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アンドラゴジーとは?成人学習における5つの観点とペタゴジーとの違い

アンドラゴジーとは?成人学習における5つの観点とペタゴジーとの違い

アンドラゴジーとは、自己主導的な学習を用いた成人学習理論のことです。昨今、リカレント教育や生涯教育、学び直しといった言葉をよく耳にしますが、今日本だけでなく、世界的に学校教育を終えた成人に再び学習する期間を設ける必要性が高まっています。そこで今回は、成人学習理論であるアンドラゴジーの概要と歴史、そして成人学習における5つの観点を子供教育を表すペタゴジーと比較しながらご紹介します。

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アンドラゴジーとは

アンドラゴジー(Andoragogy)とは、ギリシャ語で成人を意味する「aner」と指導を意味する「agogus」を組み合わせた造語です。「成人学習」ではなく「成人教育」と訳されることもありますが、一般的にはアメリカの成人教育の理論家であるマルカム・ノールズが体系化した自己主導的な学習による成人学習理論を指す言葉として使われています。ノールズが発展させたアンドラゴジーでは、「自己概念」「学習経験」「レディネス」「方向付け」「動機付け」という5つの観点から教育を見ると、子供教育と成人教育には大きな違いがあることが述べられています。そして、その違いを意識することで、よりよい成人教育の設計に役立つとして注目されています。ただし現代では、アンドラゴジーを子供教育に応用することで学習を促進できるケースも認められています。そのため、アンドラゴジーを子供教育学の対となる成人学習理論として捉えるのではなく、独立した一教育手法として捉え、活用していこうという動きがあります。

アンドラゴジーの歴史

そんなアンドラゴジーという言葉の始まりは、19世紀前半のドイツにあります。当時ドイツで教師をしていたアレクサンダー・カップ氏が、自身が受け持っていた成人学生への教育方法について述べる際に使ったと言われています。それ以来、このアンドラゴジーという言葉は、一般世間の認知を得られないまま1世紀以上を過ごしますが、1958年にドイツ人のフランツ・ペゲラー教授が書いた『アンドラゴジー入門‐成人教育の基本問題』という本によって、ヨーロッパで広く認知されるようになります。

そしてその後、このアンドラゴジーという言葉が教育に関する自身の構想を表現するのにぴったりだとして、マルカム・ノールズ氏に引用されます。そして、アメリカでアンドラゴジーという語を使って論文や本を書き、成人教育における概念として発展させていきました。そんなノールズの著書である「成人教育の現代的実践―ベダゴジーからアンドラゴジーへ」は、当時の教育関係者たちの間で大きな議論を生み、有名になりました。

ペタゴジーとは?

アンドラゴジーと対の概念としてよく使われる言葉に「ペタゴジー」があります。ペタゴジーとは、アンドラゴジーと同じようにギリシャ語が基になっており、子どもを意味する「paid」と指導を意味する「agogus」を組み合わせた造語です。現代では、子どもを対象とした教育学を意味する言葉として使われています。

アンドラゴジーとペタゴジーとの違い

アンドラゴジーは大人を対象としており、主体的で能動的な学びが特徴です。一方でペタゴジーは子どもを対象としているため、他者から教わることで習得していく受動的な学びが特徴です。アンドラゴジーとペタゴジーの内容的な違いについては、下記より詳しく説明していきます。

アンドラゴジーの5つの特徴

先ほどにも少し紹介したように、アンドラゴジーは「自己概念」「学習経験」「レディネス」「活用までのブランク」「方向付け」という5つの観点から、成人教育の前提について述べたものです。では、この5つの観点に関してどのような前提を置いているのかについて、ペタゴジーと比較しながら見ていきます。

自己概念

自己概念とは、「自分がどんな人間であるか?」という問いかけに対して、自身が持っている考えのことを言います。そして、人は成長するにつれて「自分のことは自分で管理できる」という自己概念が強まっていくと言われています。つまり成人の場合、教育者が一方的に情報を発信するだけの教育や、教育者が作り上げたものをただ受けるだけの教育では、学習者の持つ「自分のことは自分で管理できる」という自己概念との間に抵抗感を生む可能性があることを示しています。ですので、成人学習の場合は、学習者が主導だということを認識してもらえるように設計していく必要があります

一方でペタゴジーの場合は、「自分のことは自分で管理できる」という自己概念が弱く、より依存的な学習者を前提に置いています。そのため、一般的な学校教育では受動的な学習が一般的となっています。ただ、このような学校教育の現状を改善していくような動きも現在では見られています。

経験

生きた年数が長ければ長いほど、それと比例して人生の経験値は大きくなっていきます。そのため成人教育では、それぞれが獲得してきた経験があることを前提に置き、それらを利用することで学習をより効果的にできるとしています。例えば、新しく学んだ法則に当てはまる過去の体験を思い出してもらい、それをグループ内で共有してもらうなどの学習方法が挙げられます。

一方でペタゴジーの場合は、それぞれが持つ経験の量が少ないため、経験の活用にはあまり価値がないとしています。

レディネス

レディネスとは、何かを学習する際に必要となる条件や、心身の準備、環境などが整っており、学習の準備ができている状態を表す言葉です。そして、アンドラゴジーのレディネスでは、社会的な役割、つまり職業や役職、職位にフォーカスして学習者の課題を捉えることがポイントになります。

例えば、マネージャーに昇進した人には、「マネジメントを基本から学ぶ」という課題が生まれるため、新たにマネージャーに昇進した人たちでグルーピングをすることで、アンドラゴジーにおけるレディネスを生むことができます。

一方でペタゴジーの場合は、年齢やカリキュラムにフォーカスすることがポイントになります。心身の成長は個人によって多少の差がありますが、年齢によってある程度同じ成長度のグループを構成できすることができます。また、足し算ができた子をグルーピングして引き算を教えるといったように、カリキュラムにフォーカスしたグルーピングも有効だとされています。

方向付け

方向付けとは、「なんのために学習するのか」という学習の目的に関する観点です。成人学習の場合は、学んだ知識やスキルを活用・応用することで、直近の課題を解決することを目的とする学習者が多くなります。そのため、アンドラゴジーでは学習者の目的をしっかりと捉え、そこから逆算して学習を設計することが重要なポイントとなります。

一方でペタゴジーの場合は、「教材の内容を理解する」「テストでいい点を取る」といったことが主な目的であり、教科にもよりますが、実際の生活での活用は目的にあまり含まれていません。

動機付け

アンドラゴジーでは、「成人の学習者は、外発的動機よりも内発的動機に基づいている」という前提を置いています。内発的動機付けとは、興味・関心・趣向・願望といった人の内側にあるものによる動機付けのことです。また、外発的動機付けとは、お金や報酬、罰則、叱責といったアメとムチによる動機のことです。成人学習者は、この内発的動機によって学習に参加することが多いと言われています。

一方でペタゴジーの場合は、「テストでいい点を取って親にほめられる」ことや、「先生や親に叱られない」ことといった、外発的動機から学習に参加することが多いと言われています。

まとめ

アンドラゴジーは、成人の学習を設計する際の指針として、重要なポイントを示してくれます。また、成人だけでなく、子供教育にアンドラゴジーを活用したことで、教育が促進されたという事例も挙がっており、対象が子供であっても有効なケースもあります。ですので、アンドラゴジーは教育を設計するフレームワークの一種として、対象が成人か否かに関わらず活用することができます。

これから、企業研修やセミナーなどの成人向けの学習を設計する方がいましたら、アンドラゴジーを活用してみてはいかがでしょうか?教育に携わるすべての方に、この記事を通して少しでも貢献できたならば幸いです。

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