オバマ前大統領が語るキャリア、リーダーシップとは

オバマ前大統領が語るキャリア、リーダーシップとは

ただいま開催中のATD2018。アメリカのバラク・オバマ前大統領のがATD2018で行った基調講演についてレポートします。

オバマ前大統領の基調講演

オバマ前大統領の基調講演は8時半から始まるセッションで、開場は6時半予定。「近隣への影響もあるので、朝6時半よりも前には並ばないように」という事前アナウンスにもかかわらず、朝6時半の段階では下記の写真のように長蛇の列でした。先頭に並んだ人は朝3時から並んでいたようです。

そして、待つこと2時間。
会場に集まったのは2000名を超える人!人!人!

「OBAMA FOREVER」「I miss OBAMA」などのTシャツを着ている方も多数おり、大統領を退任された後も、偉大なリーダーとして多くの方から尊敬をされていることを感じました。

オバマ前大統領のプロフィール

基調講演のレポートの前に、オバマ前大統領自身の紹介をしておきたいと思います。

オバマ前大統領は2008年11月4日に、オバマ前大統領は史上最多の票を集め、44代目のアメリカ合衆国大統領として当選しました。「Change」というスローガンを掲げた選挙戦の勝利は、まさにアメリカにとって変化の多い出来事であり、オバマ前大統領はアメリカ史上初の黒人大統領であり、史上最も若い大統領でもありました。

一方で、彼が就任した当時、アメリカは大混乱に陥っていました。他国と交戦状態にあり、環境問題も深刻化し、経済も大恐慌以来の危機的な状態にあるなど、アメリカン・ドリームのコンセプト自体が脅かされていた時代です。

しかし、オバマ前大統領は自らのリーダーシップでこれらの局面を乗り越えました。経済を改善し、アメリカの自動車産業も復活させ、24万人のアメリカ人をカバーする医療制度を改革し、クリーンエナジーを使う道へと国を導きました。外交においてはキューバとの国交を正常化し、イラクとアフガニスタンの戦争を終結させ、アルカイダを滅ぼし、テロリストを排除し、イランの核兵器計画を停止しました。核なき世界に向けたその取り組みは、ノーベル平和賞を受賞することになりました。

大きな挑戦と変化の時代に、オバマ前大統領のリーダーシップの下、アメリカはより強固な経済、より平等な社会、そして国内においてもより安全な社会を実現し、世界からも称賛を得ました。在任期間8年。その間に上げた多くの功績により、オバマ前大統領はいまなおアメリカの偉大なるリーダーの一人なのです。

オバマ前大統領の基調講演内容

基調講演はトークセッションのような形で行われ、まず始めはオバマ前大統領の教育観を問う質問からスタートしました。意訳も多いレポートではありますが、ぜひ質問とそこに対するオバマ前大統領の回答をお楽しみに頂ければと思います。

教育とはどのような価値を持つものであると思いますか?

私は富裕層の育ちではありませんでした。カンザスの小さな町で退役軍人の恩恵を受けて育ちました。私を育ててくれた祖父は大学に行くことはありませんでしたが、銀行の副頭取秘書を務めました。同じく私を育ててくれた母は、目的をしっかりと持った人でした。私は教育によって人生を切り拓いてきました。

だからこそ、社会が教育に力を入れることは重要であり、誰もが素晴らしい教育を受けられるようにすることが重要であると考えます。アメリカのどこで生まれたとしても、どんな生い立ちだとしても、素晴らしい教育機会があるアメリカであることが重要なのです。

様々な変化の中で何を学びましたか?

何かを目指すときに、単に何かになりたいことよりも、何を成すのかということに焦点を当てることが重要です。肩書きが欲しいとかではないのです。その肩書きを得て、何をやるのかという心構えが重要です。
あなたは何に情熱を感じますか? この問いに対する答えに自分の人生のヒントがあると思います。マイクロソフトのビルゲイツ氏も大富豪になりたかったわけではなかったと思います。コンピューターに関する情熱があったから、結果的に大富豪になったのだと思います。大志を持つことは重要です。大事なことは肩書きを持つことではく、人生において何を成すのかなのです。

心を込めてやることであれば、ほとんどの場合あなたにとって価値がある経験になると思います。何か失敗をしても、上手くできたことを探せばよいのです。そして、次は何ができるかを考えてきました。

意思決定をするときには何を意識していましたか?

大統領の時代、目の前に置かれる問題は、良い解決策がないと思えるようなもの、解決について非常に難しい問題が多くありました。

例えば、2008年の自動車業界の救済についても判断は悩みました。GMとクライスラーが破産申告をしなければならない状態にあり、救済すべきかを問われました。しかし、自動車会社が多くあるミシガン市民の90%は、GM社を救済して欲しくないと言ったのです。しかし、一番助けなければならない人だと思ったので、私は助けようとしました。まさに51対49というような僅差での決定です。
正しい決断は何かということを考えるというよりも、それぞれの人の意見を聞き、データを見ていました。これはどんなビジネスにおいても重要だと思っています。色んな考え方が邪魔することもあると思いますが、様々なフィードバックなど全ての情報を得なかったら良い意思決定はできないと思います。

会議でも内側に座っている首脳陣だけでなく、外側に座っているサポートスタッフに意見を聞くようにしました。彼らの意見が重要だということをサポートスタッフの方々にも理解してもらいたかったし、首脳陣にも若い人の意見を聞くべきということを示したかったのです。

良い意思決定をするためにどのような価値観が大事ですか?

年を重ねるにつれ、母から習ったことが重要であると気が付きました。寛容であること、真摯に働くこと、親切であること、責任感を持つことなどです。
教わったことは人と接する中で価値観として形成され、自分の中で構築していきました。いろんな場面で自分のベースラインとなる価値観がつくられました。次第に自分の中で目的について意味を考えるようになり、給与をもらうこと以上のことをやりたいと思うようになったのです。
いま世界や国で起こっていることに対して、心配をすることがあります。自分の価値観というのが、覆されないようなことを願っているのです。どの政治的な考えも、全て価値観から出てきます。その価値観の多様さがアメリカであり、それは浸食されないものです。私自身も民主党/共和党という考えをしたことももちろんありますが、アメリカの民主主義というものはずっと貫かれてきたものだと思うのです。

大統領になるためにどのような準備しましたか?

残念ながら大統領になるためのマニュアルはありません(笑) ゼロから起業して何十億ドルの組織をつくるようなものです。いくつものリスク高い決定が必要でした。そして、その中で、自分の考えやアイデアを多くの人に広めていかないといけません。
その時に、ニュースなど周りの声にひるまないことは重要です。自分の人生の中で培ってきた基本原則からぶれないことです。これらは大統領になるために培ってきたものではなく、人生の中でずっと培ってきたものです。あらゆることから学び、時間をかけて耕していくことだと思っています。

もちろん、すべてはうまくいくわけではありません。失敗などで落ち込むことはありました・しかし、地球上の問題を自分一人で解決できるものではありません。「長い目で見る」ということは重要だと思っています。
皆さんは他の人をトレーニングをするということについて仕事をしていると思いますが、トレーニングとは誰かに自分の仕事をすることが出来るようなスキルをトレーニングするだけではなく、その人の持つベストな部分を引き出すことではないでしょうか。新しいアイデアに心を開いて、お互いを敬う態度が、組織にとって必要なのではないかと思います。人のパフォーマンスが出せるように導くこと引き出していくことは、アメリカ大統領でも同じだと思います。

変革していくことに対してアドバイスはありますか?

1つめは、現状を満足していない時には、いろんな角度からアセスメントをしていくということです。タバコを吸うことがやめられませんでしたが、娘の立場から考えた時にやめることが出来ました。

2つ目は変革は難しいということを理解し、一つひとつのことを積み重ねていくことです。ダイエットでも同じですが、一夜に変わることはありません。大統領在任中も健康保険を持っていなかった2000万人に健康保険を提供できましたが、これまで提供できていなかったのはたくさんの歴史的な背景がありました。一夜には提供することが出来るようにはなりませんでした。少しずつ心を砕いていって実現していったのです。そして、いまも全ての人に健康保険を提供できていないのです。

明確な方向性を描き、あとは一日一日の積み重ねなのです。当然ですが、反目する過去の遺産のような制度があったりすることもあります。川の向こう側に到達したいという時に、新しいところにジャンプをすることは難しいですが、橋をつくることはできるのです。

注意しながら楽観的に考えるようにしています。産業界革命以降100年で起こってきた変革と同じような大きな変化が、たった20年で起こっている時代です。AIもそうだし、様々な変革が起こっています。神に対する崇拝も違う人と仲良くしていくことが必要なのです。
アメリカは色んな移民のるつぼです。自分と考えの違う人に対して、「我々」ではなく、「彼ら」という表現を使うことは危険です。何をしなくてはいけないかと言うと、色んなコミュニティを超えて考える、ということです。

人類の方向性は、良くなっていっています。50年前、私が元大統領としてこの場で語っている姿は想像できませんでした。でも、いまはそれが起こっているのです。注意しながら楽観的に見ています。長期的にみると良くなっているのです。

一人ひとりがちょっと良くなるように、責任を取っていかないといけません。進歩はいつもそこから生まれるのです。これからは女性の声もLGBTの声も拾っていかないといけません。誰もが問題を解決できるわけではありませんが、より良い世界にするために、あなたにも責任を持つことが出来ます。自分の娘にそう伝えているように、これからも「人に優しく、そして人に役立つ生き方」をしていけるようにしていきたいと思っています。

まとめ

オバマ前大統領の言葉が紡ぎ出されるたびに、多くの歓声が上がった1時間でした。オバマ前大統領という偉大なリーダーが語ったキャリア、リーダーシップの考え方が、少しでも参考になれば幸いです。

 

マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝 単行本

人材育成カテゴリの最新記事