心理的安全性を高める方法とは?メリットとぬるま湯職場との違い

公開日: 2021年7月6日  最終更新日: 2021年7月6日

 昨今、「心理的安全性」というキーワードが多くの企業で注目を集めています。改めて心理的安全性の意味や、注目を集めたきっかけをご紹介します。また、あなたの職場の心理的安全性が今どんな状態であるかを診断する方法をご紹介します。もし、「職場で意見が言いづらい」「質問することが恥ずかしい」と感じている社員が多い場合、それは個人の問題だけではないかもしれません。職場でより良い環境を作る必要性を感じているのなら、ぜひ読み進めてください。

心理的安全性とは?

心理的安全性(psychological safety)の定義

 心理的安全性の概念を最初に提唱したのは、ハーバード大学で組織行動学を研究しているエイミー・エドモンドソン教授(Amy C. Edmondson)です。エドモンドソン教授は1999年に発表した論文の中で、心理的安全性を以下のように定義しています。

「チームは、対人関係のリスクをとっても安全な場所であるとの信念がメンバー間に共有された状態である。」

(Edmondson, Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams,1999)

 ここでの対人関係のリスクには、無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある発言や行動が含まれます。つまり、職場で上司や同僚の意見を恐れたり恥ずかしがったりせずに、チーム全員が気兼ねなくありのままの自分の意見を言い合える状態です。そしてそのような行動によって、チームの対人関係が損なわれないと信じている状態を指します。

 心理的安全性と似た概念として、信頼という言葉があります。信頼も相手を信じて、リスクをとることができるという要素が含まれます。心理的安全性と信頼の違いとして、信頼は個人同士の関係性にあるものに対して、心理的安全性はチームや組織といった集団レべルの現象であるとされています。

心理的安全性が注目されたきっかけ

 心理的安全性が多くの企業から注目を集めるようになったのは、アメリカのGoogle社の発表が大きなきっかけです。同社には数百のチームがあるとされていますが、生産性の高いチームもあれば、低いチームもありました。「プロジェクト・アリストテレス」と名付けられたこのプロジェクトは、生産性の高いチームの条件が何かを見つけ出すことを目的に、2012年から約4年の歳月と数百万ドルの資金をかけて、実施されました。

「プロジェクト・アリストテレス」の調査結果

  業績の高いチームと業績の低いチームを含む研究対象180チームを選定し、チームの構成(メンバーの性格特性や営業スキル、年齢・性別など)とチームの力学(チームメンバー同士の関係性など)がチームの効果性にどう影響するのかを比較検討しました。その際、在職期間や職務レベル、勤務地などメンバーに関するあらゆる情報を考慮して分析が行われました。そして2015年11月、Googleは自社の情報サイト「re:Work」にて、「チームを成功へと導く5つの鍵」を発表しました。

「チームを成功へと導く5つの鍵」

1.心理的安全性 (Psychological safety)
「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。

2.信頼性 (Dependability)
「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。

3.構造と明瞭さ (Structure & clarity)
「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。

4.仕事の意味 (Meaning of work)
「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。

5.インパクト (Impact of work)
「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解してる」か。

(参考:https://rework.withgoogle.com/jp/)

 この発表の中でGoogleは「誰がチームのメンバーであるかよりも、チームがどのように協力しているかが重要」と指摘しました。その上で「心理的安全性は単なる1要素ではなくその他の4つを支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素である」と述べています。

 これらの成果報告によって、世界中の企業に心理的安全性という言葉が知れ渡るようになりました。

 

心理的安全性を高めるメリットとは?

 それでは、心理的安全性を高めるとどのようなメリットが期待できるのか見ていきましょう。

メンバーのパフォーマンス向上

 お互いを認め合い、尊重し合うという価値観の共有が職場内に根付くため、社員同士が切磋琢磨するようになります。自発的な学習も増え、個人のポテンシャル向上に繋がっていきます。そしてメンバー全員が安心しながら集中して仕事に取り組むことができるため、パフォーマンスが向上し業務の生産性が高まります。また、人は何かに集中してのめり込むと神経伝達物質であるドーパミンの分泌量が増えるため、更にやる気や集中力が増加するという好循環が生まれます。

イノベーションの推進

 心理的安全性が高い組織では多様な価値観が認められるため、様々な個性や能力を持つ社員が組織の目標や課題に対して自由に議論できる環境が整っています。建設的な議論が行えるため、問題の早期発見・解決に繋がります。また、自分の意見を否定されるという不安がないため、個人の意見やアイデアが多く集まり、創造性に富んだアイディアに発展する可能性が高まります。そして職場全体のコミュニケーションが活性化することで、社員間の共有もされやすくなります。このように心理的安全性が高く保たれていることによって、新しい物事や困難に立ち向かいやすくなるため、イノベーションが生まれやすい組織が出来上がります。

エンゲージメントの向上

 エンゲージメントとは、社員の組織に対する愛着や思い入れを意味しています。居心地がいい、仕事がしやすいなど、心理的に安全な職場で働く社員は離職率が低いとされています。仕事へのやりがいが生まれ、自分の能力や特技を活かしながら業務に取り組めるため、今の会社で長く働きたいと思うようになります。その結果、優秀な人材の流出や退職の抑制にも効果があります。

 

心理的安全性を測定しよう

 ここまで心理的安全性の定義を確認し、心理的安全性が組織の生産性を高める上で重要な要素であることを述べてきました。それでは、実際に組織の心理的安全性のレベルを知るためには、どんな方法があるでしょうか。心理的安全性の測定方法についてご紹介します。

組織の心理的安全性が低い9つの兆候

 以下のような兆候が職場で見られたら、心理的安全性が低くなっている証拠です。あてはまる項目が多ければ多いほど、組織の生産性にも影響を及ぼしますので、対策が必要でしょう。

① 社員は会議中に質問をほとんどしない。
② 社員は過ちを認めることに抵抗を感じている。
③ チーム内では、難しい会話や激しい議論を招く話題を避けている。
④ 役員とチームリーダーは、会議の議論を支配する傾向がある。
⑤ フィードバックは頻繁に行われず、求められることもない。
⑥ 他のチームメンバーをサポートするために、メンバーが自分の職務以外のことを進んですることがない。
⑦ 社員同士、必要な時にお互いに助けを求めることがない。 
⑧ 意見の相違、異なった視点からの意見がほとんどない。
⑨ 社員はお互いを個人的に知っているわけではなく、職務的に知っている。

心理的安全性を測るための5つの質問

 次に、個人ごとの心理的安全性の測定方法をご紹介します。以下の5つの質問は、心理的安全性を提唱したエドモンドソン教授の評価項目を参考に構成されています。これら5つの質問に対して、どの程度そう思うかを1~7の数字で答えてみてください。

【選択肢】
  1:全くそう思わない 2:そう思わない 3:あまりそう思わない 4:どちらとも言えない
5:ややそう思う 6:そう思う 7:非常にそう思う 

① チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
② チームのメンバーとチームの課題や難しい問題を指摘し合える。
③ チームに対して、対人関係のリスクのある行動を取っても安全であると感じる。
④ チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
⑤ チームメンバーと仕事をする時、自分のスキルと才能が尊重され活かされていると感じる。

【スコアの出し方】
 まず、質問②・③・⑤のスコアを合計して小計にします。次に、8から質問①の選択肢を引いた数と、8から質問④の選択肢を引いた数の両方を小計に加算します。これが最終スコアです。

【判定】結果はこちらをクリック
最終スコア0〜15:チームが心理的に安全ではない。
最終スコア16〜30:チームにある程度の心理的安全性はあるが、まだ高められる。
最終スコア30以上:チームに十分な心理的安全性がある。

(参考:https://www.businessinsider.com/psychological-safety-assessment-no-hard-feelings-book)

  是非、9つの兆候や5つの質問についてのアンケートを実施してみることをオススメします。

 

職場で心理的安全性を高める方法とは?

 もし現在、職場での心理的安全性に不安があり、心理的安全性を高めたい場合にはどんなことを実践するのが良いのでしょうか。

ボディランゲージで理解を示す

 UCLAの研究によると、人はコミュニケーションを取る際に相手のことを7%を言葉から、38%を声のトーンから、残りの55%をボディランゲージから理解していると言われています。ボディランゲージとは、音声によらない身振り手振りや顔の表情などで相手に意思を伝える非言語的コミュニケーションの一つです。つまり、言葉だけで相手に気持ちを伝えようとしても、7%しか意図的に伝わらないということです。

 例えば、会議中はパソコンやラップトップばかり見つめるのではなく、十分なアイコンタクトを取っているでしょうか。メンバーが話す時に注意を払っていないと感じたり、メンバーの考えや意見を評価していないと感じた場合、そのメンバーはその後の発言を抑制してしまいます。周囲の人々が自分の視点を理解し考慮してくれている、十分気にかけてくれていると感じていれば人は心理的な安全を保つことができます。

 したがって、アイコンタクトや同意の際の頷きを多くしたり、身振り手振りや笑顔を意識したりすることによって、ボディランゲージで相手に理解を示すことが有効です。

人を責めるより解決策に焦点をあてる

 何かがうまくいかない時、誰かのせいにしてしまうことはないでしょうか。自己を正当化したり、ストレスを発散したりするために他者を責めるということが起こり得ます。例えば以下のような発言の対象となった人は、自分が非難されたと感じてしまい、心理的安全性が低くなります。

・「このチームの数字が達成できなかったのは、あなたの成績が・・・」
・「部下や後輩が動かないから大変で、私の仕事も遅れてしまって・・・」
・「あの上司の下ではやる気が・・・」

 職場での心理的安全性を高めるためには、解決策に焦点をあてるようにしましょう。「なぜできなかったの?」ではなく、「次回うまくいくためにはどうしたらいい?」という問いに変換することが大切です。

意思決定にはチームメンバーの意見を求める

 何か決定を下す時にはチームに相談し、チームメンバー全員の意見や考え、フィードバックを求めるようにしましょう。チームメンバーは自分が意思決定プロセスに含まれていると感じ、モチベーションが高まると同時に心理的安全性の構築に役立ちます。これは若手社員も同様です。日頃、上司が若手社員に対して「よく知りもしないのに」「余計なことをするな」という言動を見せていたら、いざ会議の場で「忌憚のない意見を聞かせてほしい」と発言を促しても、メンバーは黙ってしまうことでしょう。

 また、意見を出してくれたメンバーには、「これは○○ということだよね?」といった要約や質問をして相手の考えを確実に理解するようにします。積極的に関与することで、周囲が声をあげても大丈夫だという環境を作ることができます。

 そして決定が下されたら、決定の背後にある理由をメンバーに説明する機会を持ちましょう。彼らの意見がどのように決定に反映されたのか、どのような考慮がなされたのか、決定に関する透明性と正直さが心理的安全性を高めるためには重要です。

オープンマインドの重要性

 オープンマインドは「偏見のない心」という意味があります。英語の方が肌の色、言語、ライフスタイル、趣味趣向などあらゆることに対して偏見のない心であることのニュアンスが強いですが、日本で用いられるオープンマインドにもその要素は含まれています。「自分のありのままの姿や考えを包み隠さずオープンにすること」「他人や他の物事に対しても興味を示し、積極的に受け入れること」という意味合いで用いられています。つまり、メンバー全員がいつもオープンマインドでいることで、様々な物事に興味を示すようになると同時に気兼ねなく自分の意見が言いやすくなります。そして、その意見が受け止められると感じられればお互いの心理的安全性が高まります。職場で心理的安全性を高めるためには、自分と異なることを理由に誰かを拒絶したり、誰かの悪口を広めたりすることが決してないように注意しましょう。

チームリーダーによる働きかけ

 心理的安全性を作り上げる上では、リーダーの役割が非常に重要です。エドモンドソン教授らが発表した2016年の研究によると、仕事の内容や組織の形態に関わらず、リーダーの心理的安全性に対する意識の程度がチーム全体の心理的安全性に大きな影響を与えることが明らかになっています。

(Edmondson, A. et al. Understanding psychological safety in health care and education organizations: a comparative perspective. Research in Human Development, 2016)

 まず各チームのリーダーは、メンバーの個人的および専門的能力の開発を支援することによって、彼らの味方であることをしっかりと伝えましょう。また、職場内で建設的な意見交換ではなく、他のメンバーに対する悪口や誹謗中傷が見られた場合には、それを放置せずに解決に向けて動いてください。このような否定性を許可してしまうと、それは伝染し、他の人に広がる可能性があります。社員は、自分が他者を悪く話すようになっている、または他者がおそらく自分のことについて話していると思うでしょう。どちらの場合でも、心理的な安全には悪影響です。

 

心理的安全性を高める上での注意点

 ここまで心理的安全性を高める方法について見てきました。よくチーム内の人間関係が良い状態が「心理的安全性が高い状態」だと思われがちですが、それだけでは組織の生産性向上には不十分です。

仕事に対する基準を高く保つ

 仲良しで居心地がいいだけの職場は、「ぬるま湯職場」と呼ばれています。しかし、高い生産性を発揮するためには、社員の仕事に対する達成度や要求される基準が高く設定されていることが重要です。それでは、人間関係の良し悪しと仕事の基準の高低によって、どんな職場に分かれるのかを詳しく見てみましょう。

 職場分類

 

(参考:https://kailabo.com/

心理的安全性が高い職場とは?

 上の図のように、心理的安全性が高い職場とは、仕事に要求する基準が高く、職場の関係性も良い職場です。立場に関わらず「成果を出すためにもっとこうしましょう、ここを改善しましょう」という意見を出すことができ、時に健全に衝突しながらも生産性を高めていくことができる職場です。

ぬるま湯職場とは?

 仲良く働けていますが、仕事に要求する基準が低い職場です。人間関係の対立や衝突が少ないため、心理的安全性が高いと勘違いしてしまうこともあるかもしれません。職場の人間関係が良いことはもちろん良いことですが、成果にコミットするような環境ではない職場です。

冷めた職場とは?

 社内の関係性が悪く、仕事に要求する基準も低い職場です。成果を求められることも少ないため、社員のモチベーションも低く、とりあえず与えられた仕事だけをこなすような職場です。

厳しい職場とは?

 仕事に要求する基準は高いものの、社内の関係性が良くない職場です。例えば、歩合性が高いウェイトを占めている職場であったり、社員同士がライバルのような職場だとこうした状態に陥りがちです。成果を上げている人の意見が通りやすくなり、成績が悪いメンバーは意見や反論をできない雰囲気があるような環境です。

 

 また、心理的安全性を高めるとミスをすることへの抵抗感が薄れて仕事への責任感がなくなり、仕事の質が落ちるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。エドモンドソン教授はこれらの懸念に対して、心理的安全性が高くて責任感やモチベーションも高い状態は両立できると報告しています。

 心理的安全性が高いだけでは、居心地は良いものの日々の業務をダラダラとこなすだけのぬるま湯環境になってしまいます。一方で責任感やモチベーションが高いだけでは、無能と思われたり失敗を責められたりする不安と常に隣り合わせの厳しい環境になってしまいます。チームの生産性を向上させ、高いパフォーマンスを発揮するためには、心理的安全性と責任感やモチベーションの両方を高めることが重要なのです。

 

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まとめ

 今回は、心理的安全性とは何か、心理的安全性の測定方法や高める方法、注意点についてご紹介しました。心理的安全性が高い職場は、社員が安心して自分の考えを発言したり、主体的に行動に移していくことができます。その結果、各部署でイノベーションが生まれ、組織において多くのメリットを生み出すことができるのです。

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