ハラスメントの種類はいくつある?人事が押さえるべき5つを厳選紹介

ハラスメントの種類は、ハラスメントへの注目度が高まるごとに増え続け、現在では50種類以上も存在しています。その中には、「セクハラ」や「パワハラ」など、かねてより企業で問題となっていたハラスメントもあれば、「ソーハラ(ソーシャルハラスメント)」や「スメハラ(スメルハラスメント)」など、あまり聞きなれないものもあります。

近年、職場のハラスメントに対する注目は急速に高まっており、一部のハラスメントの種類については法制化が進んでいます。法制化の進んでいるハラスメントには、防止の措置を講じることが企業に義務づけられています。

では、全部で50種類以上あるハラスメントの中で、防止が義務付けられているハラスメントはいくつあるのでしょうか?そこで今回は、数多く存在するハラスメントの中で、法制化が進んでおり、特に対策が必要なハラスメント5つをご紹介いたします。

ハラスメントの定義とは

では、そもそもハラスメントとは、一体何なのでしょうか?

ハラスメント(Harassment)は「いやがらせ」や「いじめ」を意味する言葉です。発言や行動によって、他者に不利益を与えたり、不愉快にさせることを指します。与えるダメージには、身体的なものと精神的なものの両方が含まれます。

ハラスメントの種類は、いやがらせの内容によって分けられており、法律に触れる重度のものから、ちょっとした軽度のものまで存在します。

例えば、教育現場でのアカデミックハラスメントや、性的な嫌がらせであるセクシャルハラスメント、上下関係を利用したパワーハラスメントなど、被害者と加害者の関係性や、ハラスメントに紐づく行動、状況によって種類が判別されています。

人事が押さえるべき5つのハラスメント

厚生労働省が発表した『平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況』によると、各都道府県の労働局や労働基準監督署によせられた労働相談の件数は約111万件。そのうち、民事上の個別労働紛争は26万件以上にのぼり、なかでもハラスメント(いじめ嫌がらせ)の相談が約8万2000件とトップとなっています。

こうした状況をうけ、2016年には妊娠・出産に関するハラスメントの防止措置が義務付けられ、2019年5月にはパワーハラスメントへの対策が事業者に義務付けられました。

ハラスメントの種類は多く存在しますが、パワハラやセクハラのように、法制化の進んでいるものはわずかしかありません。また、職場で大きな問題になるハラスメントの種類は、大きくわけて以下の5つに絞られています。

・パワーハラスメント

・モラルハラスメント

・ジェンダーハラスメント

・セクシャルハラスメント

・マタニティハラスメント

職場で問題になりやすいハラスメントの種類一覧

職場で問題なりやすい5つのハラスメントの定義と事例を一覧にまとめました。そのうち、4つのハラスメントは法律で禁じられている行為が定義されていたり、企業がとるべき措置が明文化されたりしています。

では、これより各ハラスメントの定義と事例、企業がとるべき対策について詳しく紹介していきます。

パワーハラスメント

上司と部下、先輩と後輩というように、職場での上下関係や権力を利用した嫌がらせのことをパワーハラスメントといいます。

職場のパワーハラスメントとは、以下の3つの要素すべてに当てはまるものを指します。

・優越的な関係を背景とし

・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

・就業環境を害すること(身体的および精神的な苦痛)

出典:P2『パワーハラスメントの定義について』平成30年10月17日雇用環境・均等局

ここでいう「優越的な関係」とは、職位の上下関係だけではありません。同僚や部下による行為でも、その者の協力を得なければ業務上差しさわりがあるような場合、そこでの嫌がらせはパワーハラスメントとみなされます。また、職場のパワーハラスメントは「指導」との境界線が難しく、個別のケースや状況に沿って客観的な判断が必要となります。

パワーハラスメントの種類

厚生労働省では、パワーハラスメントを6種類に分類しています。この分類は、「パワハラの6類型」と呼ばれています。 

身体的な攻撃

・蹴られる

・モノを投げつけられる

・胸倉をつかんで説教される

精神的な攻撃

・ささいなミスで罵倒される

・長時間にわたり説教される

人格を否定される

・人間関係からの切り離し

・先輩や上司に挨拶しても無視される

・業務に必要な情報を教えてもらえない

過大な要求

・終業間際に膨大な量の残業を押し付けられる

・達成不可能なノルマを課される

過小な要求

・専門職で採用されたのに、コピー取りの雑用しかまかされない

・業務が一切回ってこず、やることがない

個の侵害

・不在中に机の中を物色される

・有給の理由を報告するように強要される

出典:厚生労働省リーフレット

殴るといった暴力や、無視等の嫌がらせだけではなく、力関係を利用して不当な業務を押し付けることもパワーハラスメントです。パワーハラスメントを防止するためには、アンガーマネジメントなどを身につけ、突発的に暴力や暴言を言わないようにするほか、コミュニケーションやマネジメントの強化を通して、部下との関係を良好にすることが必要となります。

モラルハラスメント

モラルハラスメントとは、精神的な嫌がらせをいいます。パワーハラスメントとは異なり、嫌がらせに上下間の力関係は持ち込まれません。職場全体で無視したり、個人の尊厳を貶めたり、見えない暴力で被害者の精神にダメージを与えます。

「意見を尊重しない」「見下した態度をとる」といったモラルハラスメントの例はありますが、詳しい状況はケースごとに違います。見えない暴力であるがゆえに、判断がしずらいのがモラルハラスメントの特徴です。

上でご紹介した4種類のハラスメントとは異なり、モラルハラスメントには直接禁止したり防止措置を義務付ける法律はありません。

しかしながら、企業には「労働環境配慮義務」が課せられているため、モラルハラスメントを放置すると、職場環境を悪化させたとして損害賠償を請求される可能性があります。実際、モラルハラスメントを放置した企業が損害賠償請求を受けた裁判例も存在します。ですので、モラルハラスメントについても、通報窓口の設置や社内研修の実施など、発生防止に取り組む必要があります。

ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントとは、性別で職務を不平等にわけたり、不当な評価を下すことを指します。性別への偏見を原因として、本人の価値や能力が公平に判断されず、採用や昇進の機会が失われるというケースは、昨今でもたびたび問題となっています。

ジェンダーハラスメントへの対策として、男女雇用機会均等法では、募集・採用・配置や昇給等における、性別を理由とする差別を禁止しています。同じ職種にも関わらず男女で異なる雇用条件を適用したり、いずれかの性別のみを採用の対象とすることは禁止されています。

・採用で男女いずれかの性別を排除する

・採用の条件が男女で異なる

・採用試験の判断基準に男女で異なる指標を適用する

・ある職種の配置に、男女のいずれかを優先したり排除したりする

セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。

ここでいう「性的な言動」とは、以下のものを指します。

・性的な事実関係を尋ねること

・性的な内容の情報(噂)を流布すること

・性的な冗談やからかい

・食事やデートへの執ような誘い

・性的な関係を強要すること

・必要なく身体へ接触すること

・わいせつ図画を配布・掲示すること

・強制わいせつ行為

・強姦

上記のような言動・行動に応じなかったため、労働者が不利益をこうむったり、言動・行動の結果、精神的・身体的なダメージを負うことがセクシャルハラスメントです。また、同性間での性的な発言にもとづく嫌がらせも、セクシャルハラスメントに分類されます。

ジェンダーハラスメントとセクシャルハラスメントの違い

広義の意味で、ジェンダーハラスメントはセクシャルハラスメントの一部に分類されることもあります。ですが、前者は性別に基づく嫌がらせ、後者は性的な視点を交えた嫌がらせという点で大きな違いがあります。

つまり、ジェンダーハラスメントとは、あくまで「男性」「女性」という性別に基づき、他方を排除したり優遇したりすることを指します。お茶くみやコピー取りといった雑務を女性のみに任せたり、男性だからと重い荷物を運ばせたりすることは、ジェンダーハラスメントに該当します。

職場でのセクシャルハラスメントの事例

職場におけるセクシャルハラスメントには、2つの種類があります。「対価型セクシャルハラスメント」と「環境型セクシャルハラスメント」です。

対価型セクシャルハラスメント

対価型セクシャルハラスメントとは、性的な言動・行動に労働者が反抗したことによって、解雇や降格、減給、昇進の対象外になるといった労働条件上の不利益を受けることを指します。

・職場の派遣社員に性的な関係を要求したが、拒否されたためその派遣職員の契約を更新しなかった

・出張中上司から関係を求められたが応じなかったため、次の配置転換で不当な異動命令がでた

環境型セクシャルハラスメント

環境型セクシャルハラスメントとは、性的な言動・行動で職場環境が不快なものとなり、就業を継続するうえで見過ごせない影響が労働者にあらわれることを指します。

・職場の先輩がすれ違いざまに肩や腰に触れるため、その労働者の就業意欲が低下している

・抗議にもかかわらず、職場でアダルトビデオを閲覧する職員がおり、ほかの労働者に苦痛をあたえている

マタニティハラスメント

妊娠・出産に関して、職場で受ける嫌がらせをマタニティハラスメントといいます。マタニティハラスメントには、妊娠中の女性が受ける嫌がらせだけでなく、育児休暇を申請・取得した男女(親)が受ける嫌がらせも含まれます。

以下に、どのような発言や対応がマタニティハラスメントに該当するのかご説明します。

問題となるマタニティハラスメントの事例

マタニティハラスメントは、「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」に分類されます。

制度等利用への嫌がらせ型

制度等利用への嫌がらせ型のマタニティハラスメントとは、妊娠中の女性や、育児休暇を申請・取得した男女に対して、解雇や不利益な取り扱いを示唆することや、制度の利用を拒むこと、制度の利用に対して嫌がらせの言動をすることです。

・育休取得を相談したら、上司に「休むならやめてもらう」といわれる

・育休を申請しようとしたら、「男が育休なんて」と認めてもらえなかった

・時短勤務を利用したら、メインプロジェクトから外された

状態への嫌がらせ型

状態への嫌がらせ型のマタニティハラスメントとは、妊娠中の女性や出産、育児を控えた男女に対して、解雇や不利益な取り扱いを示唆することや、嫌がらせの言動をすることです。

・妊娠を報告したら「ほかの人を雇うから辞めてほしい」と言われた

・「妊娠する時期を考えてくれ」と事あるごとに嫌味を言われる

ハラスメントに該当しない業務上の必要性にもとづく言動とは

出産を控えている社員がいる場合、業務分担の見直しや安全配慮が必要になるケースがあります。その場合、以下のような業務上の必要性に基づく言動は、マタニティハラスメントにはあてはまりません。

・業務状況から、次の妊娠検診の日程調整を上司から打診された

・体制の見直しのため、いつまで育休を取得するか上司が確認すること

・上司が、妊婦への長時間労働を心配して労働時間を減らそうかと配慮すること

ただし、上記のような相談や変更がマタニティハラスメントに該当しないのは、社員へ強要しない場合に限られます。業務上、必要と思われる内容であったとしても、労働者の意に反する一方的な通達は、マタニティハラスメントと判断される可能性があります。

また、本人が就労を希望していたとしても、客観的に見て業務分担や配慮が必要な状態であれば、業務上の必要性に基づく言動とみなされます。

職場でのハラスメントに対して企業が講じるべき措置

男女雇用機会均等法において、採用や配置で差別するジェンダーハラスメント、性的な嫌がらせのセクシャルハラスメント、また妊娠・出産等に関するマタニティハラスメントは禁じられています。企業は、雇用管理上これらのハラスメントへの対策措置を講じなければなりません。

また、2019年には「労働施策総合推進法」の改正により、パワーハラスメント対策の法制化が進んでいます。早ければ、大企業で2020年4月に、中小企業では2022年4月に施行され、予防措置が義務化される予定です。

事業主の義務である措置のポイント

男女雇用機会均等法と育児・介護休業法に基づく厚生労働大臣の指針では、事業主がハラスメント防止で講じるべき措置として以下のポイントを挙げています。

・事業主の方針の明確化と、周知および啓発

・相談に応じて適切に対応するための体制の整備

・職場におけるハラスメントの迅速かつ適切な対応

・職場における妊娠・出産のハラスメントの原因や背景を解消するための措置

・相談者や行為者のプライバシーを保護するための措置

上記のポイントは、「発生前の防止措置」と「発生後の対応措置」にわけられます。指針が対象しているのは、「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」の2つです。しかし、他の種類のハラスメントへの対応として、職場内の対策を講じる際に応用できます。では、「発生前の防止措置」と「発生後の対応措置」について、詳しく見ていきます。

職場のハラスメント防止措置の注意点

ハラスメントを予防するにあたって必要なのは、どのような言動・行為がハラスメントに該当するのかを明確にすること、またハラスメントが発生した際の企業の対処方針を労働者に周知することです。

ハラスメントの定義や企業としての対応の方針については、就業規定に盛り込むなど、明文化して社内に通達・啓発するのが望ましい形です。また、ハラスメント防止研修等を行う場合は、管理職のみを対象とするのではなく、すべての社員を対象に実施することがおすすめです。

ですが、実施する際には、管理職や一般職など、職位にわけて行うことをオススメします。それぞれの職位での留意点を指摘することができるため、研修の効果性を高めることができます。また、研修の前後でEラーニングや振り返りを行うなど、継続的に防止措置を実施することが組織内のハラスメントへの理解を深めます。

ハラスメント発生後の対応措置の注意点

ハラスメントが発生した際の対応には、当事者のプライバシーを保護することが重要です。また、ハラスメントを相談したことを理由に被害者が不当な扱いを受けないよう、管理者・上司が適切な対応を理解する必要があります。

当事者間の発言が食い違う場合には、第三者への聞き取りが大切です。情報の漏洩をふせぐためにも、第三者の人選は絞っておこないましょう。

相談対応から発生後の対応手順については、厚生労働省の『職場におけるハラスメント対策マニュアル』が参考になります。

引用:P26厚生労働省 『職場におけるハラスメント対策マニュアル

まとめ

ハラスメントには50以上の種類があり、重度のいやがらせから、軽度の嫌がらせまで幅広く存在します。その中で、特に人事が押さえておくべきものとして「パワーハラスメント」「モラルハラスメント」「ジェンダーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「マタニティハラスメント」の5つをご紹介させていただきました。これらについては、企業全体として予防の措置に取り組むことが必須となります。職場のハラスメントを放置すれば、労働者本人の意欲低下や退職リスクが高まるだけでなく、職場全体の雰囲気の悪化や企業評判の低下をまねくこともあります。もしこれからハラスメント対策の強化を進めていく方がいましたら、5つのハラスメントに注目を置き、網羅的に防止策を講じることをオススメします。この記事を通して、ハラスメントのない企業づくりに少しでも貢献できれば幸いです。

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