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ベンチャーが企業理念を浸透を成功させるには?│30人の壁を超える③

ベンチャーが企業理念を浸透を成功させるには?│30人の壁を超える③

ベンチャーが企業理念を浸透させていくための仕組みづくりをご紹介させていただきます。

これまで2回にわたって、組織作りに励むベンチャーが直面する30人の壁とその乗り越え方についてお伝えしてきました。

入門編の記事では、30人の壁によって生じる一番大きな問題は “社員の向いている方向がバラバラになる” ことで、その問題を防ぐには理念から一貫した経営が大事だと説明させていただきました。2つ目の「理念策定編」の記事では、組織作りを行う上でいかにして理念を策定するのか、そのためにミッション、ビジョン、バリュー、をどのように創るのかをお伝えしました。しかし、理念を策定しただけでは組織作りが成功したとは言えません。策定した理念が社員全員に共有され、その理念に基づいて実際に社員が行動できるようになってこそ30人の壁を乗り越えられる強い組織ができたと言えます。そこで本記事では、30人の壁を越える!ベンチャーの組織作りシリーズの最終編として、策定した理念をどのようにして組織全体に浸透させていくかということで理念浸透のポイントについてご紹介させていただきます。

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理念が浸透している組織とは?

そもそも、理念が浸透している組織とはどのような組織なのでしょうか?

理念とは、その会社がなぜ存在しているのかという経営目的と、何を大切にしているかという価値観を明文化したものです。つまり、理念が組織全体に浸透している状態とは、社員全員が自身の仕事が会社の経営目的を果たすためにどのように貢献しているかを把握し、「自身が行っている仕事は企業の価値観に反していないかどうか?」「理念を追求するためにもっとできることはないか?」という観点で自ら理念を基準に行動の判断ができる状態のことを指します。

実際に理念浸透している具体的な例として、ザ・リッツ・カールトンホテルの事例をご紹介させていただきます。まず、同ホテルは理念をクレドという形で共有しています。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することを もっとも大切な使命とこころえています。 私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を 常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。 リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、 満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

同ホテルでは全スタッフが上記のクレドの実現のために自ら判断してサービスを提供しています。スタッフが自らの判断で提供したサービスの一例をご紹介させていただきます。

  • 「大事な書類を部屋に忘れてしまった。しかし、従業員が飛行機ですぐにそれを届けたため、事なきを得た」
  • 「海辺でプロポーズをするという話を従業員に話したところ、タキシードを着たその従業員がテーブルと椅子を用意し、そのテーブルの上には一輪の花と上等なシャンパンが置かれていた」
  • 「バーで恋人と病気のためにハワイに行けなかったことを話していた。それを聞いたバーテンダーが気を利かせ、部屋に貝殻やハイビスカスを飾り、南国の雰囲気を演出してくれた」

このようなことはマニュアルには書いてあることではなく、どれも従業員がクレドにある最高のパーソナル・サービスを自ら考え、追求した結果の行動ではないでしょうか。社員一人ひとりが、理念に基づいた具体的な行動を自分自身で考え、行動している状態こそが理念浸透の状態なのです。

理念をどのように組織に浸透させるか?

それでは、実際に理念を浸透させるにはどのようにすればいいのでしょうか?社長が理念を全体会議で発表するくらいでは当然不十分です。社員の日々の行動に直接影響するような仕組みをつくっていく必要があります。組織は、人を採用し、教育し、管理していきながら成果を生み出していきます。つまり、最終的な成果物が理念から一貫したものであるためには、この採用・教育・管理の場面で、社員に対して理念浸透を意図していく必要があるということになります。ひとつひとつ見ていきましょう。

理念に基づいた採用を行う

組織作りをはじめ、30人の壁を乗り越える必要があるベンチャーにとっては、その規模感を考えると、即戦力となる中途人材は貴重な存在です。ただ、デメリットもあり、それは他の文化に一度染まっているので、その染め直しには時間がかかるということです。いくら能力が高くても理念への共感が低ければ、逆にチームとしての生産性が下がったり、独立心に火が点いて離職時に多くの仲間を連れて辞めたりすることも十分あり得ます。そのため、組織作りの段階においては理念共感型採用を行うことを強くお勧めします。

理念採用

理念共感型採用とは、理念に対する共感性と能力で人材を採用することで、理念への共感を能力よりも重視するのが特徴的です。上記の図では、当然右上の理念に共感し、かつ高い能力を持つ人を優先的に採用します。しかし希望する人数を十分に採用できなかった場合、次に優先するのは、能力の高さよりも理念への共感度を見ます。長期的な目線で見れば、企業の価値観を理解し、会社の経営目的を理解した人材の方が育成によって組織の経営資源を統合し、組織レベルで成果を生み出せる人材へと変貌する可能性を大いに持っているからです。これは中途採用に限ったことではありません。むしろ新卒採用においては、一度も他の文化には染まっていない状態でもありますので、育成次第で組織にとって欠かせない幹部社員になっていく可能性を秘めています。

理念に基づいた教育を行う

企業における教育には、現場以外で学ぶOFF-JTと現場を通して学ぶOJTがあります。

Off-JTには、役職別の研修から毎朝の朝会まで幅広く含まれます。ここで重要なのは、教育研修の場面で経営者自ら理念について語る場を設けることです。どんなに立派な理念を設けても、経営者が理念に沿った経営判断や行動をしていなければ、まったく説得力がありません。逆に、経営者自らが理念の意味、そこに込められた思いについて語り、それを有言実行している姿は社員の一番のお手本であり、理念浸透を促進させます。

2017年の「ベストモチベーションカンパニーアワード」で第1位を獲得した株式会社LIFULLでは新卒・中途に関係なく入社後半年の社員を対象に「ビジョンカレッジ」という研修を行っています。その研修では様々なワークを通して理念を感じ取れるように設計されていますが、特筆するべき点は、その講師を役員が持ち回りで担当していることです。そうすることで、社員に対して役員が理念を重視していることを示せるほか、役員にとっても学びの場となります。

またそれ以外にも、経営者が会社の理念を語るだけでなく、実際に社員が理念に基づいて発表する場を設けることも有効です。より具体的にイメージすることで、経営者や役員だけでなく、同僚も実際に理念に基づいて行動していることを見たり、聞いたりすることで社員同士の間に良い刺激が生まれます。

OJTでは主に現場での上司による教育となります。ただ単に仕事を教えるだけではなく、経営理念、会社の伝統、商品にまつわる情報、かつての成功体験や失敗体験などあらゆることを教えていくことで理念を含めて深く継承されていきます。また、定期的な1on1ミーティングを行うことで、上司が部下の自己内省を促し、理念に基づいて行動できていたか振り返る機会を持つことも理念浸透には効果的です。

OFF-JT、OJTを通して、理論的にも実践的にも会社の理念を学べる場をつくることが、教育における理念浸透には欠かせません。

理念に基づいた管理をする

理念を浸透させるうえで重要な最後のポイントは、社員の管理の場面です。管理といっても、勤怠管理等の意味ではなく、マネジメントの意味においての管理です。マネジメントにおいて現場での教育はもちろん大切ですが、もう一つ忘れてはいけないのが「評価」です。この評価制度には報酬制度も当然含んでいます。この評価の場面は理念浸透をしていくには理念に基づいた評価制度を導入することです。組織作りを行っていく中で、理念を策定するものの、理念と評価制度を連動させていないという企業も多くあるようです。しかし、理念と評価を分けてしまうと、理念に基づいていなくても利益さえ出していれば評価されるようなことが起こったり、結局理念は二の次ということ考え方を誘発してしまうこともあります。数字面での業績と、理念に基づいた行動の2軸で評価を算出するなど、社員にダイレクトに影響する評価制度に理念を結びつけることで、本人の自己評価においても、上司からのフィードバックにおいても理念に基づいた評価が行われ、理念浸透を促進することにつながります。

まとめ

30人の壁を乗り越えられる強い組織作りをするためには、理念を策定するだけでは十分ではありません。理念が社員全員にしっかり浸透してこそ、組織作りは成功します。今回はいかにして理念浸透していくかについてご紹介してきました。採用、教育、管理という組織の活動の中枢ともいえる部分にいかに理念を反映させられるかが理念浸透のカギとなっています。理念共感型採用を実施し、理念を学ぶ場を設け、理念に基づいて評価する仕組みを整えることが理念浸透を行う上でのポイントです。30人の壁に直面していたり、改めて組織作りを行う際にはぜひこの記事を参照していただければ幸いです。

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