就活ルールの変遷~就職協定が結ばれた理由から廃止?まで~

就活ルールの変遷~就職協定が結ばれた理由から廃止?まで~

経団連の中西宏明会長が2018年9月3日、就職活動における面接開始の時期などを定めた就活ルールを2020年卒業の学年を最後に廃止する意向を表明しました。これに直接の言及はしてはいませんが、安倍晋三首相は、「(就職活動のルールを)しっかり守っていただきたい」「就職活動が早くなっている」「(学生の)皆さんが4年間、しっかりと勉強した成果を正しく企業側に評価してもらいたい」と述べました。

就職活動において大きな転換を迎えそうな今、改めて「就活ルール」とは一体なんなのか、「就活ルール」の始まりから現在に至るまでを振り返っていきます。

最後には、2018年9月21日に政府が発表した就活ルールの方針についても追記しております。

就職協定(1953~1996年)による就活ルールの始まり

「就活ルール」の始まりは、1953年に遡ります。当時は、戦後の復興による好況と、朝鮮特需による人手不足が重なり、企業らは学生の採用に積極的でした。より良い人材を獲得するためにどの企業も採用活動を早め、全体的に就職活動が早期化していきました。これを受けて学校側は、学生の学業専念が阻害されると主張します。企業側と学校側の意見を調整した結果、4回生の10月から採用活動を開始するという就活ルールを設定しました。これが「就職協定」です。

流行した「青田買い」

就職協定により、はじめての「就活ルール」が取り決められましたが、一方で就活ルールを破って優秀な学生を採用しようとする企業が続出します。このような抜け駆け行為は「青田買い」と呼ばれました。就活ルールを破って青田買いをする企業へのペナルティーには、「注意」「勧告」「新聞による違反社名の公表」などがありましたが、社名を公表される以上のペナルティーがなかったため、青田買いをやめる企業はありませんでした。その結果、1996年をもって就職協定は廃止となりました。

経団連の倫理憲章とは(1997年~2013年)

就職協定が廃止されると、大学側と企業側が就活・採用に関して、独自の基準を設けるようになります。大学側は「大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職事務について(申合せ)」を、企業側は日本経済団体連合会(以降、経団連)が中心となり「新規学卒者の採用選考に関する倫理憲章」を1997年に策定しました。この企業側が設けた策定を「倫理憲章」と呼び、就職協定に代わる就活ルールとなりました。

止まらない就活の早期化

倫理憲章には「正式な内定日は卒業年の10月1以降とする」と明記されていましたが、それ以外に具体的な日程を示す内容がなかったことや、外資企業やIT企業など経団連に所属していない企業には効力を持たないことから、就職協定と同様に採用活動の早期化は止めることができませんでした。

倫理憲章の改定

この早期化の流れを危惧した経団連は、2003年に「倫理憲章」の改定を行います。「卒業年度になる4月1日以前の選考は行ってはならない」とし、経団連加盟の企業への署名活動を行いました。これにより、多くの加盟企業は以前よりもルールを守るようになりましたが、非加盟企業や一部の加盟企業は早期採用を続けていたようです。また、倫理憲章に広報活動に関する記載がないことから、広報活動の早期化が進み、3年次の10月1日にサイトがオープンし、エントリーを開始する企業が続出しました。これを受けて、2013年卒の採用から広報活動の開始を3年次の12月からとする改定が行われましたが、情報公開の後ろ倒しにより、学生の企業研究に支障が出るなどの問題が起きました。

経団連の採用選考指針とは(2013年~)

広報活動を遅らせるのは、根本的な解決方法にならないという結論が出されたちょうどその頃、2013年の安倍晋三政権が成長戦略の一環として、世界に通用する人材を育成できるよう、就職活動の時期を短縮し、学業に専念できる時間を長くするように経済界に要請を出しました。これを受けた経団連は、2016年卒の採用活動から就活解禁日を3か月遅らせて3年次の3月1日から、選考開始も4か月遅らせた8月1日からとしました。これと同時に「倫理憲章」から「採用選考に関する指針」(以降、指針)へと変更します。これが就職協定と倫理憲章に次ぐ、就活ルールとなります。

現在の就活ルール

選考開始が4か月遅れたことで、企業側が学生の内定辞退に対応できないケースが多く見られました。この事態を受けて、2017年卒の採用活動からは、選考活動の開始が大学4年の6月からとなりました。これが現在まで継続しており、2018年現在の就活ルールは、就活の解禁日が3年次の3月1日、選考開始日が大学4年次の6月1日となっています。

まとめ

就職協定から指針までの変遷を見てきましたが、現在は大学3年次の夏にインターンシップへ参加する学生が増えており、就職活動において一般化しつつあります。その中には、インターンシップとは名前だけの企業説明会もあり、またインターンからの採用が活発化しているため、実際の就活は3年次の6月ごろから始まっている、というのが実態です。ですので、たとえ「指針」が廃止されたとしても、学生にとって就活が早まる感覚はあまりないでしょう。ただ、3月の解禁から頑張ればいいと思っていた学生にとっては、就活を開始する目安がなくなるため、就活ルールの廃止については、いくらか戸惑うかもしれません。

また、昨今は4年次の8月ごろまでに就活を終える学生が多く、就活を終えた後は、社会人になる前のモラトリアムとして、学業よりも海外旅行などの思い出づくりに専念するのが一般的となりつつあるようです。つまり、学業に専念する期間というのは2年と数か月しかなく、安倍首相の抱く危惧も理解できます。採用の早期化をすることに対して、是非を議論することはしませんが、早期内定を出すとするならば、早期内定を出された学生がその後も学業に意欲を持てるような仕組みを作る必要がありそうです。

2018年9月21日更新:就活ルールは廃止されないことが決定
政府の発表により、就活ルールの廃止が予想された21年入社の就活においても、3年の3月に説明会、4年の6月に面接が開始されるルールが適応されることが明らかになりました。また、今後は経団連に代わって「政府」「産業界」「大学」の3者による協議でルールを決め、政府が企業側に要請する方針となりました。今までは、経団連の会員でない企業はルールの対象外となっていましたが、政府は外資企業や中小企業にも就活ルールの順守を呼びかける意向を示しており、今まで以上に就活の開始時期が統一される可能性が高まりました。人材の獲得競争が激しい中、一括採用から通年採用に切り替える企業もちらほらと出てきました。国の成長戦略を考える「未来投資会議」では、そんな採用と雇用の今後のあり方についても話し合われる予定です。これからの協議次第では、就活ルールが大きく変わることも予想されます。今後、就活ルールがどのような方向に進むのか、その動向をこれからも追っていきます。

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