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従業員満足度調査(ES調査)とは?やり方と設計に必要な6つのステップ

従業員満足度調査(ES調査)とは?やり方と設計に必要な6つのステップ

ES調査とは、Employee Satisfaction(従業員満足度)に対する調査のことです。Employee Satisfactionは、社員がどれだけ会社に満足しているのかを定量的に表す指標として、昨今注目を集めています。今回は、このES調査のやり方と設計方法を6つのステップでご紹介します。

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従業員満足度調査(ES調査)が重要視される理由

昨今の日本では、少子高齢化を原因とする生産労働人口の減少が大きな問題となっています。企業が競争力を維持していくためには、人材を確保し続けることが欠かせないため、人口減少の中でいかに人材を確保するかが企業存続とって重要な要因となっています。また、働き手の価値観と労働環境の多様化によって、企業と社員の関係はかつてよりも対等に近づいています。そこで、人材を確保したい企業は、「ワークライフバランス推進」「健康経営」「副業解禁」など、社員と良好な関係性を維持するための制度や施策を積極的に取り入れています。

企業が人材を確保するためには、「人材の採用」と「人材の定着」が必要です。この二つの要素の内、今回紹介するES調査が直接的に影響を及ぼすのは「人材の定着」です。人材の定着に影響を及ぼすものは、制度や施策だけではありません。キャリア形成や自己実現への見通し、仕事内容への納得、給与、人間関係、社会に対する仕事の価値なども関与します。人材の定着にはこれほど多くの要素が関与しているため、勘や予想で効果的な施策を打つことは困難です。かつては、優秀といわれる一部の経営者だけがこれを見抜き、施策を打ってきました。ですが、現在ではサーベイやアンケートを活用して、人材の定着を妨げている要因を数的に把握することが可能になっています。その「人材の定着を妨げている要因を数的に把握する手段」の一種が、今回紹介する『ES調査』です。

ES調査では、業務内容・職場環境・人間関係・モチベーション・ロイヤリティなど、社員に対して様々な切り口から質問を行います。そして、質問の回答結果を定量的な数値に直し、分析にかけていきます。この分析によって、組織の活性化度や職場環境の現状、社員が感じている組織の良い点と悪い点を浮き彫りにすることができます。

従業員満足度調査を行うメリット

では、ES調査を行うことで得られる具体的なメリットを詳しく見ていきます。ES調査によって得られる主なメリットは、以下の通りです。

客観的で定量的なデータの取得

ES調査は、社員が組織・職場・仕事に対して持っている満足度を、客観的かつ定量的に収集することができます。

社員目線で行う会社の現状把握

現場社員から見た組織の現状を把握できるため、人事などのバックオフィスと現場社員の間に生まれる課題感のギャップを防ぐことができます。

会社に対して意見できる機会の提供

ES調査は、匿名のアンケート形式で行うのが一般的です。匿名で行うことで、組織や仕事に対して意見することへの心理的な負担が下がります。これにより、対面や職場では言いづらいこともアンケートを通して意見してもらうことができます。

組織の課題抽出と根拠に基づく施策の検討

ES調査の結果を分析することで、組織の課題を抽出することができます。課題の根拠として調査データを用いることができるため、施策を打つときに協力を得やすくなります。

■施策の効果性を点検

施策を打つ前と後にES調査を実施することで、打ち出した施策の効果を確認することができます。

従業員満足度調査のやり方と設計方法

続いて、ES調査の基本的な設計とやり方について紹介していきます。一口にES調査と言っても、目的に応じて設計とやり方に違いが生じます。ですが、その基本的な流れは大きく変わりません。基本的な流れを把握したうえで、実施する際には自社の目的に合わせて調整することをお勧めします。では、ES調査の基本的な設計とやり方は、以下の通りです。

  1. 調査目的の設定
  2. 質問項目の設定
  3. 回答手段の検討
  4. 集計・分析
  5. 施策の検討
  6. フィードバック

では、それぞれについて解説していきます。

調査目的の設定

ES調査を設計するにあたって、まず初めに調査の目的を設定します。ES調査の目的を明確にしない場合、調査することが目的になってしまい調査結果が施策に活かされない、調査内容が施策の検証に適切でないものになることがあります。そういった“やるだけのES調査“にならないためにも、目的を明確にしておくことが重要です。ES調査は、組織の課題を見つけることや原因を分析することに強みを持つ調査です。ですので、一般的には組織が解決したい課題を目的として設定します。例えば、「離職率の改善」「施策の効果性の確認」「生産性の向上」「労働環境の改善」などです。

質問項目の設定

目的を設定したら、調査目的が達成されるように調査内容を具体的に決めていきます。調査内容とは、「調査項目」「設問」「回答形式」の3つを表しています。では、一つずつ解説していきます。

項目設定

調査項目は、調査の目的によって適切なものを設定していきます。例えば、「生産性の向上」を目的としていた場合には、下記のような項目を設定します。

  • ビジョンや企業理念の理解度
  • 仕事内容への満足度
  • 労働環境への満足度
  • 職場の人間関係への満足度
  • 上司のマネジメントへの満足度
  • キャリアプランに対する満足度
  • 社内育成の制度に対する満足度
  • 評価制度への満足度
  • 給与への満足度

ちなみに調査項目に「給与への満足度」を入れると、ほとんどの場合「給与への満足度」が他の項目よりも低くなると言われています。ですが、社員が満足するまで給与を上げるという施策は、ほとんどの企業にとって現実的ではないでしょう。そこで、「給与への満足度」は、あくまでも指標として項目に入れ、「給与と同じくらい満足度の低い項目があればその項目に注力する」など、比較対象として活用するのがおすすめです。もちろん、会計の許す範囲内で給与制度を改善していくことは重要です。

設問作り

ES調査の項目が決まったら、調査で使う設問を作っていきます。設問作りで注意すべきことは、量が膨大にならないことです。一度の機会にたくさんの情報を収集しようとすると、質問の量が膨大になってしまいます。過多な設問は、その分だけ回答時間を増やし、業務への圧迫や回答意欲の低下を招きかねません。そのため、回答時間が10分を超えない程度の設問数にすることをオススメします。

「10分では最低限のことも聞けないのでは?」と考える方もいるかもしれません。たしかに、10分のアンケートで課題とその原因を網羅的に調査するのは無理かもしれません。ですので、ES調査のようなアンケート形式の調査では、複数回のアンケートを通して課題と原因を突き止められるように設計します。先に記載した生産性向上の例で言うと、一回目の調査では、「仕事内容への満足度」や「労働環境への満足度」などの項目について聞くまでに留めます。そして、回答結果を見て調査した項目の中から最も重要と思われる項目を絞り込みます。二回目の調査では、絞り込んだ項目について詳しく聞いていき、課題を突き止めていきます。

このように、ES調査では回答者の負担を考慮して、設問の量と調査の回数を調整していくことがポイントとなります。

また、設問文は解釈の仕方が複数存在しないように作ります。誰が読んでも同じ理解になるように、助詞や修飾と被修飾の関係など、文法に気を付けて作ります。

設問文の例

(例)当てはまるものに〇をしてください。 1.任されているすべての仕事に満足していない。

上記の例の場合、「任されている仕事のうち、一部に不満がある」という解釈もできれば、「任されている仕事のうち、すべてに不満がある」という解釈もできてしまいます。

回答形式

設問を作ったら、設問の回答形式を決めていきます。回答形式は、大きく「選択回答形式」と「自由回答形式」に分けることができます。

自由記述形式は回答への心理的な抵抗を強めるため、一般的には選択形式を使います。選択形式では、4つか5つの選択肢を設けるのが一般的です。「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば当てはまらない」「当てはまらない」のように中間の選択肢を設け、はっきりと答えられない回答者とはっきりと答えられる回答者を区分します。

回答手段の決定

従業員満足度調査の設問と回答形式が決まったら、回答手段を決めていきます。従業員満足度調査を行う上では、回答数よりも回答率の方が重要な指標となります。回答率が低い場合、調査結果と現実の間に誤差が生じる可能性があります。

例えば、内容が全く同じのアンケートAとアンケートBがあるとします。アンケートAは1000人の対象者の内90%が回答し、アンケートBは2000人の対象者の内50%が回答しました。アンケートBの設問1に「はい」と答えた人が900人いた場合、この設問の支持率は90%となります。本来ならば、回答しなかった1000人の答えを知る由はありませんが、仮に回答しなかった1000人の設問1に対する支持率を調査できたとしましょう。調査の結果、未回答者の設問1への支持率が30%だった場合、アンケートBの結果では支持率90%でも、実際の支持率は60%((900+300)÷2000×100)となり、およそ30%の誤差が生じます。回答数で見ると、アンケートAは900回答、アンケートBは1000回答と、Bの方が優れています。ですが、アンケートの回答率が低い場合、調査結果に対する信憑性が落ちてしまいます。実際には、回答数を増やすことで実際との誤差を減らすこともできますが、統計学的な説明で長くなってしまうので、今回は割愛します。もし気になった方は下記を参照してください。

参考:「サンプル数や回答数よりも回収率が大事な理由」

回答率を高めるための工夫

アンケートの回答率を高めるためには、動機づけが重要です。

アンケートへの動機付けには、回答する社員に対して調査の背景や目的を説明するなどの取り組みが重要となります。唐突に調査を依頼された場合、社員は警戒心や煩わしさを抱きます。そういった感情がアンケートへの動機付けを阻害するため、依頼する際には、アンケートの目的・回答時間の目安・匿名で回答できることなどを共有すると良いと言われています。

集計と分析

アンケートの回答が終了したら、集計と分析の作業に入ります。調査する母集団が大きければ大きいほど、集計作業に多くの手間と時間がかかります。もし、調査の母集団が大きければ、人材系の企業が提供しているサービスを活用することで、回答後の集計を委託することも可能です。実施する規模によっては、作業量とコストのバランスを鑑みてアウトソーシングを選択するのもいいかもしれません。

データの集計方法には、様々な手法が存在します。今回は、その中でも一般的な集計方法である「単純集計」「クロス集計」「構造分析(相関係数化)」の3つを紹介します。

単純集計

単純集計とは、項目ごとの合計や平均値を出す方法で、主に全体の傾向を把握するのに適しています。例えば、設問1の満足度は60%、設問2の満足度は40%といった集計を項目ごとに出します。

単純集計

クロス集計

クロス集計とは、特定の条件設定を行い、条件ごとの傾向の違いを見る集計方法です。条件の例としては、「階層別」「男女別」「入社年数別」「国籍別」などがあります。クロス集計を行うことで、特定のグループの傾向を把握することができます。

クロス集計

構造分析

構造分析とは、設問間の相関関係や因果関係を導き出す分析のことです。主な構造分析としては、「アソシエーション分析」「相関分析」「回帰分析」があります。

アソシエーション分析

「設問1に満足と回答した社員が設問2に満足と答える確率は○○%である。」というように、事象の関連性と同時に発生する確率を分析する手法です。

相関分析

「仕事内容への満足度と人間関係への満足度の相関係数は○○.〇である。」というように、因果関係はともかく、事象に関連性があるか否かを分析する手法です。

回帰分析

「仕事内容への満足度と人事考課の点数は原因と結果の関係にあり、仕事内容への満足度が○○pt高まると人事考課の点数は□□pt高まる。」(単回帰の例)というように、原因と結果の関係を見出し、原因の変化から結果を予測する分析手法です。

具体的な分析方法については解説しませんが、これらの分析を活用することで、組織のボトルネックを見つけるヒントが得られます。

施策の検討

集計と分析を通して課題を見つけたら、課題を解決するための対策や施策を検討します。課題によって打つべき対策や施策は大きく異なりますが、一般的なものとしては「研修の実施」「社内教育の充実化」「人事制度と運用方法の見直し」「採用戦略の改善」「プロジェクトチームの発足」などが考えられます。調査の結果と分析を根拠にできるため、周りを巻き込んで課題の解決にあたることができます。

例えば、調査と分析の結果、バックオフィスの成果への満足度が特に低いことが判明したとします。この場合の施策としては、社員同士が働きを称賛し合う機会の創出や、ピアボーナスと呼ばれる社員同士が報酬を送り合うシステムの導入、評価制度と表彰制度の見直しなどが施策として考えられます。

フィードバック

調査結果の対策まで検討したら、経営層と従業員にフィードバックを行います。経営層や部門長と従業員とでは、立場や役割が異なるため、フィードバックの内容は変えて別々に行います。

経営層や部門長へのフィードバックでは、ES調査を行った結果見えてきた組織の長所や課題の報告と、課題に対する施策の提案を行います。長所の伸長と課題の克服によって業績がどのくらい好転するのか、そのために施策がどれだけ効果的なのかについて、説明資料などを使って提案していきます。このフィードバックによって施策を打つか否かに関わるため、やりかた④で行ったデータ分析の結果などを重点的に用い、課題の重大さを客観的に示すことがポイントとなります。

従業員へのフィードバックでは、ES調査を行って見えてきた組織の長所や課題の報告と、今後従業員に求められる動きを具体的に紹介します。施策を進めていくために、従業員にどんな協力をしてほしいのかを伝え、組織全体を巻き込んでいく機会としてフィードバックを行います。

一般的には、経営層へのフィードバックは先に、従業員へのフィードバックは後に行われます。いずれにしても、調査の実施後からフィードバックまではあまり期間を空けずに実施することをおすすめします。フィードバックまでの時間が空けば空くほど、社員の意識が変わり、調査の記憶も薄れます。それによって施策の実効性と効果性が下がることも考えられるため、可能な限りスピーディーにフィードバックを行うことが重要です。

まとめ

ES調査は、目的を意識して設計し、問題の原因を突き止め、原因に対する施策を設計し、実施することで初めて完結します。これからES調査をしていく、もしくは今行っているES調査を改善していくときには、6つのステップを参考にしてみてください。また、ES調査と似たようなも調査に、エンゲージメント調査があります。エンゲージメントとは、「社員が持つ組織への貢献意欲」のことです。エンゲージメント調査は、ES調査よりも組織改善に適していると言われており、昨今大きな注目を集めています。エンゲージメント調査も組織の課題を見つけるための調査ですので、組織の課題発見を目的としている場合には、ES調査と合わせて検討することをオススメします。

組織課題の分析を通してより良い組織を目指す全ての方に、この記事を通して少しでも役に立てたならば幸いです。

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