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パフォーマンスマネジメントとは?年次評価から最新の施策へ

パフォーマンスマネジメントとは?年次評価から最新の施策へ

パフォーマンスマネジメントという言葉をご存知ですか?

2017年頃からよく聞くようになったこの言葉ですが、「なんとなくわかるけど、説明しろと言われるとちょっと曖昧」という方も多いのではないでしょうか。今回は、今まさに注目を浴びているパフォーマンスマネジメントが、一体どういうものなのかを解説します。そして、どういった課題に対して効果を発揮するのか、また、具体的にどういった施策があるのかをご紹介します。

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パフォーマンスマネジメントとは?

昨今、大きな注目を集めている、パフォーマンスマネジメントですが、実を言うと約50年前から存在している言葉なのです。1970年代にアメリカのコンサルタント、オーブリー・C・ダニエルズ氏によって提唱されました。一言で説明すると、「部下や従業員の目標管理を通して、組織全体の目標達成を実現するマネジメント手法」です。

では、なぜ50年も経った今になって、パフォーマンスマネジメントは注目を浴びているのでしょうか。それは、2012年からアメリカでパフォーマンスマネジメントを見直そう、という動きがあったからです。その結果として、現在のパフォーマンスマネジメントと、従来のパフォーマンスマネジメントとでは、推奨されている施策が大きく異なります。そこで、最新のパフォーマンスマネジメントをご紹介する前に、従来のパフォーマンスマネジメントについて、簡単に説明します。

従来のパフォーマンスマネジメントを代表する施策は、1、上司主導の目標管理 と 2、年次評価 の2つです。従来のパフォーマンスマネジメントでは、上司が会社の目標を細分化して部下に振り分け、その進捗を管理します。これが上司主導の目標管理です。そして、その振り分けられた目標の達成率と、中間面談を通して、年に一回の業績評価を出します。これを年次評価(=レイティング)と言います。これら2つの施策が多くの企業で導入、実施されました。しかし、その結果はというと、従業員のパフォーマンスは全く上がりませんでした。それどころか、調査をすればするほど、従来のパフォーマンスマネジメントが、パフォーマンスを下げる要因になっていることが判明したのです。

従来のパフォーマンスマネジメントの弊害

従来のパフォーマンスマネジメントは、なぜパフォーマンスを下げてしまったのか?従来のパフォーマンスマネジメントが機能しなかった会社の例を挙げてご説明したいと思います。

上手く機能しなかった会社例

パフォーマンスマネジメントを実践する会社Aがありました。上司が社員一人ひとりに年間目標が与え、年次評価で、1から5の5段階で評価をつけます。そこで働くBさんは、CさんDさんEさんという3人の上司であり、評価者です。年に一度の評価をつけるにあたって、CさんとDさんとEさんの目標達成率や能力を確認したところ、全員非常に優秀で、その差はわずかでした。ですが、このときにBさんは、Cさんには5、Dさんには4、Eさんには3という評価をつけました。

「なんで全員に5をつけないんだ!」と思うかもしれません。ですが、Bさんはそれができないのです。なぜかというと、「Bさん自身の評価が下がってしまうから」です。このマネージャーであるBさんは評価をつける立場にいますが、同時に評価を受ける立場でもあります。会社Aの場合、Bさんには上司であるFさんがいるのです。もしBさんが部下3人に5の評価をつけたとすると、Fさんに「部下に甘い」という評価をつけられてしまいます。ですから、Bさんは正当な評価ができないのです。

では次に、この評価を受けたEさんの視点に立ってみましょう。Eさんは与えられた目標をしっかり達成したため、当然5もしくは4の評価を受けると思っています。ですが、蓋を開けてみると3です。Eさんは納得できませんから、Bマネージャーのところに行って、抗議します。「なぜ評価が3なんですか。納得できません!」しかし、Bさんは「自分の評価もある」なんて言えませんから、3になった理由を必死に探して説明します。こうして、BさんとEさんの信頼関係は見事に崩れ去りました。

そして、正当な評価を受けられなかったEさんは、熱心に働くことが馬鹿らしくなり、手を抜いて働くようになります。もしくは、5をもらうために、CさんとDさんを出し抜こうと考えるかもしれません。こうして、CさんとDさんとEさんは協力しなくなりました。翌年のチームとしての成果は、お察しの通りです。

例ですので、かなり大げさな設定でしたが、このエピソードの中に、従来のパフォーマンスマネジメントがパフォーマンスを下げていた理由が詰まっています。年次評価制度が上司と部下の信頼関係とチームの協力関係を阻害していたことが理由で、従来のパフォーマンスマネジメントはパフォーマンスを下げてしまっていたのです。これらの問題を受けて、パフォーマンスマネジメントは大きな改革を迎えることになりました。

パフォーマンスマネジメント:最新の施策5つ

では、変革後のパフォーマンスマネジメントはどのように変わったのでしょうか。変革前と変革後の違いは下記の通りです。

パフォーマンス・マネジメントの変化

さきほど、従来のパフォーマンスマネジメントが、パフォーマンスを下げていた理由を解説しました。そして、これに気が付いた米国企業を先頭に、真にパフォーマンスを高めるパフォーマンスマネジメントが追求されました。特に、従来のパフォーマンスマネジメントに起きていた問題を解決するために、年次評価制度を廃止する企業が次々と出てきたのです。米国のアドビシステムズやマイクロソフト、GEがまさにその企業のうちの一つに当たります。これらの企業の思い切った取り組みは、世界に衝撃を与え、新しいパフォーマンスマネジメントに大きな注目が集まりました。

それでは、2012年以降の改革によって、パフォーマンスマネジメントの施策がどのように変わったのか見ていきましょう。現在、日本でも大きな注目を集めているパフォーマンスマネジメントですが、その具体的な施策としては、下記の5つにまとめられます。

  1. 評価や報酬決定に関する情報を全従業員に共有する
  2. 従業員に計画と実行の主導権を与える
  3. 将来にも焦点を当ててマネジメントする
  4. 個人よりもチームを評価する
  5. パフォーマンスによる昇給をやめる

これから、この1つ1つの施策について詳しく解説していきます。

評価や報酬決定に関する情報を全従業員に共有する

まず始めに共有しておくべき情報として、パフォーマンスマネジメントは、ノーレイティング(数字や記号による段階評価をしないこと)を推奨しているわけではありません。先ほどの例でも見たように、信頼関係を崩すのはレイティング(段階評価)ではなく、上司がつけた評価への不信感です。そして、評価への不信感が出てしまう理由は、評価の基準を評価される側が認知していない点にあります。ですから上司と部下の間に情報の格差がある場合には、それを埋めるように心がけましょう。

例えば、とある会社では、従業員の評価制度はマネージャーだけが知っているとします。すると当然、従業員はいい評価をもらうためにマネージャーの顔色を窺うようになります。そして、マネージャーの顔色を伺いながら一生懸命働いたにも関わらず、年次評価が低かったとしたらどうでしょうか。マネージャーの評価を疑い、好き嫌いで評価しているんじゃないか、と思うかもしれません。もしこんな環境だとしたら、上司と部下の間に信頼関係は生まれないでしょう。

上司と部下が信頼関係を築くためにも、評価制度やプロセス、報酬の決め方は従業員全員に共有する必要があります。ここで重要なのは「全員が認識している」ことです。ですので、情報にアクセスできる状態を作って満足してはいけません。従業員が評価制度を理解できているか、しっかりと確認し、もし理解していなければ今一度確認する機会を設けましょう。

情報の格差は、埋めれば埋めるほど、上司に信頼されているという感覚が高まり、主体性が生まれます。また、評価制度だけでなく、キャリアや役職についての情報も共有すると、より一層主体性やモチベーションが向上します。

従業員に計画と実行の主導権を与える

人というのは、自分の行動を制限されるのを嫌います。「開けるな」と書かれた箱があると、逆に開けたくなる、というのは浦島太郎で有名な話です。そして行動を制限されるのは、能力が高い人ほど嫌います。ですから、目標を達成するための方法や手段を上司が計画して強要するのは、なるべく避けましょう。マネージャーが行うのは、目標と戦略の共有にとどめ、計画と実行はそれぞれの従業員に託します。そして、後ろからそっと見守るのです。

ただ、ここで言ているのは「マネジメントの責任を手放せ」ということではありません。明らかに成果の低い従業員がいたならば、むしろ積極的に介入すべきです。また、相手がフィードバックを求めてきたときには、きちんとフィードバックを与えましょう。

このときに重要なのは、従業員からマネージャーにフィードバックを求められるような関係性を築いておくことです。ですから、「必要なときには、いつでも情報を提供するし、アドバイスもフィードバックもするよ」と、支援する準備ができていることを普段からしっかり伝えておきましょう。仕事の主導権を自分が握っているという感覚は、会社と上司に信頼されているという意識を生み、自信や主体性、帰属意識へとつながります。

未来に焦点を当ててマネジメントする

従来のパフォーマンスマネジメントがそうであったように、人は未来よりも過去に注目してしまうものです。過去の反省はよくするけれど、将来の計画はあまり立てません。そして、過去を振り返るときには、よかった点よりも悪かった点に注目してしまうものです。もし何かを改善しようと思ったときには、まず始めに「何が悪かったのか」を考えることでしょう。自分の悪い点ばかり考えていると、自信を失っていしまいます。ですので、「何が悪かったか」を考えるのと同じくらい「どうすれば良くなるか」についても考えなくてはいけません。

マネージャーにフィードバックにおける役割というのは、本人が見えていない問題点や良かった点を指摘することもありますが、それと同じくらい「反省と計画の配分」に注意しなくてはいけません。反省ばかりでは次への行動に繋がりませんし、計画ばかりではまた同じ失敗を繰り返すだけです。反省と計画のバランスは、その人の性格や精神状態によって変わってきます。ですから、マネージャーはフィードバックを通して、このバランスを整えてあげなくてはいけません。

このように、フィードバックをするときには、フィードバックを受ける本人が苦手としている部分について、話し合わなくてはいけません。このときに必要なのが、部下との信頼関係です。信頼関係が無ければ、フィードバックをしても受け取ってもらえず、改善に繋がりません。では、信頼関係を保ちながらフィードバックをするには、どうしたらいいのでしょうか?その答えとなるのが、「将来に焦点を当てること」です。フィードバックを始める前に、従業員が目標達成するための話し合いである事をしっかりと確認しておきましょう。そうすれば、悪いところについて話し合うときも、責められているのではないと理解できます。ですから、部下の目標達成の力になりたいというスタンスを心がけましょう。

フィードバック以外では、普段から部下の目指しているキャリアを聞くのも重要です。そのキャリアを実現するために自社ではどんなポストがあり、今後どんなポストが空きそうなのかを情報として提供しましょう。これによって、部下は未来の目標を立てやすくなり、その目標に向かっての話し合いとして、フィードバックをすることが出来ます。

個人よりもチームを評価する

従来のパフォーマンスマネジメントでは、個人の目標達成を追求するあまりに、周りを出し抜いて成果を上げようとする人が出てくるという話をしました。あまり実感がわかないかもしれませんが、ここでいう「周りを出し抜く」というのは、明確に相手を騙すようなものではなく、「自分が持っている有益な情報を周りに共有しない」、「成功した理由を聞かれたときに出し惜しみする」というような小さなものも含みます。そう考えてみると、少しは思い当たるところがあるのではないでしょうか。

そして、チームのメンバーそれぞれが有益な情報を隠しながら、チームで1番になるために企んでいるとしたら、そのチームでの居心地は良くなるでしょうか。そもそも、チームメイトを仲間として認識できないかもしれません。先にも述べたように、情報に格差があると、信頼関係を築けません。ですから、チームメイトが信頼し合える状態を作れているかどうかが、チームの生産性やエンゲージメントに大きな影響を及ぼします。

では、協力し合えるチームを作るためにどうすればいいのでしょうか?そこでおすすめするのが「チームを評価する」という施策です。もう少し詳しく説明すると、「個人での目標達成よりも、チームでの目標達成度を評価する」ということです。この施策を実行することで、チームの目標を達成するために自身の持つ情報を共有するようになります。この施策における重要なポイントは、決して「個人を評価しない」わけではないという点です。個人の目標達成度やチームへの貢献度はもちろん評価します。ただ、個人の目標達成をしていても、チームでの目標が達成されていなければ、大きな評価は得られません。そのときのフィードバックでは、どうしたらチームの目標達成を作れるかについて話し合います。そうすることで、個人の目標達成だけでなく、チームとしての目標達成の重要性が生まれ、チームにどう貢献するかを自然と考えるようになります。

これによって、チームとして目標達成を作るという土台が出来ましたが、このチームがより生産性高く機能し、より大きな達成を作るためには、5つの要素が必要となります。それが、「心理的安全性」「信頼性」「構造と明確さ」「仕事の重要性」「仕事のインパクト」です。これは、成功するチームに共通する要素としてGoogleが突き止めたものです。詳細はこちらの記事をご覧ください。

参考:「心理的安全性とは?Googleが注目した成功するチームの共通点」

パフォーマンスによる昇給をやめる

高いパフォーマンスを出したときにそれに見合った報酬が得られることは、とりわけ満足度を高める要素ではありません。ですが、見合った報酬を得られなかったときには、大きな不満足感を与えます。高いパフォーマンスを発揮する従業員が、報酬への不満から転職してしまうケースはよくあります。ですので、優秀な人材が出ていかないためにも、パフォーマンスに釣り合う報酬が得られる制度が必要です。

報酬決定において不満を生まれてしまう理由には、パフォーマンスに対して昇給で応じるからだとされています。なぜなら、断トツのパフォーマンスを出しても昇給率が周りとあまり変わらない、昇給を受けた後にパフォーマンスが下がっている従業員が継続して割高な給料をもらっている、と感じるからです。

これらの問題を解決するためには、基本給と成果給に関する認識を改める必要があります。そこで、基本給と成果給の使い方について確認していきましょう。基本給とは従業員それぞれの能力やスキルに応じて設定する給料です。もっと簡単にいうと、従業員それぞれの市場価値です。ですから、従業員の能力やスキルが上がったときには昇給しましょう。では、成果に対する報酬はどうするのかというと、ボーナスや表彰、学習機会を提供します。簡単にまとめると、「一度きりの報酬」です。

成果とは、とある期間の中でどれくらいの結果を出したかであり、前の期間にどれほど成果を出そうと、次の期間の成果はまた1から集計するはずです。ですから、とある期間の成果に対する報酬は、その期間が終わったときに一回で払い切りましょう。

まとめ

最新のパフォーマンスマネジメントが企業にもたらす効果は下記のとおりになります。

  • 従業員の帰属意識を高める。
  • チームでのコミュニケーションが活性化する。
  • 従業員の主体性が高まる。
  • 上司と部下の信頼関係が深まる。
  • 従業員の成長を促進する。
  • 従業員の仕事へのモチベーションを高める。

パフォーマンスマネジメントの目的は「部下や従業員の目標管理を通して、組織全体の目標達成を実現すること」だと紹介しました。実際に施策を導入する際は、企業の課題に対して効果的な施策を選ぶ必要があります。つまり、どの企業にも効果を発揮するパフォーマンスマネジメントというのは存在しません。ですから、自社の課題や問題をしっかり捉えたうえで、自社にベストな施策が何かを検討する必要があります。その際に、この記事が少しでも役に立ったならば幸いです。

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