タイムマネジメントとは、限られた時間での業務の生産性を高め、高い成果を実現するためのスキルです。タイムマネジメントは、新入社員からベテラン社員まで全てのビジネスパーソンに必須なスキルとも言われ、注目されています。今回は、タイムマネジメントの基本となる考え方から実践手法、実践する上でのポイントやコツまでを一通り紹介していきます。
タイムマネジメントとは?組織全体の生産性を上げる4つの方法
タイムマネジメントとは
タイムマネジメントとは「効率的な時間の使い方を計画し、実行すること」を意味します。組織や個人が求める目標を達成するためには、限られた時間を有効活用する能力が求められます。そのため、「時間あたりの生産性を向上させること」がタイムマネジメントの目的とも言えます。
時間あたりの生産性が向上するとは、
- 1時間あたりで10の成果を作っていたのが、時間あたりで30の成果を作れるようになった。
- 1時間あたりで10の成果を作っていたのが、30分あたりで10の成果を作れるようになった。 といったものです。
例えば、1日のスケジュールを確認した時にお客様や社内の人間との会議が入っているとします。会議の前に準備の時間を入れるときと、入れないときとではどのような違いが生まれるでしょうか。準備をしっかりしたことで会議がスムーズに進み、結果的に会議の時間を短縮できることで追加の依頼を受けられる可能性も広がります。逆に準備をしっかりできなかったことで会議が思うように進まず、次回に繰り越してしまうなど、結果的に多くの時間を要してしまうこともあります。
このように、時間あたりの生産性を向上させるために自分がやるべきことを事前に把握し、やるべきことに期限を切り、終えられるように計画を立て、実行することをタイムマネジメントと言います。
タイムマネジメントが求められる背景
タイムマネジメントが求められる背景には、国内における労働人口の減少が大きく影響しています。総務省が発表した2018年の労働力調査では、労働人口は6,664万人と記載されています。そして、2060年には労働人口が約4,500万人になると予想されています。そのほか、企業の競争力強化も求められています。今後、海外企業の技術がますます発展することで、市場競争の更なる激化が予想されます。労働人口が減少するなかで、今までの品質を維持しながら競争環境を勝ち進んでいく人材を育成するためには、組織全体の生産性を向上させることが求められているのです。組織全体の生産性を向上するためには、一人ひとりの時間を最大限に有効活用するタイムマネジメントの強化が効果的です。また、働き方改革における長時間労働の改善にもタイムマネジメントは関わりが深いテーマです。
タイムマネジメント=スケジュール管理ではない
すでにタイムマネジメントをできている人は理解しているかもしれませんが、タイムマネジメント=スケジュール管理ではありません。タイムマネジメントには「行動管理(アポイント管理、タスク管理)」「優先順位付け」「目標設定」「振り返り」が含まれるのに対し、スケジュール管理は「アポイント管理」だけのことを指しています。
スケジュール管理は、「何月何日に誰とどこで会う」などを管理することであり、これはこれで重要なものです。ですが、スケジュール管理だけでは時間あたりの生産性向上には繋がりません。スケジュール管理のほかに、時間の使い方を計画し、そして実行するところまでしてはじめて、タイムマネジメントしていると言うことができます。
タイムマネジメントするメリット
タイムマネジメントをしていくことは、組織や個人にとって大きなメリットがあります。一見すると仕事でのみ使われるスキルのように思えますが、実は仕事の領域を超えて、プライベートや毎日の自分の精神状態にまで影響が及んでいきます。では、どのような影響があるかを確認していきましょう。
重要度の高いタスクをこなし、仕事が効率化
時間と行動管理をする際には、作業やタスクに優先順位を付けていくことで、どれが重要でどれが重要でないかを事前に確認することができます。単に目の前にあるタスクから取り組むよりも、目標達成において効果的なタスクを把握し実行することで、同じ時間を費やしたとしても成果が上がりやすくなっていきます。
残業時間が減り、様々なコストカット
残業時間が減ることで削減されるのは、人件費だけではありません。残業時間に費やされる電気代などの水道光熱費まで削減することができます。そのほか、残業時間が減ることで従業員の満足度があがり、離職率の低下が期待できますので、採用や新人研修などのコストカットが見込めます。
仕事とプライベートがうまく両立される
仕事とプライベートが上手く両立できない要因の一つに、「残業の常態化」があるのではないでしょうか。定められた時間の中で計画通りに仕事をしていく、さらには計画通りに進むように常に行動を改善することで、定時での退勤が可能となり、仕事後の時間も有効活用できるようになります。新しいことを始めてみたり、興味のある勉強をしてみたり、家族と過ごす時間が増えることで、人生がより楽しくなっていきます。
精神的な余裕や充実感が生まれる
計画的に物事を進めていくことで自分自身の中に先の見通しが持てるようになり、それが結果的に安心感や精神的な余裕をもたらしてくれます。また、自分が計画した通りに進んで目標達成した際には、達成感が得られ、仕事への楽しみも増えるため、日々の充実感も更に増していきます。
タイムマネジメントの方法やポイント
タイムマネジメントには4つの抑えておきたい方法とポイントがあります。それは「行動管理(アポイント管理、タスク管理)」「優先順位付け」「目標設定」「振り返り」です。順々に解説します。
「行動管理」
行動管理の重要なポイントは重要度の高いタスク、目標達成に効果的なタスクから時間を使い始め、限りある時間の大半をここに使うことです。
組織や個人が抱えている仕事を片付ける、組織や個人の目標を達成するには何をする必要があるのか、何をすべきなのかを最初に全て洗い出します。何をするかのタスクを明確に把握することで、人はいち早く動き出すことができますが、そもそもタスクを把握しきれていない場合は「何から始めたら良いのだろう」と行動を躊躇したり、思い付きで発生したタスクから始めることになります。
慣れないうちはタスクを一度箇条書きにして検討してみるのがオススメです。箇条書きしたタスクの中から優先順位付けをしていきます。
「優先順位付け」
タスクを一通り把握したところでそれぞれに優先順位付けをします。優先順位付けをする際には緊急度と重要度のマトリックスに分けて考えます。縦軸に緊急度、横軸に重要度を置きます。
緊急度と重要度の高い第一象限、緊急度は低いが重要度の高い第二象限、緊急度は高いが重要度の低い第三象限、緊急度と重要度の低い第四象限と設定します。それぞれの枠に箇条書きしたタスクを振り分けていきます。
行動管理の最初でもお伝えしましたが、重要なポイントは重要度の高いタスクから集中して取り組むことです。また重要度の低いタスクに関しては優先順位は低く、あまり時間を使わないことです。生産性の低い人は第一象限のあとに第三象限の対応に時間を使いがちですが、第三象限はやらないと決めて、第一象限と第二象限のタスクを実行するだけでも生産性は大きく改善されます。
「目標設定」
重要度の高いタスクを決めたところで、そのタスクに対して目標設定をします。
タイムマネジメントの目的は時間あたりの生産性を向上させることですので、重要度の高いタスクを「どのレベルで」「いつまでに」処理するのかを設定することが重要なポイントです。目標は数値化できるものにします。例えば「契約をもらう」「書類を作る」と漠然とした目標よりは「今日中に見込み客のアポイントを3名取る」「明日までに5名分の書類を作る」など、数値を入れることで目標に具体性が増します。目標は具体的であればあるほど改善もしやすくなります。
目標設定をしたら更に細分化し、細かなアクションプランまで落とし込みます。「何時までにどのレベルまで進めるのか」これを1ヶ月、1週間、1日、1時間単位まで時間軸を作って落とし込んでいきます。
例えば「1ヶ月で10件の受注を取る」とします。自分のプレゼン成約率が5回に1件決まるとしたら、「1ヶ月で50件の商談」が必要になります。
1件の商談を取るために10件営業電話をしていたら、「1ヶ月で500件の営業電話」が必要になります。
1ヶ月で500件の営業電話をかけるための1ヶ月の稼働日数が8時間x20日=160時間とすると、「1時間あたり3.125件電話」が必要になります。
1時間あたり約3〜4件電話の他にもアポイントや会議の準備時間、アポイントや会議の時間、事務手続き時間などがこちらに加わってきます。そのため実際には1時間あたりの電話数はもう少し増えていきます。アクションプランと時間軸をここまで落とし込むことでより実践的なタイムマネジメントになります。
「振り返り」
行動管理、優先順位付け、目標設定をし実行したところで振り返りを行います。タイムマネジメントは一度計画を作成して実行したら終わりと言ったものではありません。
振り返りは運用してみて状況が計画通りに進んでいるか?目標に向かっているか?このまま進んで問題ないかなどを行います。これも1ヶ月、1週間、1日単位で時間を取ります。1ヶ月分、1週間分は30分~1時間程度、1日分は10分~30分程度の目安で時間を確保しましょう。
ポイントは、今の時間の使い方やアクションプランで重要なタスクを期日までに終えられるかどうか考えることです。もし現状のままでは目標が達成できない場合、そのプランには軌道修正が必要になります。また、軌道修正が必要とわかった段階で、周りやチームのメンバーへ課題となっている点について相談することもできるようになります。もし振り返りを行わない場合、軌道修正が必要なことに早い段階で気付くことができません。その結果、期限が迫ったときに自分の精神状態が不安定になり、周りへ迷惑をかけるリスクも増していきます。振り返りの時間を取り、改善を通して生産性を向上させることがタイムマネジメントの成功の秘訣なのです。
究極のタイムマネジメント
ここまで、組織全体の生産性を上げるタイムマネジメントの方法やポイントをお伝えしてきましたが、更に生産性を向上させる究極のタイムマネジメントがあります。それは「他人の力を活用すること」です。
他人の力を活用したときと、活用しなかったときでどのような違いが生まれるでしょうか。他人の力を活用したときは、自分の力の限界を超えて生産性を向上させることができます。一人で取り組むよりも二人で取り組むことで、効率が上がったり、成果物のクオリティが上がったり、自分一人では思いつかないようなアイディアが見つかったりする事もあります。そうすると、結果的に想像を超えるような成果を実現できる可能性が広がります。逆に他人の力を活用しなかったときは、自分の力を最大限発揮したとしても一人分の成果で留まったり、自分一人の思考の枠組みから抜け出せずに、より大きな実績をあげることはできません。
他人の力を活用できる人になる
他人の力を活用するには、「この人の為なら力になりたい」と思われる人間になる必要があります。足を引っ張る人や、他人のことをぞんざいに扱う人は、周りの人の力を借りられない傾向にあります。一方で、他人が完了させたいタスクや達成したい目標の支援を常日頃からしている人、他人のことを励ますことのできる人は、周りからも力を貸してもらいやすくなります。日本人は遠慮をすることが美徳になっていた時代があるため、今でも「簡単に他人へ仕事を頼むなんてできない、申し訳ない」と感じる人が多いようです。ですが、普段から積極的に誰かの手伝いを申し出るなど、先に与える精神を持っていれば、いざという時に相手から力を借りることができるでしょう。自分の周りにいる人達への日頃の関わり次第で、時間あたりの生産性を何倍にも向上させることができます。
他人の力を活用することによって、自分がやる必要のないタスクや自分にはできないタスク、大きなタスク、重要なタスクなどを整理・コントロールして、こなしていくことが『究極のタイムマネジメント』です。
まとめ
タイムマネジメントは、意識的に取り組み続けることで、誰にでも身につけることができる生産性向上スキルです。新入社員からベテラン社員まで全員が取り組むことで、組織全体の生産性を上げることができます。タイムマネジメントスキルを組織全体で磨きあげることで、組織の生産性だけでなく、従業員の成長度合や満足度まで上がるように、この記事を通して少しでもお役に立てたのであれば幸いです。
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