利益率は30%越え。ティール型飲食店「餃包」の取り組みとは

利益率は30%越え。ティール型飲食店「餃包」の取り組みとは

人類と組織の進化と次世代型の組織について綴られた『ティール組織』は、2018123日に初版が発行されて以来、組織開発の分野で大きな注目を集めてきました。そして現在では、多くの企業が理想の組織のあり方を求めて、ティール組織的な活動を計画・実践しています。

では、実際にティール組織を実践することによって、どのような成果が得られるのでしょうか?そこで今回は、ティール組織を実践している企業に、その取り組みがどのような成果につながっているのか、またティール的な組織体系の中で働く従業員の方にその現場での様子を伺ってきました。

ティール組織を掲げる水餃子専門店 餃包

六本木駅から降りてすぐ近くにある、水餃子専門店の餃包。小龍包と餃子を掛け合わせたようなオリジナル商品の餃包が人気のこのお店は、公式サイトの名前を、「ティール組織の肉汁水餃子専門店」と書いているほど、ティール組織を軸にした組織づくりを実践しています。同店では、組織的な階層が一切なく、社員でもアルバイトでも、どんな役割を担っていても一律に「オフィサー」と呼ばれています。また、オフィサー全員で話し合い、それぞれの評価を決める通信簿の制度や、P/LとB/Sを社員とアルバイト関係なく開示するなどの取り組みを行っています。また、その他にもお客さんを楽しませる数多くの取り組みが、オフィサー主導で実施されています。参考:ティール組織の肉汁水餃子専門店 餃包 – ABOUT US

今回お話を伺ったのは、そんな餃包を運営している株式会社アールキューブのCEOである坂田健さんと店舗で実際に働いているアミさんと池ちゃんの3方です。

プロフィール

【坂田健 氏】 年のうち約180日を企業研修の講師として過ごしている現役のトレーナーであり、「餃包」を運営する株式会社アールキューブのCEO。

【アミさん】 餃包でアルバイトを始めて4年目の現役オフィサー。2018年からは採用も担当している。

【池ちゃん】 餃包で半年前からアルバイトをしている現役のオフィサーであり、大学の1年生。

餃包が『ティール組織』を掲げる理由

ティール組織を掲げたきっかけはなんですか?

坂田氏:もとは『星野リゾートの教科書』や『一分間エンパワーメント』といった本を読んで、「情報共有」「境界線」「セルフマネジメントチーム」の3つを鍵に組織開発をやっていました。ですが、セルフマネジメントチームの概念だけが少し分かりづらかったんです。そんな時にティール組織の本が出てきて、セルフマネジメントチームについても詳しく書いてあって、おもしろいなと思ったのがきっかけです。ティール組織に書いてあるような方向でこれまでやってきたなっていう実感があったし、採用を考えたら、うち(餃包)のティール的な組織に合う人とそうじゃない人がいるだろうなって思ったんです。だから、どうすれば合う人にヒットしやすいんだろうって考えたら、ティール組織の本を読んで「こういう組織ないのかな?」って検索する人がいるだろうなって気が付きました。そこで、公式サイトの名前を「ティール組織の肉汁水餃子専門店 餃包」に変えました。

なるほど。組織文化にも戦略にもマッチしていたからこそ、ティール組織を掲げたんですね。

坂田氏:でも、本当はティール組織って(肩書に)出したくなかったんですよ。自社でやっていることを自分でティール組織って出すって、よっぽど自信があるか、頭がおかしいかのどっちかで、ふつうは名乗らないじゃないですか。だってお互いに(ティール組織として)不完全なのは分かってるんですから。

確かに。かなり勇気のいる決断ですよね。

坂田氏:ティールって組織や個人のパラダイムのことなので、(組織には)いろんなパラダイムの人がいますから、断言するって本来おかしいんですよね。でも、組織にはそのパラダイムの「重心」みたいなものはあるなと感じます。今この組織の重心がこの辺にきてるな、という「感覚」はすごく大事なんです。で、おこがましいんですけど、うちの重心、ティールパラダイムに入っちゃってないかい!?と感じるんです。なので、厳密にいうと「ティール組織に重心がほんのちょこっと入り始めた肉汁水餃子専門店餃包」です。でも、これだと長すぎて意味不明だし、使い物にならないですよね(笑)。だから言い切っちゃいました。

餃包の利益率は30%を超えているとお聞きしました。飲食店は10%超えたら合格だと言われているのにすごいですね!

坂田氏:実は、餃包には売上目標も利益目標もありません。もちろん前年対比とか、その他の重要指標は厳密に全員でウォッチしています。でも、それ自体は目標ではないし、ましてや目的ではないです。それに、正直30%の経常利益率が高いとは思っていません。世の中のために良いことをして、存在目的に向かって本気でやっていれば、(経常利益率が)その倍くらいあってもおかしくないと考えています。オレンジパラダイムだと、多分そこまで数字は出ないんじゃないかと思います。実際うちは過去にオレンジパラダイムで(組織運営を)がっつりやってましたけど、今に比べると(経常利益率は)しょぼい数字でしたので。

餃包では様々なアイデアが従業員から出てくるそうですが、それはなぜですか?

アミさん:ティール組織を掲げる以前から「グッドシェアリング」という取り組みをしていて、その日の良かったことや改善点を書くんです。そして、毎日全員が改善案を出して、その改善案が実行されやすい文化を作っていたので、その時から自主経営の下地はできていたと思います。

坂田氏:けっこう強制で進めたのがよかったのかな。最初から丸投げしたり放任すると動かないんです。ここがティールはトップダウンから始まるっていう逆説的な部分に通じるところなんですけど。例えば餃包では、焼き餃子をやめた辺りから接客とかを本気でやらないとなってなりました。ほぼ全員が注文する焼き餃子を、トップダウンで捨ててしまったので。焼き餃子をなくして水餃子だけにしたので、売り上げが落ちたんですよ。

焼き餃子をやめたのは坂田さんの独断での判断だったんですか?

坂田氏:話すとながくなるので割愛しますが、親孝行という個人的な目的から作った商品なんです。なので、それは焼いちゃいけないんです。なぜなのか、気になる方は直接お店でオフィサーに尋ねてください(笑)。無くすときにはもちろん助言を求めました。反対もありましたけど、核となるメンバーは(意図を)理解していたのでチャレンジしていいよってなったんです。ですが、当時のアルバイトさんとかは「頭狂ったのか?!」と思っていたかもしれません(笑)。 禁煙にもしたし、クレジットも(使え)なくして、だから苦戦したんですけど、それをきっかけに接客のトレーニングを本格的に始めました。それが4年くらい前のことです。

その時に売上が落ちたのが、結果的に転換点になったんですか?

坂田氏:そうですね。水餃子っていうのは普通売れないんですよ。日本では焼き餃子が一般的なので。でも、売れないんじゃなくて、売るしかないですよね。売れないんじゃなくて、売ってないんだって。だから提案の仕方とか、接客の仕方にこだわりました。で、「売るしかない」「売れないと潰れる」状況を強制的につくったので、改善を考えるしかないし、実行するしかないですよね。やるか死ぬかだったら、やりますよね。文句言っても何も変わらないので、やるしかない。そういうメンバーが生物としてサバイバルしてきて、今のうちの組織があります。だから、改善も進化も当たり前なんです。ティールとか関係なく。社長だったら死ぬほどやるじゃないですか、じゃないと本当に死ぬので。社員だからアルバイトだから(本気で)やらないという事自体が、本当は不自然だと思います。

従業員が主体的になれる仕組みづくり

現場が自主的に動くようになったきっかけはありますか?

坂田氏:餃包を作ってから1年ぐらいは自分も現場に入っていたんですけど、どっかのタイミングで入るのを辞めたんですよね。現場にいると全部指示出してしまって、自分が現場にいる限り一店舗では終わるなって思ったんです。例えば100店舗作るとしたら、自分がいなくても回るような組織を考えなきゃいけません。それに、丁度その時トレーナー業を始めたので、強制的に自分が(お店に)入れない状況を作れたのが良かったですね。これも100店舗になった時のシミュレーションになるし、100店舗あったら自分でお店に行けないじゃないですか。過去に数店舗出して潰した経験もあったので、見てないと(売り上げが)落ちるような店は嫌だったんです。なので、強制的に1回仕組みを作りました。あとは現場の人たちでやらざるを得ないという風にしましたね。それがきっかけだと思います。

現場を離れることに抵抗はありませんでしたか?

坂田氏:丸投げでやると上手くいかないので、現場にいなくても現場が見える仕組みを作って、フィードバックはできるようにしています。なんで経営者は現場を離れるのが嫌かって言うと、「現場を知らないくせに」って言われるのが嫌なんですよね。だから、ついつい現場に行ってしまうんです。でも、実はメンバーの人よりも現場のこと分かってるんですよ僕。

えっ、現場に居ないのに一番現場をわかっているってどういうことですか?

坂田氏:何でかって言うと、普通「現場」って厨房の中のオペレーションとかを言うんですけど、本当の「現場」ってお客さんから見てどうなっているかなんですよ。顧客との接点になる場だけが現場なんですよ。実はこれって、働いてると見えないんですよね。でも、僕はいろんな仕組みを使ってお客さんのことを全部見ているので、すごく共感できるし、現場を離れても怖くないですね。

確かに。忙しい中で顧客目線に立つことってかなり難しいですよね。

坂田氏:僕はオペレーションもできないし、餃子も作れないんですけど、そんなことお客さんからしたらどうでもいいんですよ。中がどうなっていようが、お客さんからの目線がすべてなので。そこを僕がわかっているから、顧客代表として強くフィードバックできるんですよね。「上司としてのフィードバックでは、これ以上怖くて言えないな」という恐れも無くなりました。ここに関しては、ティールめちゃいいなって感じています。

従業員の主体性を活かすための意思決定ルール

アイデアが出てきたときの合意形成はどうしていますか?

アミさん:実は合意形成という概念があまりなくて、やりたい人が決めていく形式です。各自で意思決定できるので、あるとすれば相談だけです。自分たちで期限を決めて、その間に相談したいことがあれば助言をもらいます。それも必要なければ『意思決定 LINE 』っていうのに投稿して、過去に買ったものであれば5万円まで、新しく買うものは1万円まで、助言なしで意思決定できる仕組みです。

坂田氏:それに何時間後に意思決定するかも自分で決められるので、それがまた良いトレーニングになるんです。たまに24時間で意思決定するものを「半分の時間でいいんじゃないか」ってフィードバックしたり、「自信もって早くしていいよ」ってフィードバックだけします。

これはいつごろから始めていたんですか?

坂田氏:これを始めたのも2018年に入ってからですね。実は昔、エンパワーメントを推していた時にもやっていたんですけど、当時は根付かなかったですね。結局トップダウンになってしまって、やっぱり皆に恐れがあったので社員以外は(提案を)投げれないし、投げてきても変なのが多くて却下するっていう悪循環でだめでした。それでも、もう一回やってみようっていうことだったんですが、すごく上手くいきました。

それは誰の発案だったんですか?

坂田氏:まあ僕の発案だったと思うんですけど、誰が発案だったかっていうのがもう分からなくなってくるんですよね。人に紐づく必要がないものは、誰のものだったかとか誰が考えたとか(頭から)消えていくんですよね。

アミさん:ミーティングも月に1回ぐらいあるので、その時に場所も問わず出てきたものを実行していくって感じですね。ですが、基本的にはLINEで話が出ます。LINE が唯一全員に(意見を)共有できるツールなので、みんなを巻き込んで何かをやる時には誰かがLINEでやろうよって言って、始まります。

提案されたアイデアが自然消滅することはないですか?

坂田氏:根付かないものももちろんあるはあるんですが、結構根付いてますね。自分(坂田)発案のものは意図して根付かせてるところもあるんですけど、それ以外のものも自然と根付いてる感じですね。やはり良いアイデアほど周りに共感されるので、自然と根付いていきますね。根付かないということは共感されていないということなので、むしろ悪いアイデアだったのかなって思っています。ただ、周りに共感されなくても信念を持っていれば実現まで持っていくこともできますよ。

役職廃止による影響

『長』の付く役職を廃止したときに、影響はありましたか?

坂田氏:情報共有とかも早い段階からやっていたし、自分たちで決める文化もできていたので、あまり抵抗なく馴染んでいきました。あるとすれば、元役職者に慣れる必要があったくらいですかね。

アミさん:情報開示は、もともと社員にしか行われていなかったので。もちろんアルバイトから求めれば情報は開示されていましたが、求める人もいませんでした。でも、今はアルバイト初日の人にも損益計算書とか、預金残高が全部開示されているので、情報開示に関しては(役職の廃止を経て)変わったかなって思いますね。もちろん池ちゃんも読めますしね。

池ちゃん:読めるようになりましたね。情報が開示されるのを毎月楽しみにしてます。

坂田さん:開示すると質問が来るんですよ。『これどういうことですか?』って。あと、経理社員がミスすると、ミスを発見して『ここおかしくないですか?』『なんで現金が増えてるんですか?』って言われます(笑)。

学業とアルバイトを並行しながら、さらに勉強するのは、大変ではないですか?

池ちゃん:大変だとは思ったことがないですね。自分がやりたくてやっているので。勉強のほかにも、入口対応の仕方を動画にまとめたりしていたんですが、それも自分の学びになるので、むしろ学ばせてもらえることがありがたいです。

坂田氏:役職による上下関係がないので、みんな自分でいろいろ考えて行動しています。

ティール組織の実践で見つけたのは組織の真の存在目的

ティール化を進めていく上で困難はありましたか?

アミさん:自分達のシフトを話し合いで決めようっていうのが、半年前から始まったんですけど、これが全然うまくいかなかったんですよね。利益率もすごく下がって、ティール化も失敗したなって思ってしまうほどでした。

坂田氏:あれはひどかったよね。ちょうど池ちゃんが入ってきた時だっけ?

池ちゃん:そうです。僕が入ったときに丁度もめていて、2週間ぐらい続いたと思います。

坂田氏:一番カオスなときに入ってきたんだね(笑)。

シフト決めがうまくいかなかったのは何が原因だったんですか?

アミさん:その当時フリーシフトっていうのをやっていて、前日まで自分が入るか入らないかを変更できるという仕組みだったんです。今では1週間前に全部決まるようになっているんですが、当時は自分の幸せが前提にあったので、明日もともと入りますって言っていたのが、当日になって予定入ったのでやめますって連絡が来て抜けていくようなことが頻繁にあったんです。

前日まで変更できるなんてすごいですね。どうしてその仕組みを採用していたんですか?

アミさん:今では、その仕組みどうかなって思うんですけど、「その方が自分は幸せなのでそうしたいです」っていうような意見が飛び交っていたので、そうしていたんです。ティール組織というよりかは、ただのエゴで動いているっていう形でしたね。顧客視点ではなく、自分にベクトルの向いたシフトの作り方でした。 今は30%の利益率が当時は人が入りすぎてしまって5%ぐらいでした。

今より25%も低かったんですか!そこからどうやって変わっていったんですか?

坂田氏:入りたい時にシフトに入れる会社もあって、業態がストック型の会社だとできるんですけど、ウチとかはフロー型の会社なのでできないんですよね。でも、自分たちで(シフトを)決めたいよねっていう話になって、なんでかなって考えたんです。それで、そもそもこの目的ってなんなんだろうって思ったんです。「シフト会議の目的ってなんだろう?」「誰のための仕組みなんだろう?」って。それで、LINEで質問を投げたら「目的は社員の幸せです!」って入社間もない数名から返ってきたんですよ。(社員が)幸せになるための仕事じゃなきゃだめだって。それがもう本当に衝撃的でしたね。その発想が。これは自分の伝え方も悪かったのもあるんですけど、考えなきゃなって思いました。

以前は社員の幸せを追求していたんですか?

坂田氏:元々は『五人の幸せ』っていう理念があって、「社員とその家族」「仕入れ先とその家族」「現在顧客と未来顧客」「地域社会」「株主」を幸せにすることを理念にやっていました。ただ、理念の最初に社員の幸せを入れるのはいいんですけど、入社してから浅い人って勘違いしやすくて『会社は私を幸せにしてくれるんだ!』って思ってしまうんですよね。それで、ふとした瞬間に『幸せにしてくれてないじゃん!』って言ってしまったりするんです。

確かに「社員を幸せにします!」って言われていたら、期待してしまいそうですね。

坂田氏:経営理念っていうのは、実は社長の理念であって、社長が社員の幸せを考えるっていうのはいいんですけど、社員が自分で社員の幸せを考えるのは気持ち悪いなって思うんですよ。それを言ったら、社長が『この会社は社長の幸せのためにあるんだ!』って言っているのと同じじゃないですか。そんな気色の悪い会社に入社しないですよね?だから、「勝手に僕の経営理念を使うのは禁止!」って伝えました。

経営理念の使用が禁止されたオフィサーの方々はどんな反応でしたか?

坂田氏:実は狙いもあって、「理念を覚えろ!」「自分で考えて行動しろ!」って言われると、多くの人は受け身になるんです。特に、中途半端だと義務感になりやすいですね。だから、逆に「理念は勝手に使わないで!」って言う方が、理念のことや目的のことを自然と考えるかなと。「会社はどんどん辞めていいよ」「ぜひ積極的に一度辞めてみてください!」って僕はよく言うんですけど、いいメンバーほど結果的に定着しているし、辞めても出戻りするんです。これと似ています。でもそれはテクニックだからではなくて、本当に思ってることだから通用するんだと思います。受け身、自己中な人が単純に嫌いなんです。だから、社員を幸せに「してあげる」気はさらさらないです。自分で幸せになる力を身につける支援をしたいし、それなら、目的も自分で毎日考えるべきだなと思いました。

現場の方は今どのような目的を持っているんですか?

池ちゃん:自分は将来、実家の家業を継いで経営者になろうと思ってるので、最初は経営だったり組織運営について学ぶことを目的にしていて、自分の成長のことを考えていたんです。ですが、(ミーティングなどで)餃包の目的や目標について話し合ったり、実際に働いていくうちに、「餃包の達成に貢献したい」という気持ちが強くなっていきました。もちろん自分の成長に繋がればいいなとは思っていますが、組織に貢献することが目的ですね。

組織の目的はどのように決まっていったのでしょうか?

坂田氏:散々やり取りしました。この店の目的は何だって。そんなときに、唯一「顧客のため」だったらみんな合意できるなって、そこで話がすっとまとまりました。存在目的ってそういうものだって気付いたんです。自分達の幸せに責任を持つことなんてプロなら当たり前の話で、それを大義名分にするって、サークル活動、趣味の世界なら成立しますけど、僕らはビジネスのプロですから、(自分の幸せが)目的には成りえないですよ。それに、「認めてほしい」「評価されたい」「褒められたい」「自分が達成したい」「手柄にしたい」、そんな内向きの目的は、お客さんからしたらどうでもいい話だし、伝わっちゃうんです。「ああ、自分の成果のためにこのビールを勧めてるんだな」って感じたら、もうシラけますよね。だからまずは『目の前のお客さん』だろってなったんです。お客さんの先には、家族もいるし、同僚もいるし、社会が広がっていますから。

では、今は「目の前のお客さんの幸せ」というのが共通の目的になっているんですね。

坂田氏:そうです。ゴールではないですが、起点にしています。この事件で存在目的を探求できたんです。僕自身も本当に考えましたし(笑)。

今となっては、毎日営業を始める前に「今日のお客さんはどんな人か?」「今日自分がこの職場に来た目的は何か?」「このチームの今日の存在目的は何か?」をオフィサーが考える仕組みになっています。

開店前のミーティングの様子

まとめ

今回取材に協力していただいた3人は、傍からみれば企業の代表とアルバイトであり、その間には権力が生み出す意識の壁が存在するのが一般的です。しかし、始まりから終わりまで、お互いに『お客様を幸せにする』という餃包の存在目的を全うするために共に働く仲間として接する姿勢を感じました。

また、飲食業は基本的にシフト制で従業員が入れ替わるため、本来であれば従業員全体での話し合う時間が取りにくいという特徴があります。ですが、餃包ではSNSツールであるLINEを活用することで、その業務形態上の壁を見事に克服しています。

このように、立場や能力、経歴だけではなく教理という壁さえも越えて、組織の存在目的のためにそれぞれの役割を果たそうというティール的な組織文化のあり方が、飲食業でありながら利益率30%という突出した結果を生み出しているのかもしれません。

そして、『従業員が理念に基づいて自分の幸せを考え始めたときに混乱が起きた』という餃包での教訓は、理念の浸透を課題としている企業にとって有益な事例となるでしょう。

これから理想とする組織像に向けて施策を考え、実践に向けた計画を練っている組織開発者の皆さんに、この記事を通して少しでもお役に立てたならば幸いです。

インタビューカテゴリの最新記事