはよく混同されがちですが、実は明確な違いがあります。
まず「ワークエンゲージメント」は、学術的に発展してきた概念です。エンゲージメントの高い従業員は「活力・熱意・没頭」を持った従業員であると定義されており、エンゲージメントが高い状態と反対の状態は「バーンアウト(燃え尽き)」だとしています。
一方で「従業員エンゲージメント(Emproyee engagement)」とは、産業界で発展してきたものであり、従業員が企業に対して抱く貢献意識のことを表します。そして、その貢献意識を高めるためには従業員それぞれが持つ働く目的や目標と、企業の持つ目的と目標が一致することが重要となります。
今回の記事では、エンゲージメント研修がどのくらい有効なのか?という疑問に対して考察していくため、これ以降は『エンゲージメント=従業員エンゲージメント』という前提のもとに話を進めていきます。
エンゲージメントを高めるメリットとは
では次に、エンゲージメントを高めることで得られるメリットについて解説していきます。高いエンゲージメントによって組織にもたらされる主なメリットとしては、以下のものが挙げられます。
- 生産性が高まる
- 離職率が低下する
- 従業員に主体性が生まれる
- 顧客満足度が高まる
- 従業員の仕事に対する満足感が高まる
- メンタルヘルスに関するコストとリスクの低下
また、このメリットの裏付けとして、世論調査などで有名な米国企業であるギャラップ社が発表した「State of Global Workplace Report」があります。そこでは、エンゲージメント指数が上位25%の企業と下位25%の企業を比べて、どのような違いがあるかについて述べられています。
GALLUP社「State of Global Workplace Report」を基に作成
図から読み取れるように、生産性・収益性・顧客評価に関してはエンゲージメントが高い企業のほうが2割ほど高く、欠勤日数・安全に関する事故に関しては4~5割も低いという結果が出ました。このように、エンゲージメントを高めることにはさまざまなメリットがあります。
エンゲージメントに影響を及ぼす要因
では、実際にエンゲージメントを高めるためにはどうすればいいのだろうか?という疑問が浮かぶと思いますが、その答えとしては、「無数にある」というのが実際のところです。なぜかというと、エンゲージメントに影響を及ぼす要因が無数にあり、それらの要因を改善するための施策も必然的に多くなるからです。そこで今回は、それらの要因の中でも代表的なものをご紹介いたします。
- 評価制度
- 報酬
- 上司、同僚、部下との人間関係
- 労働環境
- マネジメントの方法
- 従業員が持つ人生の目的とビジョン
- 組織が持つ目的とビジョンの浸透度
- 業務内容
エンゲージメント研修で取り扱える内容
一覧で見てもわかるように、エンゲージメントに影響を及ぼす要因は沢山あり、それらへの施策も必然的に多くなります。そのため、エンゲージメントを高める施策は複合的となります。その複合的な施策の中で、特に社員に直接的に影響を与えることが出来るのが、集合研修です。そこで、集合研修で扱うことのできる要因を抽出すると、以下のものが挙げられます。
- 組織が持つ目的とビジョンの浸透度
- 従業員が持つ人生の目的とビジョン
- 上司、同僚、部下との人間関係
- マネジメントの方法
では、これらの要因に対して、エンゲージメント研修でどのようなことができるのかを詳しくご紹介していきます。
組織の目的とビジョンを浸透する研修
従業員のエンゲージメントを高めるためには、その組織の存在目的とビジョンへの共感が必要となります。そして、目的とビジョンが浸透した状態とは、目的とビジョンをただ知っているだけではなく、それらが行動にまで落とし込まれた状態です。そんな目的とビジョンの浸透を促すためには、その目的やビジョンが作られた経緯や意図を理解してもらうことや、その目的とビジョンを判断基準とするならば、どのような行動を取ることが望ましいのかを明確にすることがポイントとなります。このような内容は、エンゲージメント研修で取り扱うことのできる内容となります。
従業員の人生目的とビジョンを明確にする研修
エンゲージメントを高めるためには、ただ企業の目的とビジョンに共感するだけではなく、自身の人生の目的とビジョンを組織のそれと照らし合わせた時に、同じ方向性であることを認識することがポイントとなります。そして、そのためには従業員それぞれが自身の人生の目的とビジョンを明確にしていることが欠かせません。ですので、まだ目的とビジョンが明確でない従業員には、エンゲージメント研修を通して自身の過去や現在、将来と向き合って明確にするための期間を設けることができます。
上司・同僚・部下の人間関係を改善する研修
自身が属している組織へのエンゲージメントを高めるためには、その組織に属していることが自身にとって居心地のいいものであることも重要なポイントとなります。そして、組織とは人の集まりであるため、組織内の人との人間関係の良し悪しは居心地の良さに直結します。ですので、組織内のコミュニケーションが少ないといった問題があれば、コミュニケーション能力を高める内容を扱うことでエンゲージメント研修の効果を高めることができます。
主体性を引き出すマネジメント研修
それぞれの従業員が組織の目的とビジョンに共感し、また自身が働く目的を明確に持っていることで、従業員の主体性を引き出すことがある程度は可能になります。ですが、上司から受けるマネジメントが押し付け型であり、主体性が歓迎されない環境にいる場合には、せっかくの主体性も発揮されずに終わってしまいます。ですので、部下の主体性を活かす、引き出すマネジメント方法を扱うことで、エンゲージメント研修の効果をさらに高めることができます。
エンゲージメント研修を成功させるポイント
エンゲージメントに影響を持つ要因は非常に多いため、どの組織に対しても画一的に効果的なエンゲージメント研修というものは現実的ではありません。ですが、エンゲージメントに影響を及ぼす要因は非常に多く、なにから取り組むべきかに迷うかもしれません。
そんな悩みを抱えている方にお勧めしているのは、まず『自組織の中でエンゲージメントを生んでいる良いところを研修で確認すること』です。例えば、「うちは部署間の風通しがいい。」「新人をしっかり育成する文化がある。」といった自組織の良いところに関する共通認識を作ることで、『もっとよくなるためには何ができるだろうか?』というマインドセットが生まれます。このマインドがあると、課題解決に対して前向きになることができます。
そのためには、エンゲージメント研修を実施する前には、まず組織の「いいところ」と「改善すべきところ」をしっかりと把握していることが大切になります。「組織のどんな文化が社員のエンゲージメントを生み出しているのか」や「組織のどんな慣習が社員のエンゲージメントを阻害しているのか」を明確にするために、サーベイやアンケート調査、社員へのヒアリングを通して組織の現状をしっかりと理解することがポイントとなります。
まとめ
エンゲージメント研修を実施するときには、「何がエンゲージメントを阻害しているのか」「エンゲージメントを高めるために効果的な要素は何か」といった課題を扱う前に、自社の良いところをみんなで見つけることがポイントになります。そして、前向きなマインドが作られた上で、さらに良くなるために、課題解決の研修を実施することをおすすめしています。
エンゲージメントを高めるために、今回紹介した組織の目的とビジョンの浸透・個人の目的とビジョンの明確化・上司、同僚、部下との人間関係・主体性を引き出すマネジメントを課題としている方がいましたら、『もっとよくなるためにはどうしたらいいだろうか?』というマインドを作った上で、エンゲージメント研修の実施を考えてみるといいかもしれません。自組織のエンゲージメントを高めたいと思うすべての方に、この記事を通して少しでも貢献できたならば幸いです。
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