フラット型組織への転換事例 苦難の先に確かな手ごたえ

株式会社ロジックは、2010年12月に設立された住宅会社です。創設から毎年150%成長を続け、2018年の売り上げは約33億円、従業員は90名を超え、本社のある熊本を中心にブランドを確立している業界注目の企業です。そんな急成長の最中、株式会社ロジックは2017年にピラミッド型組織からフラット型組織へと舵を大きく切りました。今回は、そんな株式会社ロジックがフラット型組織に着手し始めてからの活動を代表取締役 吉安さんに伺ってきました。

フラット型組織を目指した経緯

-フラット型組織を目指したきっかけはなんでしょうか?

私の中では、フラット型組織を昔から目指していたんですよね。それこそ、リカルドセムラーの「奇跡の経営」を読んだのは、創業期なんです。フラット型組織っていうのもあるんだなって思って、2・3年前から「フラット型組織に移行したい」っていう意思表示をしていました。

昔から、ピラミッド型の組織に違和感を感じていたんです。社員とご飯に行ったときに「社長ありがとうございます」って言われるけど、俺1円も売り上げてないし、利益1円も稼いでないし、俺が「ありがとう」って言われるのもどうしたもんかなって。

ティール組織を掲げた活動が予想外の障害に

-フラット型組織に着手した当初は、どのような取り組みをしていましたか?

2017年にティール組織と言う単語を知ってから、それを目指して組織づくりを始めました。たとえば、これまでの役職をすべて廃止にしたり、「ティール組織」の読書会をやったりとか。

-思い切った施策ですね。社員の方はどんな反応でしたか?

役職がなくなることでふてくされる社員はもちろんいましたし、ティール組織にしていくことに抵抗感を示して、会社を辞めていく部長クラスの人たちもいました。でも、地位や役職といったものが何の意味もないっていうことに気づく人たちもいて、半分半分に分かれました。

-人が離れたことで支障はなかったんですか?

正直言うと、結構大変でした。社員が十数人一気にやめて、それによって会社の組織力っていうのが一気に落ちたんですよね。それで、社内がギクシャクしたんですよ。「やっぱり、あいつらが居たおかげでなんだかんだ組織が回っていて、それがいなくなった今となっては我々の組織力は地に落ちた」って。「こんな組織力で、安心して家なんか売れるはずがない」なんて言い出す人もいました。

それに、活動をやればやるほど離れていくんですよね。「よく分からない」とか、「別にティールに変わる必要はあるのか」っていう意見がありました。勉強しよう、やろうよって言えば言うほど離れていくし。それはまるで、子供に勉強しようって言えば言うほどやらなくなるのと同じような感覚でした。

-反発の原因は何だったのでしょうか?

つまり、何かに染まることに対する抵抗感があったんです。だから、どうしたらいいんだろうって考えた時に、結局ティールという言葉ではなくて、『我々らしい文化を取り戻す』という言葉の方がしっくりくるんじゃないかと思いました。それは、「ティール組織」という言葉にとらわれて、ティール組織の本読んでもらうとか、ティール組織に関する優れた要約やコラム見つけてきて読んでもらうとか、そういったことじゃないと思ったんです。本質に立ち返り、株式会社ロジックらしい組織文化を体現してる人を増やしていこうと思いました。そして、「ティール組織」に合わせていくのではなく、ロジックらしい意思決定の仕方っていうものを模索しながら、徐々に浸透させていくほうが、組織にとって自然なんだと思ったんです。

フラット型組織への転換による副作用

-フラット型組織に転換した影響はどのくらいありましたか?

今はもう乗り越え始めてますけど、一時期は経営がものすごい苦しくなりました。そこで、普通だったら絶対に言えない悪い状況下における財務状況も、思い切って全部オープンにしたんです。「ぶっちゃけ、支払える資金はこれくらいしかなくって、今までどおりだと会社がどんどん苦しくなっていく。これを見て、うちは会社終わったと捉えるのも一つの解釈でしょう。ただ、俺たちだったらどうにかできると信じて取り組むのも、一つの解釈でしょう。ロジックらしい働き方が何かって考えたら、そこにチャレンジしていくのがロジックらしいんじゃないかなって思うんだよね。」みたいなことを、全体朝礼で伝えました。

-すごい決断ですね。社員さんの反応はどうでしたか?

それから、みんなのスイッチが入りました。それまで止まっていたものが一気に動き始めたっていう感じですね。情報を全部透明にしたからこそ、 こんだけやらないと会社が回らないっていうのをしっかり理解してもらえました。それに、今何をしなければいけないのかを社員が考えるようになっていきました。でも、本当の意味で当事者意識が持っていたのは一部のメンバーで、そのメンバーが動き出したのを受けて、周りがそれに釣られて動き出したっていう感じはありましたね。

-最初に動き出したメンバーは、どんな人たちなんですか?

今うちのコアメンバーの中で流行語になっている言葉で、『ハイパフォーマンスおじさん軍団』ていうのがあるんです。略して 『HPO』っていうんですけど。HPOっていうのは、今までの役職も経歴も関係なくて、名前の通り高いパフォーマンスを発揮しているおじさん社員の集団です。

そもそも最初にHPOって呼ばれた人たちは、それまでマネージャーだって言われていた人たちなんです。その役職がなくなって、「じゃあ、どうやって私たちの存在価値を示せばいいんだろう」って考えた結果、「圧倒的な成果を出してやる」って結論に至って動き始めたんです。それが少しずつ伝播していって、今では10人くらいまでメンバーが増えています。このHPOが立場の上下も役割分担もなく、毎日ものすごいスピードで大量の意思決定を行っているんです。

今、うちで一番強いのは、そのHPOと新卒の1・2・3年目ですね。おそらく今うちで成果を出してくれてる新卒の子であったり、パフォーマンスの高い社員たちはみんな、自分が社長だっていう気持ちなんだと思います。『自分が会社背負っている』という意識は非常に高いと思います。

組織が再び動き出したロジック。その現在の取り組みとは?

-HPOは5人くらいとお聞きしましたが、少人数での意思決定が可能なんですか?

2019年の2月以降、LINEを使った意思決定のプロセスが浸透していきました。意思決定に対する助言を求める LINE グループがあるんです。お金に関わる意思決定に関しては、3万円までだったら全社員自由に意思決定ができます。ですが、3万円以上のものと組織の制度や仕組みに関するものは、20時間で助言を求めて、20時間経ったら助言を参考にして即座に意思決定をします。

-なるほど。ユニークな意思決定方法ですね。

例えば、私が社長仲間の新事務所オープンのお祝いで掛け時計を送りたかったとします。ただ、私が送りたい時計がデザイナーもので、5万円する。相手も本物を知っている人だし、ちゃんとしたものを送りたい。そんなときには、 LINE で「5万円の掛け時計を買います。なぜならば、本物を知る社長には、本物の時計を送りたいからです。社長もこれなら喜んでくれるに違いない。意見があれば、私に直接 LINE を送ってください。」みたいなことをグループに投稿するんです。

すると、私宛に「社長の気持ちは分かりますけど、経理をやってる立場からすると、そういう意思決定をされるのはいかがなものかと思います。」みたいなことが送られてきます。ほかにも、「それ19800円ぐらいでよくないですか?」みたいなことを言ってくる子もいます。

ただ、グループの中で助言を行うと公開処刑になる可能性があるので、助言は個人宛に送るのがルールになっています。

-助言ということは、必ずしも従わなくていいということですか?

そうです。決定権は申請した人にあるので、助言を受け入れてもいいし、受け入れずに意思決定することもできます。ただ、どんな助言があったのかは意思決定したときに報告することにしています。

-助言を求めたけど、やっぱりやめると言うのも可能なんですか?

ありです。20時間で助言を求めた後に、「やめた!」ってスパッと放棄することもできます。ただ、放棄された案でもいいなと思った人がいれば、その人が続きから進めていくことができます。

-なるほど。この意思決定プロセスが2か月で定着した理由はなんでしょうか?

私がやって見せたのが一番良かったと思っています。実際に私がやり始めたのを見て、それに釣られる形で活用する人がぽつぽつ出てきました。このプロセスは、意思決定する人、行動しようとする人にとっては魅力的なんです。やっぱり、会社でも明らかに成果を産んでいる、もしくは生み出そうとしてる人たちってのは、有言であれ無言であれ、実行したがる人なんです。そういう人たちは、自分の考えが実現することに魅力を感じて、積極的に活用していますね。逆に、全く活用しない人っていうのは、どちらかと言うと傍観者なのかなって思います。

-他には、どんな活動をされていますか?

先ほども少し話したんですが、『ロジックらしい組織デザインプロジェクト』っていうのを作って、毎週一回集まってミーティングをしています。そこで、実際に我々らしい文化をどれくらい体現できているか、もっと体現してくために何ができるか、みたいなところを話し合っています。

-プロジェクトのメンバーはどういった構成なんですか?

流動的で、バラエティにも富んでます。LINEグループには24名いますけど、実際活動しているのは10名ぐらいですね。ロジックでは、誰でもどんな会議にも参加できるようにしています。アプリ使って全社員中継しているんです。もちろん、クリックしない限りは聞こえないですし、全社員に発信しても、プロジェクトメンバー以外で参加するのは1~2人くらいなんですけどね。でも、基本的に密室の会議というのをなくそうと思っています。取りに来ようと思ったら誰でも取りに来れる状態にしたいんです。たまに、「あの会議参加したかった」とか言われるので、いつか全部録音してサーバーに置いといてやろうと思っています(笑)

フラット型組織を作る中で見えてきたロジックらしい組織とは

-ロジックらしい組織とは、どんなものなのでしょうか?

社員が100人いたとしたら、100人が自由な発想でダイナミックな意思決定をできる。私がやっているのと同等か、それ以上にビジョンを示せて、ブランドを体現できる人がいて、自由な働き方で業務が回せる組織ですね。そこまでいったら、私にできることはもう何もないですし、その時はもう死んでもいいかなと思ってます(笑)

-そこに向けて、これからどんな取り組みを考えていますか?

私に関して言うと、私に代わって「これがロジックだ」っていうのを表現できる人を育てていくことですね。私自身がブランド最大の体現者だっていう状態が、ずっと続くわけではないですから。

組織全体に関しては、ロジックらしい働き方ができる社員が今ちょうど2割ぐらいなので、残り8割の社員にどうやってロジックらしく働いてもらうかですね。ただ、どうしてもロジックの働き方になじめない人は、もっと彼らにとって良い職場に移ってもらうことも必要だと思っています。

-社員の転職を止めないということですか?

もちろん社員にはやめてほしくない。だけど、ストレスなく働ける職場として、ロジックが理想的な組織ではないっていうこともあると思うんです。それに、人間って「会社を辞めちゃダメなんじゃないか」っていう思い込みがあって、辞めたいのに辞められない人っていっぱいいると思うんですよ。そうではなく、逆に辞めたい人達が自由に辞められる会社になれたら、素晴らしいんじゃないかなと思っています。

フラット型組織を目指す人に向けて

-これからフラット型組織を目指す人に向けて、何か助言を頂けますか?

一番大事なのは「対話」ですね。ティールのようなフラット型組織を作っていくときに、誰もがぶち当たる壁が、対話だと思います。フラット型組織には役職も立場もないので、対話に苦痛を感じるときがあります。そのときに、相手のありのままを受け入れなきゃと思って、歯ぎしりしながら我慢して受け入れちゃうんです。でも、それって良くないんですよ。ときには、喧嘩に発展するような激しい対話も必要だと思うんです。対立しそうであっても、分かり合うところまでしっかり対話することが重要です。

-対立も承知の上で対話するには、勇気が必要ですよね。

人ってやっぱり対話が苦手なんですよね。反論されたら「もうダメだ」って引いてしまうんです。でも、そうじゃないんですよ。「反論って単なる質問だよ」って社員にいつも言っています。反論を質問と捉えて、それに対して笑顔で質問を投げかけていくことができたとしたら、大抵のことはうまく行くはずなんです。たしかに、言い方や伝え方に工夫は必要かもしれません。ですが、言わないという選択はよくないと思っています。相手がありのままであると同時に、自分もありのままでいることが重要です。

-『ありのままを受け入れる』とは、例えばどんなことでしょうか?

子どもを連れて会社に来るとかですね。シングルマザーの社員も何人かいて、体調が悪くなったら休みを取らなくてはいけません。それに、子どもを預かってもらうところがないときにも休まないといけないんです。なら、子ども連れて会社に来ればいいじゃんって。子どもと一緒に出社できる会社にもしようとしているんです。でも、それに対する反発はもちろん出たりします。でも、基本的にはありのままでやっていったらいいんじゃないかなと思っています。それも、お客さんに迷惑をかけない限りですけどね。

-では最後に、フラット型組織への取り組みを振り返ってみていかがですか?

思ったより時間がかかりました。フラット型組織に着手し始めた当時は、会社も社員も劇的に成長するだろうと思っていました。「どう考えたって最高の組織じゃん」って思っていたんです。でも、結果的にものすごい抵抗が生まれて、当初の1年間で組織力がかなり落ちました。そのときは、「なんか俺が作ろうと思った組織って無理なのかな」って折れそうにもなりました。

でも、やっぱり気付く人は気付き始めたんです。「もし私がここの社長だったら?」って考えて働くと、ロジックはすごく自由に意思決定できて、楽しく働けて活き活きできるって。それに、ロジックを信じて入ってきてくれる新卒の子だったり、「どうしてもロジックで働きたい」って言ってくれる人も生まれ始めたんです。それに、自分から新しいことに挑戦する社員が増えていて、組織も活性化しています。だから、これはやり続けるしかないなって思っています。「私がやろうとしていたことが間違いじゃなかったな」っていうことが、やっと感じられるようになりました。

まとめ

吉安社長は、株式会社ロジックを創設した当初からフラット型組織を目指していたそうです。ですが、ピラミッド型の組織や性悪説を基にした管理体制の必要性も否定できないとも言っていました。フラット型組織が優れているということではなく、ピラミッド型組織とフラット型組織には、多くの共通点と相違点が存在します。それを理解し、自社と自分に合った組織を目指すことが重要だとも言っていました。そして、社員と権限を共有することに不安を感じるならば、そもそもフラット型組織を実践する意味はないといいます。これから組織を作ろうと考えている方は、自身と自社に合った組織の在り方について考えてみるといいかもしれません。そして、フラット型組織を目指す方にとって、この記事を通して少しでもお役に立てたならば幸いです。

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アチーブメントHRソリューションズ株式会社

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