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キャリアアンカーの「8つの分類」から適職と組織に活かすポイントを紹介

キャリアアンカーの「8つの分類」から適職と組織に活かすポイントを紹介

キャリアアンカーとは、アメリカの組織心理学者であるエドガー・シャイン博士が提唱したキャリア理論です。「Anchor」とは「船の錨(いかり)」を意味し、個人がキャリアを選択するときの軸となる、最も重要度の高い価値観や欲求を表しています。今回は、そんなキャリアアンカーの概要や必要性、8つの分類とその詳細についてご紹介します。

キャリアアンカーとは

キャリアアンカーは、マサチューセッツ工科大学の組織心理学者であるエドガー・シャイン博士が提唱したキャリア理論です。仕事をする上でこれだけは譲れないというような価値観や欲求のことを表します。アンカー(Anchor)とは「船の錨」の意味であり、本来の錨の役割は、船を水上の一か所に留めておくだけでなく、船を急旋回させる、スピードを落とす、といった用途にも使われ、かじ取りの要とも言われています。つまり、キャリアアンカーとは、社会人生活という長い航海を沈没することなく渡り続けるための要という意味を持っています。そんな人生の要となるキャリアアンカーは、長い年月を経て構築されるものであり、完成までに時間がかかる分、一度形成されたキャリアアンカーは周りの環境や状況、自身の年齢が変化したとしても、変わらずにキャリアの軸であり続けると言われています。

キャリアアンカーを見極めることで得られる効果

では、そんなキャリアアンカーが注目されているのはなぜでしょうか?その点を理解していただくために、従業員のキャリアアンカーを見極めることで得られる効果についてご紹介します。

個人が得られる効果

従業員のキャリアアンカーを見極めることで得られるものは、2つあると言われています。その2つとは、従業員の「継続的なモチベーション」と「高い生産性」です。例えば、誰かに命令や指示をされることなく、自分でやり方を考えて実行するような働き方を最重要の価値観としているAさんがいたとします。しかし、今Aさんがしている仕事はマニュアル通りに進めることが絶対であり、結果がどうであれマニュアルに沿っていなければ評価されない仕事だったとしたらどうでしょうか。おそらくAさんは仕事へのモチベーションが上がらず、もちろん成果も挙げられず、そのうち転職先を探すのではないでしょうか。また、自身のキャリアアンカーが明確になっている学生や社会人は、志望する企業とマッチしていることをアピールすることができます。

企業が得られる効果

企業の人事は、従業員のキャリアアンカーを理解することで適切な採用と配置を考えることができるようになります。また、採用の際にはキャリアアンカーに注目することで採用のミスマッチを防ぐことができます。

キャリアアンカーと実際の働き方がミスマッチを起こすと、従業員にとっても企業にとっても、好ましくない結果をもたらします。これらのミスマッチを予防し、生産性を高めるために、キャリアアンカーは注目を集めているのです。

キャリアアンカーの特徴

人がキャリアについて考えるとき、2つの方法があると言われています。一つは、自身に対して「何(What)」を問う方法です。つまり、「何がしたいか」「何がしたくないか」「何が好きか」「何が嫌いか」「何が得意か」「何が苦手か」といったような自己分析をして、自身のキャリアを見定めようとする方法です。

そしてもう一つが、自身に対して「どんな(How)」を問う方法です。「どんな風に働きたいか」「どんな生活を送りたいか」「どんな人生にしたいか」といった自己分析から、自身のキャリアを見定める方法です。キャリアアンカーは、この2つの方法のうちの「どんな(How)」について、8つの価値観に分類して定義したものです。その8つの価値観とは下記の通りです。

  • 管理能力(Managerial competence)
  • 技術的・機能的能力(Technical/functional competence)
  • 安全性(Security/stability)
  • 創造性(Entrepreneurial creativity)
  • 自律と独立(Autonomy/independence)
  • 奉仕・社会献身(Service/dedication to a cause)
  • 純粋な挑戦(Pure challenge)
  • ワーク・ライフバランス(Lifestyle)

キャリアアンカーにおける8つの分類と適職

このように、キャリアアンカーには8つの分類があります。では、これよりその8つのキャリアアンカーの詳細と、それぞれのキャリアアンカーを持つ人がどんな傾向にあるのかを一つずつ紹介していきます。

管理能力(Managerial competence)

管理能力をキャリアアンカーとする人は、簡単に言うと管理職に就くのが自分にとって最善だと考える人です。このタイプの人は、問題解決やマネジメント、人の世話をするのが好きな傾向にあり、責任を負うことで成長します。

技術的・機能的能力(Technical/functional competence)

技術的・機能的能力をキャリアアンカーとする人は、何かの分野で秀でること、権威になること、エキスパート(専門職)になることを好みます。一つの分野において新たな課題を見つけては挑戦をし続けることで成長していき、他の人よりも正確かつ生産性高く仕事を進めます。

安全性(Security/stability)

安全性をキャリアアンカーとする人は、生活においてもっとも重要な要素は「継続性」と「安全性」だと考えます。また、できる限りリスクを回避しようと考え、転職やキャリアチェンジには保守的で、社会人生活を一つの企業で全うする人が多いのもこのタイプです。

創造性(Entrepreneurial creativity)

創造性をキャリアアンカーとする人は、発明やクリエイティブな仕事、新しい事業の創造を好みます。我城を築くことにはあまり興味がなく、管理や運営は他の人にまかせる傾向にあります。

自律と独立(Autonomy/independence)

自律と独立をキャリアアンカーとする人は、自分で決めたやり方で仕事を進めることが好きな傾向にあります。そして、周りからの動機付けがなくとも自走することが得意な人が多いようです。基準や規律、場の空気に従うことは嫌いであり、一人で仕事をするのが好きです。士業や研究職、フリーランスに向いています。

奉仕・社会献身(Service/dedication to a cause)

奉仕・社会献身をキャリアアンカーとする人は、自身の能力を発揮することよりも、いかに人の役に立つかに動機付けされます。サービス業界やHR業界を目指す人にはこの傾向が強いようです。

純粋な挑戦(Pure challenge)

純粋な挑戦をキャリアアンカーとする人は、全力で挑める困難な問題とそこから得られる刺激をこよなく愛します。そのため、今の仕事ができるようになると次の仕事を探す傾向にあり、一貫性のない多様なキャリアを積む可能性があります。

ワーク・ライフバランス(Lifestyle)

ワーク・ライフバランスをキャリアアンカーとする人は、自身の中で確立した生活スタイルに合わせて仕事を選ぶ傾向にあります。時には仕事よりも私生活を重視するため、長期休暇を取って旅行をするなど、ご褒美の時間を設けます。

キャリアアンカー診断

自身のキャリアアンカーを探すとき、自身の趣向や過去を振り返ることも重要ですが、アンケート形式のテストで自身のキャリアアンカーを探すこともできます。診断の結果を鵜呑みにするのではなく、「なぜ、この結果になったのか」「診断結果の証拠となるようなエピソードはあったか」を考えることで、よりキャリアアンカーを見つけやすくなります。

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まとめ

これまで、キャリアアンカーの概要と効果、特徴、8つの分類について見てきました。働き方改革が本格的していく中で、従業員の働き方は多様化し、職の専門性はますます細分化と深化を続けています。このような現状のなかで、就活生も転職者もそれぞれに理想とする働き方を描いています。そんな人材を採用し、育成し、配置する人事には、組織の要求と帳尻をつけながらも、それぞれの人材が持つ働き方に関する要求にできる限り応じることが求められます。もしこれから、自社の人材がどんなキャリアアンカーを持っているのかを見極めようとお思いでしたら、ぜひこの記事が参考にしてみてください。

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