新型コロナウィルスが新人育成に与えた影響の調査から見る、新人に必要なフォローとは?

更新日: 2020年5月13日
本コラムでは、新型コロナウィルスの流行が、新人の育成と組織社会化に与えた影響に関する調査結果を検証し、今後、新人にどのようなフォローが必要なのか、考えてみたいと思います。
コロナは新人育成をどう変えたか?
目次:

新型コロナウイルスの新人育成への影響度合い

<今回のWebアンケート調査では、国内企業の人事・経営者の皆様を対象に20卒新人に向けて各社が行った教育施策についてお伺いいたしました。

実施期間は、2020年4月20日~24日と短かったものの、有効回答111社と多くの企業様にご協力いただきました。

 

変更・中止なしはわずか2.7%

新型コロナウイルスの流行によって新人育成に影響があった度合いについて一番多く約4割を占めたのが「7~9割を変更・中止した」でした。なにかしらの変更・中止を行った企業を合計すると、実に約97%となり、新型コロナウィルスが新人育成に大きな影響を与えていることが明かになりました。7.2%を占める「全てを変更・中止」には、ニュースでも取り上げられている内定の取り消しを行った企業様も含まれており、社会的影響の深刻さが伺えました。

 

 

更に細かく見てみると、新型コロナウイルスの流行によって変更・中止したものに関して、上位3つが「社内で実施する入社時研修」が82.0%、「歓迎会・懇親会」が79.3%、「入社式」が74.8%と7割を超えていました。

 

最も変更・中止の多かった「社内で実施する入社時研修」については、準備をしていた研修を中止し新人の現場でのスタートを早めざるを得なかった企業様と、逆に研修期間を伸ばしたという企業様と2つの傾向があることがわかりました。

前者の新人が研修を受けることなく配属先での業務を開始した企業様においては、OJTなどの現場での負荷が高くなっているとようです。後者の急ぎで研修期間を伸ばしたという企業様においては、コンテンツがなく何をやったらよいのか分からない上、研修をオンラインで行わなければならず手さぐりの状態だという声も伺います。このように新入社員は、前倒してであっても、後ろ倒しであっても、人事ご担当者様の大きな悩みの種となっている状況です。

次に、今年度の新人育成でこれまでの間に実施をしたことの上位3つは、e-ラーニング 49.5%、オンライン研修(社内講師) 47.7%、集合研修(社内講師)45.9%でした。

 

 

新型コロナウィルスがなかった時代は、圧倒的な1位であった社内講師による集合研修が3位になっており、e-ラーニングが1位に取って代わったことが大きな変化でした。更に社外講師による研修においては、オンライン研修(32.4%)が集合研修 (18.0%)を大きく上回っており、オンライン研修が新人教育に急速に浸透していることが明らかになりました。

注目すべきなのは、集合研修は一カ所に複数人が集まるため「三密」になりやすいにも関わらず、4割以上の企業様が社内講師による集合研修を実施していたということです。会場をより広い部屋に変更して密接のリスクを下げたり、定期的な換気を徹底されたり、ソーシャルディスタンスを維持したりと、様々な工夫をしている様子が見て取れました。
新人が入社直後から担当できる仕事は少なく、
経済活動を回すために仕方がないという声もある反面、入社という大事な時期にみんなで一つの場に集まって行う研修の意義を感じられている企業様も多くいらっしゃる様子が伺えました。新人育成をオンラインでやるべきか、オフラインで集まって行うべきか、実施方法が模索される中、一つの場に集まって研修を行うことの意義を改めて考えるきっかけになっていると言えます。

 

 

新人の組織適応への影響

更にアンケートでは、今回の新型コロナウィルスが、新人が組織に適応していくプロセスにどのような影響を与えたかお伺い致しました。

 

組織社会化とは

組織に適応していくプロセスを「組織社会化」と言います。まず「組織社会化」とは何か、改めてご紹介したいと思います。

「組織社会化」とは、新人が組織に適応し馴染んでいく過程のことを指し、以下が組織社会化に必要な4つの要素です。

 

1.人脈の学習

新人が業務を円滑に回すために必要な社内の人脈獲得(配属部署など)

2.学習棄却

新しい環境では通用しない過去の経験や意識を捨てる(学生から社会人への意識の切り替え)

3.評価基準・役割の学習

新しい環境で求められる期待や評価軸の学習

4.知識・スキルの獲得

新しい環境で求められる知識やスキルの獲得

※中原淳著『経営学習論』より

 

人脈の学習と知識・スキルの獲得に大きくマイナス

組織社会化における新人の人脈の学習に関して、合計で約7割が「マイナスの影響」があったと答えており、影響の大きさが伺えます。

 

 

新人の学習棄却に関して、半数が「変わらない」との回答である一方、マイナスの影響があった企業様が4割と、異なる傾向があることがわかりました。

 

同じく、新人の評価基準・役割の学習への影響も、「変わらない」との回答がある一方、マイナスの影響があったと答えた企業様がそれぞれ4割と、傾向に違いがあることがわかりました。

 

 

 

 

新人が知識やスキルを獲得することに関しては、5割近くの企業様でマイナスの影響があったことがわかりました。

 

組織社会化の各要素への影響を以下にまとめてみると、人脈の学習と知識・スキルの獲得に大きくマイナスとなっている実態が明らかになりました。

人脈の学習に関しては、やはり在宅勤務が大きく影響していると考えられます。弊社が別途行った調査では、7割以上の新人が在宅勤務か自宅待機をしています。同期ですと、電話やChatで比較的気軽に話せるかもしれませんが、なかなか先輩社員にはオンライン上でコミュニケーションが取りづらいというのがあります。その結果が人脈の学習へのマイナス影響となっていると考えられます。

もう一つマイナスの影響が大きかった組織社会化の要素に、知識・スキルの獲得があります。今まで教えていたことの内容は変わらずとも、学習方法が変わり、効率性や効果性という面でマイナスに影響をしている、ということがあると考えられます。

新人を入社日からずっと在宅勤務させている企業様においては、学生から社会人へ切り替えるキッカケづくりが難しい言います。場合によっては、自宅で私服で、私物のパソコンで業務に従事しているということもあるかと思います。このような状況では、社会人になったという意識は醸成されにくいでしょう。

知識やスキルの獲得においても、自ら学びとっていくという姿勢がある新人であれば、どのような勤務状況にあってもオンライン研修やe-ラーニングで主体的に学びを進めて行くことができます。しかしながら、受け身で成長意欲がない新人は、自宅で時間を持て余してしまうというような状況が考えられ、新人の学びに差が生じる可能性があります。

さらに、今後懸念されるのが、ゴールデンウイーク明けのいわゆる「5月病」です。新型コロナウィルスの流行がなかった時代でも、新人のモチベーションが下がる時期です。新型コロナウィルスの感染拡大が、新人の組織社会化に既にマイナスな影響を与えている状況において、今まで以上に、じっくりと新人をフォローし、2~3か月などいつも以上に時間をかけて組織に馴染ませていくことが非常に重要だといえます。

 

 

まとめ

新型コロナウィルスの流行により、今後、世の中が激しく変化して行くことが予測されます。このような状況の中、以前にも増して、新人には自律的な成長が求められています。そこで、初期段階において新人自らが目指す社会人としての姿を明確にし、それに向けてセルフマネジメントしていけるような初期教育を徹底し、新人自身が自らPDCAを回していくフォローしていくことが重要です。
社会人としてスタートする地点で、成長する意識を醸成しておくことで、変化の激しい時代においても、自ら機会を選択し、達成に向けて必要な学びを得ながら、成果を出していける人材に育っていくことができるのではないでしょうか。

 

■「コロナは新人育成をどう変えたか?」調査概要
調査対象:国内企業の人事・経営者の皆様
実施期間:2020年4月20日~4月24日
調査方法:インターネットを活用したWEBアンケート調査
有効回答:111社

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