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レジリエンスとは?意味と効果、高めるために欠かせない6つの要素を紹介

レジリエンスとは?意味と効果、高めるために欠かせない6つの要素を紹介

ストレス社会と言われる現代において、「レジリエンス」は心身ともに健康を保ち仕事で成果を出すために必要な要素として注目され続けています。今回は、そんなレジリエンスについての基本とレジリエンスによってもたらされる効果、またレジリエンスを高める要素をご紹介します。

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レジリエンスとは

レジリエンス(resilience)とは、「回復力」や「弾力性(しなやかさ)」を意味する英単語です。レジリエンスが高い人を「レジリエントな人」と呼びますが、そのような人物は困難な問題や危機的な状況に直面してもすぐに立ち直り、適応していくことができます。

「レジリエンス」とは元々、工学や物理学の世界で使われていた言葉です。物質や物体に対して外力が加わると変形します。そのときにどれくらいその力を吸収できるか、また、どれくらいその力を取り除いて元の形に戻ろうとすることができるか、この一連のやり取りに関係するのが物質や物体の持つ「レジリエンス」です。レジリエンスはその後、自然や動物の生態環境学や、人間の社会環境システム、そして心理学でも使われる言葉となりました。経済的なレジリエンス、都市国家のレジリエンス、そして心理学的レジリエンスなどです。いずれの分野においてもレジリエンスは、変形から元の形に戻ろうとする「弾力性」、変化や変動に対する反応としての「復元力」や「回復力」という意味で使われています。

今回テーマとする心理的レジリエンス(psychological resilience)には、実のところ一貫した定義がありません。アメリカのシンクタンクであるランド研究所によると、レジリエンスの定義は122個あるとも言われています。ですが、その中でも最も広く使われている定義では、「逆境に対する反応としての精神的回復力や自然的治癒力」「ストレスや逆境にさらされても適応し、自分の目標を達成するために再起する力」と表現されています。

レジリエンスに関する研究の推移

初期のレジリエンスの研究では、逆境体験や精神疾患といったネガティブな出来事(危険因子)が人生に及ぼすであろう悪影響に注目していました。しかしそんな常識を覆して、健常な成人を対象としたレジリエンス研究が始められました。それがハーバード大学医学部によって1938年から続けている「発達に関するハーバード研究(通称「グラント研究」)」です。グラント研究で対象となったハーバード大学の学生達の中から、その後の人生において、心身共に健全な状態で長生きした者、仕事で成功を収めた者など特定していったところ、健常者や成功者には、いずれも高いレジリエンスが確認されました。この研究をきっかけに、以前のようにネガティブな出来事の影響を研究するのではなく、レジリエンスがもたらすポジティブな影響やレジリエンスを高める方法へと研究内容がシフトして行きました。

レジリエンスが注目されている理由

レジリエンスがビジネスの世界でも注目を集めるようになったきっかけは、2013年の世界経済フォーラム(ダボス会議)のメインテーマが「レジリエント・ダイナミズム」であったことです。ダボス会議でレジリエンスがメインテーマとなった背景には、世界経済が様々なリスクに晒される中で成長を続けるためには、リスクに対して柔軟にかつ迅速に対応するレジリエンスが不可欠であると考えられたためです。

そして今、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにより、グローバル経済は重大な危機に直面しています。この難局を乗り越えるためには企業としてのレジリエンスを高め、起こり得る将来のシナリオを幅広く検討し、市場での優位性を獲得するために的確な選択をして改善し続けることが重要です。また企業や組織としてレジリエンスを高めることはもちろん、そこで働く社員一人一人のレジリエンスを高めていくこともとても重要です。

レジリエンスの効果

では、レジリエンスが高めることによる効果にはどのようなものがあるのでしょうか?レジリエンスを高めることで得られる具体的な効果には以下のものがあります。

  • 集中力、活力高く働くことができる
  • パフォーマンスを高めることができる
  • より創造的、かつ包括的に問題解決ができる
  • 限られたリソースを最大限に活用できる
  • ストレスに効果的な対処ができる
  • 他人や周囲の状況に対して効果的に働きかけることができる
  • リスクを特定し、対応する能力を高めることができる
  • 相手の拒否反応や、ネガティブな出来事に上手く対処できる
  • 営業能力を高めることができる
  • 部下の育成能力やマネジメント能力を高めることができる
  • (児童の場合)問題行動が減少する

レジリエンスが高い人の特徴

ここまでレジリエンスの意味や研究、社会背景を見てきました。それでは、レジリエンスが高い人にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

精神面

まず精神面から見ると、レジリエンスが高い人は自己肯定感が高いことが明らかになっています。自己肯定感とは、「自分の可能性を信じ、自分はできるんだという自信をもち、肯定的に自己を認識すること」(こころの問題事典, 平凡社, 2013)と定義されています。自己肯定感が高い人は困難に陥ってもそれを跳ね除け、その状況から抜け出すことができるだけの頑強な心を持っています。

行動面

レジリエンスな人は、以下のような行動を取ることが多いと言われています。

  • 危機的な状況下で、迅速に状況を判断し効果的な対応をする。
  • 他人と自分を比較して、自分を卑下しない。
  • 自分にとってハードルの高い仕事を命じられた時に恐れずにチャレンジする。
  • 何らかの使命感を持って行動している。

「自分を卑下しない」「恐れずに挑戦する」という行動は、自己肯定感によるプラスの影響と考えられます。失敗から学び、成功体験へ繋げることができます。

習慣面

レジリエンスな状態をキープしている人は、健康的な生活習慣やリラクゼーションを取り入れています。以下のような習慣が身についている人が多いです。

  • 喫煙をしない
  • 飲酒は適量※に留める
  • 1日7~8時間の睡眠をとる
  • ウォーキングやジョギングなどの定期的な有酸素運動をする
  • 栄養バランスのよい食事を摂る

※通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、1日平均純アルコールで20g程度が適量とされています。20gとは大体「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当します(厚生労働省, 飲酒のガイドライン)。

リラクゼーションの方法については、人それぞれ異なりますので自分に合った方法を習慣にすることが大切です。例えば、好きな音楽を聴く、アロマテラピーを楽しむ、読書をする、絵を描く、犬と散歩をするなど、気になるものがあれば試してみてください。

レジリエンスが低い人の特徴

一方でレジリエンスが低い人にはどのような特徴が見られるのかも確認してみましょう。

精神面

まず精神面では、自己肯定感が低い傾向にありますので試練にぶつかった時に逆境から這い上がるだけのポジティブな気持ちの切り替えをするができず、不安や緊張、落ち込みが強くなります。

行動面

ネガティブな側面に注目しやすいため、自ら主体的に新しい仕事や役割に挑戦することが少ないです。自分にも相手にも厳しい一面もあり、悩み事を一人で抱え込みやすいでしょう。

習慣面

仕事での悩みや不安をずっと引きずってしまい、健康的な生活習慣が乱されてしまう人もいます。食事のバランスや十分な睡眠時間を確保できないことによって、疲労が蓄積しやすく仕事でのミスが重なるといった悪循環ができてしまいます。

レジリエンスと個人差

同じような困難に直面していても、ピンチをチャンスに変えて人生の成功を掴む人もいれば、ピンチをピンチとも思わずに乗り越えられる人、ピンチが生む不安や緊張に潰されてしまう人など、その捉え方や反応の仕方は人によって様々です。悲惨な幼少期を送った人には悲惨な人生が待っているのであろうという大方の予想に反して、幼少期との因果関係がほとんど見当たらないほど、その後の人生を見事に開花させて幸せに生きている人もいます。

こうした逆境に対する反応の違いは偶然に起きるものではなく、科学的な理論や法則性に基づいていることが、レジリエンスに関する研究によって徐々に解ってきました。そういったレジリエンスの個人差の仕組みを表したのが、以下の図です。

「ストレッサー」とは、ストレスとなる要因のことで、物理的・精神的・社会的な要因などがあります。また、ストレスというとネガティブなものを想像するかもしれませんが、「突然宝くじに当たった」など、予期しない幸運が舞い込んで来るといったポジティブな出来事も含まれます。あらゆる感情は、特定の出来事に対する解釈や評価から生じます。あるストレッサーが加わってストレスが生じるまでには、「一体何が起きているのだろう?」と自分にストレスを引き起こした出来事に対しての解釈や評価が存在します。

文脈依存」というのは、感情が文脈(その感情を引き起こすきっかけとなった出来事)に対する解釈や評価の内容と連動しているという意味です。文脈と感情を特定する機能とが上手くかみ合わさったときに、人々はストレスを感じ、そのストレスフルな状況を経験することで、私たちは適応する力を伸ばすことができます。一連の心理的プロセスにおいて個人差があるのは、「文脈依存」の段階と、「思考―行動レパートリー」の段階です。

レジリエンスを高める方法

では、実際にレジリエンスを高めるためにはどんな要素が必要でしょうか?そこでまず確認したいのが、「レジリエンスは何か特別なものではなく、誰もが持っているものである」ということ。そして、「レジリエンスの高低によって、『できる』『できない』が直接的に変わるわけではない」ということです。

6つのコンピテンシー

レジリエンスを高めるために必要な能力というのは、私たちのものの考え方やその特徴、感情ならびに行動に対する認識や理解、そして、感じ方や振る舞い方のコントロールなどを含めた、より総合的で複合的な能力です。これらの能力をひとまとめに「レジリエンス・コンピテンシー」と呼びます。レジリエンスは、単なる技術やスキルではなく、マインドにも大きく関わるものであり、このレジリエンス・コンピテンシーを養成することで高めることができます。

1.【自己の気付き】

自己の思考、感情、行動、生理的反応に注意を払う能力

自己の気づきを高めるためには、様々な場面において自分がどのような思考、感情、行動、生理的反応を取る傾向にあるかを客観的に認識し、受け入れる必要があります。日報を書く時や1日の終わりのタイミングで、その日の出来事に対して記録を取っていくことをおススメします。それらを内省することで、臨機応変に適切な対処方法を取りやすくなると言われています。

2. 【自己のコントロール】

望ましい結果を得られるよう、自分の思考、感情、行動、生理的状態を変化させられる能力

自己のコントロール力を高めるためには、困難な状況や危機的な事態に陥った時ほど、パニックになったり怒ったりするのではなく、自分を律して精神を整えるようにしましょう。一呼吸おいて、適切な判断をするためだと自分に問いかけましょう。

3. 【現実的楽観性】

ポジティブなことに気付き、期待し、自力でコントロールできるものにフォーカスし、目的を持った行動を起こせる能力

現実的楽観性を身につけるためには、物事の全体を的確に捉え、困難な状況を打開するポジティブな面を見つけようという姿勢が大切です。具体的には「この部分を活かせば、難局を乗り越えられそうだ」と考えたり、「大変だけど自分を成長させられる機会になるはず」と意欲を持って取り組んだりする姿勢が挙げられます。

4. 【精神的柔軟性】

状況を多角的に見て、想像的かつ柔軟に考えられる能力

精神的柔軟性を高めるためには、物事の一つの面だけに固執せずに、状況を多角的に観察して全体像や本質を捉え、目的に立ち返り柔軟に対応するよう心がけましょう。

5. 【キャラクター・ストレングス】

最高の強みを活用して、自分の能力を最大限発揮し、困難に打ち勝ち、自分の価値観にあった人生を想像する能力

キャラクター・ストレングスを高めるためには、成功体験が必要です。自分がやってみたいと思ったことには積極的に挑戦をして、学びを深めることで「自分はできる」という自己効力感が高まり、キャラクター・ストレングスが鍛えられていきます。

6. 【関係性の力】

強い信頼関係を気付き、維持する能力

関係性の力を高めるためには、まずは職場でともに働く仲間の良い面に目を向け、コミュニケーションを通して関係性を深めることを意識しましょう。突発的なトラブルが発生した際には主体的に協力できることはないか考え、早期解決に向けて動くことが大切です。また相談できる友人や家族の存在は、安心感や前向きな気持ちを取り戻す力になりますので、日頃から感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。

まとめ

働き方改革によって人々の働き方は徐々に自由度を増し、従業員が残業に追われて働き詰めになる会社が世間で後ろ指を指されるようになりつつある現代ですが、それでも人々の抱えるストレスはなくならないでしょう。共働きが主流になり、仕事が終わると家事が待っているという家庭では、働き方改革によって楽になったという感覚はあまりないかもしれません。そんなストレス社会で心身ともに健康を保ち、仕事で成果を出すためには、日々自分の周りに生まれる「ストレッサー」にうまく対処していくことが欠かせません。もし、今の生活がストレスに溢れているとしたら、レジリエンスを高めるための第一歩として、自身の思考や感情、行動や生理反応に意識を向けることから始めてみてはいかがでしょうか?

レジリエンスに関連する書籍紹介

著者であるケリー・マクゴニガル氏は、米国スタンフォード大学の心理学者であり、健康心理学という心理学の応用学問の専門家です。特に、健康心理学の中でも、葛藤を乗り越えて目標を実現することに関して研究しています。そんな彼女は、サブタイトルにもあるように、「ストレスとは悪ではなく、エネルギーの源である」と述べています。本書では、ストレスを悪いものと捉えることが悪影響の原因であることが、研究による裏付けと共に紹介されています。また、ストレスを歓迎し、それをエネルギーに変える(昇華する)方法についても記述されています。ストレスや心理的な葛藤にうまく対処したいと考える方におススメの一冊です。

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