パワハラの基準とは~どこからアウト?どこまでセーフ?~

パワハラの基準をご存知ですか?昨今、ニュースでもパワハラ問題をよく見かけるようになりました。そのようなニュースを見ると、自分がしている行動がパワハラではないかと、不安になる方も多いのではないでしょうか。また、パワハラとパワハラでないのかを分ける基準は何か、と聞かれるとすこし曖昧な方が多いようです。そこで今回は、パワハラとパワハラでないものの違いを明確にするために、パワハラにおける「受け手の基準」と「法的基準」という2つの基準についてご紹介します。パワハラの加害者にならないためにも、しっかりと基準を確認していきましょう。

パワハラの定義

パワハラとは

パワハラとは、パワーハラスメントの略語です。パワーハラスメントのパワーは、「力」ではなく「権力」を表しています。また、ハラスメントとは「いじめ」という意味です。つまり、パワーハラスメントをわかりやすく言うと、「権力者によるいじめ」もしくは「権力を利用したいじめ」となります。ここから分かるように、パワハラは権力の強い人と弱い人の間に起こるものです。たとえば、「上司と部下」「教師と生徒」「親と子供」「コーチと選手」などが挙げられます。

パワハラの3段階

このパワハラは、深刻度によって3段階に分けることができます。ここでは、それぞれの段階を理解しやすいように信号機に例えて「赤の段階」「黄色の段階」「青の段階」の3つに分けてご紹介します。

まずはもっとも危険な「赤の段階」についてご説明します。「赤の段階」は、職場にパワハラを受けていると感じる人がおり、その行為に違法性がある状態を表します。もし被害者が訴訟を起こした場合、パワハラを行った個人はもちろんのこと、会社にも責任があるかどうかを問われます。

続いて「黄色の段階」です。「黄色の段階」は、職場にパワハラを受けていると感じている人はいるが、法律の観点では違法性がない状態を表します。パワハラを受けていると感じている人が訴訟を起こしても、その要求を裁判所に取り下げられるのがこの「黄色の段階」です。

最後は、理想的な状態と言える「青の段階」です。「青の段階」では、パワハラを受けていると感じる人が職場におらず、もちろん法律的にも何ら問題がない状態を表しています。上司と部下が良好な関係を築けており、快適な職場環境が整っているのがこの「青の段階」です。

赤 :パワハラを感じている人がおり、受けている行為に違法性がある

黄色:職場にパワハラを受けていると感じている人がいるが、法律的にはパワハラと認められない

青 :職場にパワハラを受けていると感じる人がいない

パワハラにおける2つの基準

このように、パワハラは深刻度から3段階に分けることができます。そして、それぞれの段階を分けているのが「パワハラの基準」です。パワハラの「赤の段階」と「黄色の段階」を分けている基準を「法的基準」といい、「黄色の段階」と「青の段階」を分けている基準を「受け手の基準」といいます。「法的基準」は、パワハラと思われる行為に法律的な違法性が認められるかどうかで分ける基準です。違法性があれば「赤の段階」に、違法性がなければ「黄色の段階」になります。そして、「受け手の基準」とは、職場でパワハラを受けていると感じる人がいるかどうかで分ける基準です。パワハラを受けていると感じる人がいれば「黄色の段階」に、パワハラを受けていると感じる人がいなければ「青の段階」になります。このパワハラの3段階と2つの基準を図に表すと以下のようになります。

パワハラの基準

それでは、「法的基準」と「受け手の基準」について詳しく解説していきます。

法的基準~アウトかセーフか~

「赤の段階」と「黄色の段階」を分ける、この法的基準ですが、違法性があるかどうかの判別は以下の4つの観点で行います。そして、これらにyesと答えられる場合には、違法性が高いと判別します。

1.職場の地位、優位性を利用しているか

2.業務の適正な範囲を超えた指示や命令をしているか

3.精神的苦痛を与えているか

4.職場環境を害しているか

受け手の基準~ベターかベストか~

「受け手の基準」は、「黄色の段階」と「青の段階」を分ける基準ですが、「法的基準」とはことなり、判別のための明確な観点を持ちません。なぜかというと、行為の受け手が「パワハラだ」と感じるか否かが判別の観点であり、受け手の性格や行為者との人間関係によって行為のとらえ方が大きく異なるからです。ですが、パワハラと受け取られやすい言動には共通点があり、ミスやトラブルを起こした部下に指摘をするときの言動が「パワハラだ」と受け取られるようです。では、パワハラと受け取られる指摘と受け取られない指摘を分けているものは何かと言うと、理由は様々ですが、その一つとして「叱っている」か「怒っている」か、が挙げられます。

パワハラの法的基準が問われる判例

このように、パワハラは2つの基準によって3段階に分けられています。その中で最も重要なのは「法的基準」をしっかり理解し、自社の中で「赤の段階」のパワハラを起こさないことです。そこで、先ほどご紹介した法的基準の4つの観点から見て、どのような言動が違法と判定されたのかを見ていきます。

判例1:日本ファンド事件(東京地裁平成22年7月27日判決)

これは、消費者金融会社に勤務していた社員3名が、上司及び会社を被告として損害賠償を求める訴訟を起こした判例です。この事件では、原告に対して12月から翌年の6月まで風が直接当たる位置に扇風機を固定し、扇風機を回し続けたこと、上司の提案した方法で作業をしなかったことに対して「今後、このようなことがあった場合には、どのような処分を受けても一切異議はございません。」という始末書を強制的に書かせたこと、原告が会議で業務改善の提案をした際に「お前はやる気がない。なんでそんなことを言うんだ。明日から来なくていい。」と怒鳴ったこと、報告のミスに対して「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」と叱責したこと、原告の背中を殴打し、膝を足の裏で蹴ったこと、原告の配偶者を指して「よくこんな奴と結婚したな、もの好きもいるもんだな。」と原告の前で言ったことのそれぞれが違法だと認められました。

この事件を法的基準の4つの観点から見ていきます。まず、扇風機を当て続けた行為は「4.環境を害している行為」に当たります。次に、始末書を強制的に書かせた行為は「2.業務の適正な範囲を超えた指示や命令をしている行為」です。そして、会議での発言に対して怒鳴ったことは「3.精神的な苦痛を与えている行為」といえます。また、報告のミスに対する叱責も同じ観点に当たります。殴打や蹴るといった行為は「3.精神的苦痛を与える行為」と「4.職場環境を害している行為」の両方に当たります。最後に、配偶者に対する侮辱発言は「3.精神的な苦痛を与える行為」となります。

判例2:千葉がんセンター事件(東京高裁平成26年5月21日判決)

これは、当がんセンターの手術管理部に勤務している麻酔科医の原告が、部の問題点を上司に当たる部長を通さずにセンター長に伝えたところ、一切の手術から担当を外されるなどの報復を部長から受け、退職を余儀なくされたことに対して慰謝料を求めた判例です。原告が問題点を指摘してから担当の割り当てが著しく減らされた事実が確認できたこと、担当から外す正当な理由が見受けられなかったこと、麻酔の指導経験を希望していた原告が、職務を奪われたことで退職することに相当な因果関係が認められることを鑑みて、部長の行為が違法であると判断されました。

この事件を法的基準の4つの観点から見ていきます。この事件で問題となったのは、報復目的で原告を業務担当から外したことです。この行為は4つの観点のうちの「1.職場の地位、優位性を利用している行為」「2.業務の適正な範囲を超えた指示や命令をする行為」に当たります

まとめ

社内のパワハラ問題の解決を目指すとき、そのゴールとなるのは「裁判を起こされてしまったときに、負けないこと」ではなく、「パワハラを受けていると感じる社員が一人もいないこと」であるはずです。ですから、パワハラへの対策を考えるときには、黄色と赤を分ける「法的基準」ではなく、青と黄色を分ける「受けての基準」を意識する必要があります。今回は、パワハラのアウトとセーフを分ける「法的基準」について重点的に話しましたが、どうすればパワハラと受け取られずに済むかという「受け手の基準」についても、今後の記事でご紹介していきます。パワハラのない良好な人間関係に基づく職場環境を作るために、この記事を通して貢献できたならば幸いです。

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