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Withコロナ時代の人材育成を考える

更新日: 2020年5月11日
新型コロナウィルスの流行が人事に与える影響は甚大です。リモートワークの普及や、雇用調整の問題などに加えて、人材育成手法についても変化がみられています。「Withコロナ」時代に人材育成はどのように変わっていくのか、変わらないものはなにか。人事コンサルタントの見解をご紹介します。
目次:

捉えるべきWithコロナ時代

世界的に流行を見せる新型コロナウイルスは、日本社会や日本経済に甚大な影響を与えています。2020年4月7日には7都道府県を対象に、緊急事態宣言が発令され、2020年4月16日にはその対象が全国に拡大。5月4日には5月31日までの期間延長が発表されました。

様々な場面でその影響があり、対応に追われている方がも多くいらっしゃるのではないでしょうか。感染者は日に日に増えている状態ですが、特徴的なことが終息時期の見えなさであり、「自粛疲れ」などという言葉も誕生しています。ハーバード大学も「2022年まではソーシャル・ディスタンスが必要になる」という研究結果を示しており、長期化の様相を呈しています。

このような背景の中で、コロナが収束した後の社会や経済について論じる「Afrerコロナ」という文脈から、どのように新型コロナウイルスと付き合っていくのかという「Withコロナ」というキーワードが生まれています。つまりそれは、コロナの終息を待つだけではなく、「コロナウイルスという脅威が身近にある中で、どのように社会を維持し、経済を回していくのか?」ということが論点になってきているということを意味するのではないでしょうか。 

Withコロナ時代の人事

それでは、Withコロナ時代の人事とはどのように変わっていくのでしょうか。まずわかりやすいのがリモートワークの推進です。緊急事態宣言に伴って在宅勤務が奨励され、具体的な数字指標が示されている中で、各社はその対応に終われているようです。兼ねてより国内のリモートワークは進んでおりませんでしたが、新型コロナというトリガーによって、一気に進めざるを得ない状況になりました。デバイスやネットワークの問題、セキュリティの問題、電子化されていない書類の問題など、山積みの課題と向き合い、対応を進めていらっしゃることと思います。

リモートワークが推進されると様々な変化が起こります。特にオンラインでの組織運営になれていない企業や社員はその変化が大きいようです。バーチャルチームでの大原則は、一人ひとりが限られた情報の中で自分で判断し、行動していくことが必要になるということです。それはすなわち、一人ひとりの自律性が必要となる環境であり、それにともなって社員一人ひとりの成長が必要な状況であることを意味しています。

もう一つ大きな変革を迎えているのが人材育成です。環境面の変化に伴って、自律的な人材育成の必要性が高まっていく状況にも関わらず、人材育成機会は減っているのが現状です。それは、「三密」という、

 1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
 2.密集場所(多くの人が密集している)
 3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)

という三つの条件が同時に重なる場を避けましょう、という政府方針が大きく影響しており、多くの研修が実施中止や延期になりました。

アチーブメントHRソリューションズが実施した2020年の新人育成についての独自調査では下記のような結果になっています。

 

Withコロナ時代の新人育成の動向

Withコロナ時代の新人育成の動向

 

2020年の新人育成において実施したことの第1位は「eラーニング」(49.5%)、第2位「オンライン研修(社内講師)」(47.7%)、第3位「集合研修(社内講師)」(45.9%)となっており、集合研修よりも「eラーニング」や「オンライン研修」の実施が多いという実態が明らかになりました。「人材育成の王道といえば集合研修」という時代から、大きな変革が求められる時代になってきているようです。

研修のゴールは行動変容のまま

それでは、そもそもなぜこれまで集合研修というのは数多く行われてきたのでしょうか。研修を実施する目的、ゴールについて改めて確認をしておきましょう。カーク・パトリック氏の4段階評価モデルでは、研修効果は下記の4段階によって評価されるとしています。

 

上記を参考にするならば、研修実施のゴールは下記の4レベルで設定できます。

 レベル1:研修プログラムを受講して、受講者が満足すること
 レベル2:研修プログラムで教えた知識や技能を習得すること
 レベル3:現場に戻ったときに、研修プログラムでの学びを活かして受講生の行動が変わること
 レベル4:研修プログラムでの学びを活かして現場での成果が出ること

 

研修は明確・不明確に関わらず、上記の4つのいずれかをゴールとして行われていたのではないでしょうか。これまで集合研修が数多く行われてきたのは、「レベル3やレベル4に繋がる効果の期待があったから」という1点に尽きると思います。その中でも特に、レベル3の「現場での行動変容」というゴールについては、研修において最も期待されることが多いゴールです。
最近ではHRの世界にも費用対効果(ROI)という概念が持ち込まれるようになったことで、現場での何かしら具体的な変化をつくってくことが求められる潮流になってきています。レベル4の達成には一定の時間を必要としますので、成果の先行指標となる「成果につながる行動」を特定し、研修プログラムでの学習を通じて、行動変容していくことが求められているのではないでしょうか。

Withコロナ時代の人材育成手法

現在、「三密」を避けるという方針にのっとり、研修自体が中止や延期を余儀なくされています。上記のレベルを参考に、Withコロナ時代の人材育成手法について整理をしてみましょう。

レベル1:反応

レベル1を目指して行われる研修はそもそもあまり多くはありませんが、レベル1をゴールとするならば、この時期に限って言えば、ガス抜き的な場を設定するのがよいのではないでしょうか。あるいは思い切って研修開催自体を中心にして、福利厚生や手当の充実などに費用を回すのも一つの手かもしれませんし、自己啓発支援という形で自ら受けたい研修を受講してよいという制度を作るなどをすれば、人材育成の効果も期待できます。

 

レベル2:学習

レベル2を目指していくための代替手段の一つはeラーニングです。eラーニングには、いつでも受講できるという利便性と、何度も受講できるという反復性というメリットがあり、知識技能の習得というゴールに対しての相性は良いといえるでしょう。日本でも2000年代に入ってからeラーニングは普及しており、既に一般的な選択肢の一つにもなっているのではないでしょうか。PC環境などがない場合は、通信教育や課題図書の配布などを行い、オフラインで課題を出しながら育成をしていくということも一つの選択肢であると思います。

 

レベル3:行動

レベル3を目指していくための代替手段の一つはOJTですが、そもそもOJTでは賄いきれない内容のものをOff-JTとして研修を実施しているケースが多いため、現場に過度な負担を与えてしまい、OJTを担当する現場のトレーナーの負荷により形骸化してしまうリスクもあります。「コロナ疲れ」をしているのは部下も上司も同じですので、負荷のかけ過ぎは別の問題につながりかねません。そこで、一つの選択肢として急速に注目を集めているのが、「オンライン研修」です。研修をオンラインで行うことで、三密を避けながら学習ができる、という大きなメリットがあり、Withコロナ時代の大きな潮流となっていくのではないでしょうか。

まとめ

以上、Withコロナ時代の人材育成について考えてきました。改めて強調をしたいのは、経済活動を回すためには人材育成は改めて重要であり、Withコロナ時代にはリアル研修とは異なる方法を模索していく必要があるということです。オンライン研修には様々な可能性を秘めたものだと思いますし、これを機に一気に普及していくものと思われます。
しかし、その際に忘れてはならないことは、研修のゴールです。リアル研修が実施できないからオンライン研修とすぐに飛びつくのではなく、研修のゴールを実現するために「オンライン研修」を新たにつくっていく姿勢が重要ではないでしょうか。

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